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最終章 唯一大事なおもちゃ
3-3 初めての誕生日
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――ちゃぷん。
お湯が、揺れる。
気持ちよくてうとうとしかけ、慌てて悠生の手が支えてくれる。
……悠生にお風呂に入れてもらうのが好き。
一緒に入る、じゃなくて、入れてもらう。
いつもちょっとぼんやりになっている私を、悠生は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
そういうのが、凄く好き。
お風呂からあがると、今日はごはんを作ってくれた。
下拵えしてあるから、無駄にするともったいない、だそうだ。
悠生は料理しながら、私の前につまめるものを置いていく。
器用だな、っていつも思う。
私も料理はするけど、悠生みたいに凝ったものはできないし。
だから、一緒に料理するときはお手伝いに回っている。
「……それで。
僕にプレゼントってなに?」
ミラノ風カツレツにあとは……ごめん、うまく説明できない。
とにかく、いつもお皿はテーブルいっぱい、だ。
そんなに作る必要はないと思うんだけど、悠生は料理も趣味なのと、私が美味しそうにごはんを食べているのが嬉しいみたい。
「あー、うん。
いまさらだけど、誕生日まで秘密でいいかな?」
「わかった。
楽しみにしとく。
……だいたい推測はついてるがな」
……うん。
だろうね。
でも、秘密にしていたい。
悠生の誕生日。
ちょっとだけ、早く帰らせてもらった。
いや、早退したわけじゃないよ?
いつもは悠生の仕事が終わるまで待っているだけで。
待っているあいだはちなみに、ちゃんと勉強しています。
帰ると、時間指定にしていた宅配が届きだす。
お花と、ケーキと、お酒、その他。
料理は悩んだ結果、作ることにした。
レシピは調べてあるし、何度もあたまの中でシミュレーションしたので大丈夫……な、はず。
「悠生、誕生日おめでとう」
「年を取ったって、嬉しくもないがな」
イメージ通りにできた食卓。
嬉しそうな悠生の笑顔。
頑張った甲斐があったというものです。
「それで。
誕生日プレゼント、です」
「まあ、受け取ってやる」
おずおずと差し出した、包み。
悠生は開けると……みるみる顔を曇らせた。
「……君程度の人間が、買うようなものじゃないだろ」
「ち、違うの!
無理なんてぜんぜんしてないから!
いままでの感謝と、これからもよろしくお願いします、ってそういう気持ちだから!
……だから、受け取って欲しい」
「……わかった」
そっとふれた唇。
見上げると、眼鏡の奥の目が細くなってた。
笑い返すとまた唇がふれる。
「これからはこっちを使う」
もう家だというのに、早速悠生は腕時計をつけている。
しかも、子供みたいにそれで何度も何度も時間を確認して。
よかったな、プレゼントして。
「……そういえば、これ、なんだろね?
誕生日に開けてって言われてたけど」
利香たちに結婚祝いにもらって、開けずにおいた方の箱。
シルクのパジャマの方はもう、現在使用中だ。
「……」
「……」
ふたを開けて、ふたりとも無言になった。
いや、最初はレースが詰まっているのかと思ったよ?
そんなことはないと思いながらも。
けど、さ。
所々にピンクをあしらった、白いレースのベビードール。
やっぱり白とピンクのガーターベルトとストッキング。
ショーツにいたっては……レースの紐パン。
「……着てみるか」
「いや、無理!
無理だよ!!!」
「……おもちゃに拒否権は、ない」
ニヤリ、悠生の片頬があがる。
……そして。
「……いや、できない」
「できないじゃない。
やれって言ってるんだ」
涙目で懇願したって、悠生は許してくれないどころか、反対に喜ばせるだけ。
ベビードールは着たまま、ガーターベルトもストッキングもそのまま。
……そしてショーツは片方の紐を解かれて、途中で引っかかっている。
それだけでも恥ずかしくて堪らないのに、悠生は無理を言ってくる。
恥ずかしく恥ずかしくて、火を噴きそうな顔で、……ゆっくりと悠生の上に身を沈めた。
「動けよ」
「……むり……あっ」
下から突き上げられて、身体を捩る。
「……んっ、……やっ、……だめっ」
身をくねらすたびに、悠生がいつもより昂っているのがよくわかる。
悠生の口からも漏れる、熱い吐息。
「こういうのはやっぱり、下から愛でるに、限るな」
いつもよりも早く、高みに向かっていく。
勝手に動きだした私の身体に、悠生の吐息がさらに熱くなる。
「……あっ、はっ……いやっ」
「……はっ、……もぅ、さい、こう」
私がぽろぽろと涙をこぼし始めると、両手をぎゅっと握ってくれた。
そのまま一気に登り詰める。
「……あーあ。
またこんなに泣いて」
弾けた意識にぼんやりとなっている私の頬に、そっと悠生の手がふれて、涙を拭う。
「でもまだだ。
こんないやらしい沙也加に、止められるわけないだろ」
……窓の外が明るくなり始めたころ。
沈んでいく意識のなかで
「……子供、できてたらいいな」
そう言う悠生の声を聞いた。
お湯が、揺れる。
気持ちよくてうとうとしかけ、慌てて悠生の手が支えてくれる。
……悠生にお風呂に入れてもらうのが好き。
一緒に入る、じゃなくて、入れてもらう。
いつもちょっとぼんやりになっている私を、悠生は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
そういうのが、凄く好き。
お風呂からあがると、今日はごはんを作ってくれた。
下拵えしてあるから、無駄にするともったいない、だそうだ。
悠生は料理しながら、私の前につまめるものを置いていく。
器用だな、っていつも思う。
私も料理はするけど、悠生みたいに凝ったものはできないし。
だから、一緒に料理するときはお手伝いに回っている。
「……それで。
僕にプレゼントってなに?」
ミラノ風カツレツにあとは……ごめん、うまく説明できない。
とにかく、いつもお皿はテーブルいっぱい、だ。
そんなに作る必要はないと思うんだけど、悠生は料理も趣味なのと、私が美味しそうにごはんを食べているのが嬉しいみたい。
「あー、うん。
いまさらだけど、誕生日まで秘密でいいかな?」
「わかった。
楽しみにしとく。
……だいたい推測はついてるがな」
……うん。
だろうね。
でも、秘密にしていたい。
悠生の誕生日。
ちょっとだけ、早く帰らせてもらった。
いや、早退したわけじゃないよ?
いつもは悠生の仕事が終わるまで待っているだけで。
待っているあいだはちなみに、ちゃんと勉強しています。
帰ると、時間指定にしていた宅配が届きだす。
お花と、ケーキと、お酒、その他。
料理は悩んだ結果、作ることにした。
レシピは調べてあるし、何度もあたまの中でシミュレーションしたので大丈夫……な、はず。
「悠生、誕生日おめでとう」
「年を取ったって、嬉しくもないがな」
イメージ通りにできた食卓。
嬉しそうな悠生の笑顔。
頑張った甲斐があったというものです。
「それで。
誕生日プレゼント、です」
「まあ、受け取ってやる」
おずおずと差し出した、包み。
悠生は開けると……みるみる顔を曇らせた。
「……君程度の人間が、買うようなものじゃないだろ」
「ち、違うの!
無理なんてぜんぜんしてないから!
いままでの感謝と、これからもよろしくお願いします、ってそういう気持ちだから!
……だから、受け取って欲しい」
「……わかった」
そっとふれた唇。
見上げると、眼鏡の奥の目が細くなってた。
笑い返すとまた唇がふれる。
「これからはこっちを使う」
もう家だというのに、早速悠生は腕時計をつけている。
しかも、子供みたいにそれで何度も何度も時間を確認して。
よかったな、プレゼントして。
「……そういえば、これ、なんだろね?
誕生日に開けてって言われてたけど」
利香たちに結婚祝いにもらって、開けずにおいた方の箱。
シルクのパジャマの方はもう、現在使用中だ。
「……」
「……」
ふたを開けて、ふたりとも無言になった。
いや、最初はレースが詰まっているのかと思ったよ?
そんなことはないと思いながらも。
けど、さ。
所々にピンクをあしらった、白いレースのベビードール。
やっぱり白とピンクのガーターベルトとストッキング。
ショーツにいたっては……レースの紐パン。
「……着てみるか」
「いや、無理!
無理だよ!!!」
「……おもちゃに拒否権は、ない」
ニヤリ、悠生の片頬があがる。
……そして。
「……いや、できない」
「できないじゃない。
やれって言ってるんだ」
涙目で懇願したって、悠生は許してくれないどころか、反対に喜ばせるだけ。
ベビードールは着たまま、ガーターベルトもストッキングもそのまま。
……そしてショーツは片方の紐を解かれて、途中で引っかかっている。
それだけでも恥ずかしくて堪らないのに、悠生は無理を言ってくる。
恥ずかしく恥ずかしくて、火を噴きそうな顔で、……ゆっくりと悠生の上に身を沈めた。
「動けよ」
「……むり……あっ」
下から突き上げられて、身体を捩る。
「……んっ、……やっ、……だめっ」
身をくねらすたびに、悠生がいつもより昂っているのがよくわかる。
悠生の口からも漏れる、熱い吐息。
「こういうのはやっぱり、下から愛でるに、限るな」
いつもよりも早く、高みに向かっていく。
勝手に動きだした私の身体に、悠生の吐息がさらに熱くなる。
「……あっ、はっ……いやっ」
「……はっ、……もぅ、さい、こう」
私がぽろぽろと涙をこぼし始めると、両手をぎゅっと握ってくれた。
そのまま一気に登り詰める。
「……あーあ。
またこんなに泣いて」
弾けた意識にぼんやりとなっている私の頬に、そっと悠生の手がふれて、涙を拭う。
「でもまだだ。
こんないやらしい沙也加に、止められるわけないだろ」
……窓の外が明るくなり始めたころ。
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「……子供、できてたらいいな」
そう言う悠生の声を聞いた。
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