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第七章 憧れの上司は都合のいい男でした
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「すみません、お待たせしました」
紙コップに入れたコーヒーを手に向かった打ち合わせブースでは、COCOKAさんが待っていた。
「いえ、ぜんぜん」
曖昧な笑みを向けながら、きょろきょろと彼女が私の背後に誰かを探す。
それに心の中でため息をついた。
「今日、宇佐神課長は?」
「宇佐神は本日、外出しております」
「そうですか……」
あからさまに彼女は残念そうなため息をついたが、ため息をつきたいのはこちらのほうだ。
あれから彼女の配信動画をチェックし、問題がなかったのもあって契約は継続されている。
ええ、全部の動画をチェックするのがどれだけ大変だったことか。
時間がないので家でも食事をしながら観ていたので、龍志と微妙な空気だった。
「本日はどのようなご用件で?」
「あっ、そう!
宣伝動画の投稿についてなんですけど……」
下手をすれば会社に大きな損害を出させるところだったという脅しが利いたのか、それとも龍志効果なのか、最近のCOCOKAさんはとても素直で助かる。
しかし。
「あっ、なるほどですね!」
明るい声で彼女が合点がいったとばかりに手を叩く。
「ありがとうございます、そうしてみます」
「いえ。
こちらこそ、よろしくお願いします」
面会時間は五分で終わり、彼女はそそくさと帰り支度を始めた。
「では、お気をつけてお帰りください」
「はーい。
宇佐神課長によろしくでーす!」
エレベーターのドアが完全に閉まり、手を振る彼女が見えなくなってもう癖になりつつあるため息をつく。
そのまま俯き気味に部署へと帰ろうと回れ右をしたところでいきなり声が聞こえてきた。
「なんか疲れてるな」
「うわっ!」
おかげで思わず悲鳴を上げ、飛び上がりそうになった。
「もー、驚かさないでくださいよ」
「わるい、わるい」
声をかけてきた人――龍志は笑っている。
その手にはバッグが持たれ、外出の準備がされていた。
「悪かったな、居留守使って」
「いいですよ、別に」
COCOKAさんがわざわざ来社するのは、龍志が目当てだからだ。
本当はオンラインどころか電話やメールで済む要件でも来社する。
なので用事は五分で済むし、彼女はいつも私の後ろに龍志を探しているというわけだ。
龍志もちょっと困っているので、こうやって居留守を使ったりする。
「モテる男はつらいですね」
私としてはただ事実を告げただけのつもりだった。
けれど。
「七星はそれで、嫌になったりしないのか?」
一歩、私に距離を詰めてきた彼が、ぐいっと私を見下ろす。
レンズの向こうの瞳はかなりご不満なように私には見えた。
「えっと……。
別に」
両手でそれを押さえるようにしながらつい、目を逸らす。
……本当は、龍志にそうやって興味を持たれるのが少し嫌だった。
けれどこれは、そうやって上司を困らせられるのが嫌とか、そういうヤツなのだ。
……たぶん。
「ふぅん。
今日の晩ごはんはカップ麺な。
じゃ、いってくる」
「え……」
そのタイミングでエレベーターのドアが開き、龍志はさっさと乗り込んでしまった。
……晩ごはんはカップ麺って、なんでそんなに怒ってるの?
デスクに戻りつつ考えるも、先ほどの会話のどこにそんな要素があったのかわからない。
「……ううっ」
悩んだところでわからないものはわからないし、仕事も山積みなのでとりあえず忘れることにした。
今日は私のほうが帰りが早かった。
「たまには作るか……」
いや、別にカップ麺での晩ごはんを回避したいとかいうわけではなく、毎日、龍志に作ってもらっているのでたまには私が作ろうかと。
……嘘です。
カップ麺を回避したいだけです。
「なんにするか……。
うっ」
自分の部屋の冷蔵庫を開けて固まった。
飲み物とゼリーくらいしか入っていない。
それもそうだ、最近はお風呂に入る、寝る以外の時間、ほとんど龍志の部屋で過ごしている。
そりゃ、冷蔵庫がほぼ空でも不思議ではない。
「龍志の部屋に行けばなんかあるか……」
仕方なく腰を上げ、ガーデンサンダルをつっかけて隣の部屋に向かう。
もちろん、合い鍵はもらっている。
「おっじゃましまーす……」
なんとなくそろりと部屋に入った。
いないときも勝手に使っていいとは言われているが、なんとなく主がいないときに入るのは遠慮してしまう。
「冷蔵庫、開けさせてもらいますね……」
なぜか断りつつ冷蔵庫を開ける。
私の買ったプリンとかアイスとかも入れてあるのでいつもなら勝手に開けるのだが、龍志がいないときだといけないことをしている気になるのはどうしてだろう。
「なにを作るか……」
作ろうと決めたものの、私は料理が苦手だ。
あの、手抜きと言いつつ手が込んでいるような料理をパパッと作る龍志には到底、勝てない。
それどころかまともな料理を提供できるのか不安になるところだ。
「……やっぱりカップ麺で諦めるか」
いくら考えてもいいメニューが出てこなくて冷蔵庫を閉めた。
私が作って唯一、家族が褒めてくれるのはカレーだが、龍志が帰ってくるまでの短時間でじっくりコトコト煮込んだ自慢のカレーは作れない。
「うー、あー」
唸りながら冷蔵庫のドアをぱたぱた閉じたり開いたりさせる。
龍志がいたら、電気代の無駄だと怒られそうだ。
「あ、そだ」
不意に、次の休みの昼ごはん用と先週末、買い出しに行ったときに龍志がチルドの焼きそばを買っていたのを思い出した。
あれなら、私でもできる。
ただ、次の休みの昼ごはんがなくなるが……まあ、そのときこそカップ麺でいい。
「よしっ!」
ようやくメニューが決まり、冷蔵庫から材料を取り出して立ち上がった。
「おー、俺が帰ってくる前に七星がこっちいるとか珍しいな」
靴を脱ぎながら帰ってきた龍志の目が、キッチンへと向く。
「……で。
これはいったい、なにをやってたんだ?」
聞いてくる彼の額に青筋が浮いているように見えるのは、気のせいだろうか。
……まあ、その理由はわかるけれど。
「……焼きそば作ろうとして、失敗しました」
コンロの上には麺がびっしりこびりついたフライパンが置いてある。
具材を炒めるまではまあ上手くいったがなぜか麺がほぼ全部、フライパンにくっついてしまったのだ。
どうにかして剥がそうと頑張ったが、菜箸のほうが折れそうで諦めた。
というか、くっつかないフライパンのはずなのに、なんでこんなにくっついたんだろう?
「はぁーっ」
龍志の口から特大のため息が落ちる。
そりゃ、疲れて帰ってきてこれを見たらそうなるというものだろう。
「……すみません」
私ごときが晩ごはんを作ろうなどというのがまず、無理があったのだ。
おとなしくカップ麺で我慢しておけばよかった。
「作ってくれようとしたのは嬉しかった」
涙目で俯いた頭上に声が聞こえてきて、顔を上げる。
龍志は呆れるようではあるけれど笑っていた。
「ちょっと待ってろ。
これをマシなメシに昇華してやる」
ジャケットを脱いで私に渡し、腕捲りした龍志がキッチンに立つ。
フライパンから竹ベラでこそげるだけ焼きそばをこそぎ、あとは冷蔵庫から卵を取ってきてなにやらやっている。
「できたぞー」
そのうち私の目の前に、あんなに悲惨だった焼きそばの面影などどこにもない、薄焼き玉子に包まれた物体が置かれた。
「オムそば、ですか……?」
ならばこの玉子の下は、あのくずくずの焼きそばなわけで。
「いいから食べてみろ」
促すように龍志がスプーンを渡してくる。
それを受け取り、料理ののったお皿を前にしてごくりとつばを飲み込んだ。
「いただきます」
端だと具がない場所の可能性もあるので、豪快に真ん中からいく。
中身はソースの色をしていた。
それに、麺ではないものが見える。
「え、ご飯ですか?」
「そ。
そば飯。
フライパンにこびりついて減った分、飯で補充した。
そば飯なら麺は短いほうが都合がいいしな」
「ふぉえー」
食べたそば飯のオムライスは玉子とソース、ご飯と麺がいい塩梅で美味しかった。
「そんなにカップ麺の夕食が嫌だったのか」
斜め前に座り、龍志も食べながらさりげなく聞いてくる。
「うっ。
ごほっごほっ!」
図星を指され、思わず咽せていた。
「大丈夫か」
「だ、大丈夫、……です」
慌てて水を飲み、どうにか落ち着ける。
「いや、別にカップ麺が嫌というわけでは……」
などと言い訳しながら、きょときょとと視線はせわしなくテーブルの上を這う。
「だいたい七星が悪いんだぞ、あんな嫌みを言うから」
「えと……」
私としてはあれは事実を言っただけなのに、やはり龍志はご不満みたいだ。
「いや、仮に嫌みだったら今日は、焼き肉か鉄板焼きかに連れていってやってたな」
「それって焼き肉か鉄板焼きを奢れってことですか……?」
これは嫌みではなかったのでかろうじて命拾いしたということだろうか。
龍志が連れていくのは私なんかが行くところよりも高級そうだし。
「は?」
なんか滅茶苦茶不機嫌そうに睨まれ、思わず身が竦んだ。
「なんで七星に奢らせるんだよ?
俺が奢ってやっていたって言ってんの」
「へ?」
ますます意味がわからなくて溢れたクエスチョンマークが頭の中で大渋滞している。
嫌みを言われてそんなに嬉しいなんてはずがない。
「オマエなー」
情報を処理しきれなくてフリーズしている私を見て龍志は呆れ気味だ。
「まー、そういう鈍いところが七星のいいところでもあるしな」
諦めたように彼はため息を落としたが、彼の言いたいことを少しも理解できない私のどこがいいのか、私にはさっぱりわからなかった。
紙コップに入れたコーヒーを手に向かった打ち合わせブースでは、COCOKAさんが待っていた。
「いえ、ぜんぜん」
曖昧な笑みを向けながら、きょろきょろと彼女が私の背後に誰かを探す。
それに心の中でため息をついた。
「今日、宇佐神課長は?」
「宇佐神は本日、外出しております」
「そうですか……」
あからさまに彼女は残念そうなため息をついたが、ため息をつきたいのはこちらのほうだ。
あれから彼女の配信動画をチェックし、問題がなかったのもあって契約は継続されている。
ええ、全部の動画をチェックするのがどれだけ大変だったことか。
時間がないので家でも食事をしながら観ていたので、龍志と微妙な空気だった。
「本日はどのようなご用件で?」
「あっ、そう!
宣伝動画の投稿についてなんですけど……」
下手をすれば会社に大きな損害を出させるところだったという脅しが利いたのか、それとも龍志効果なのか、最近のCOCOKAさんはとても素直で助かる。
しかし。
「あっ、なるほどですね!」
明るい声で彼女が合点がいったとばかりに手を叩く。
「ありがとうございます、そうしてみます」
「いえ。
こちらこそ、よろしくお願いします」
面会時間は五分で終わり、彼女はそそくさと帰り支度を始めた。
「では、お気をつけてお帰りください」
「はーい。
宇佐神課長によろしくでーす!」
エレベーターのドアが完全に閉まり、手を振る彼女が見えなくなってもう癖になりつつあるため息をつく。
そのまま俯き気味に部署へと帰ろうと回れ右をしたところでいきなり声が聞こえてきた。
「なんか疲れてるな」
「うわっ!」
おかげで思わず悲鳴を上げ、飛び上がりそうになった。
「もー、驚かさないでくださいよ」
「わるい、わるい」
声をかけてきた人――龍志は笑っている。
その手にはバッグが持たれ、外出の準備がされていた。
「悪かったな、居留守使って」
「いいですよ、別に」
COCOKAさんがわざわざ来社するのは、龍志が目当てだからだ。
本当はオンラインどころか電話やメールで済む要件でも来社する。
なので用事は五分で済むし、彼女はいつも私の後ろに龍志を探しているというわけだ。
龍志もちょっと困っているので、こうやって居留守を使ったりする。
「モテる男はつらいですね」
私としてはただ事実を告げただけのつもりだった。
けれど。
「七星はそれで、嫌になったりしないのか?」
一歩、私に距離を詰めてきた彼が、ぐいっと私を見下ろす。
レンズの向こうの瞳はかなりご不満なように私には見えた。
「えっと……。
別に」
両手でそれを押さえるようにしながらつい、目を逸らす。
……本当は、龍志にそうやって興味を持たれるのが少し嫌だった。
けれどこれは、そうやって上司を困らせられるのが嫌とか、そういうヤツなのだ。
……たぶん。
「ふぅん。
今日の晩ごはんはカップ麺な。
じゃ、いってくる」
「え……」
そのタイミングでエレベーターのドアが開き、龍志はさっさと乗り込んでしまった。
……晩ごはんはカップ麺って、なんでそんなに怒ってるの?
デスクに戻りつつ考えるも、先ほどの会話のどこにそんな要素があったのかわからない。
「……ううっ」
悩んだところでわからないものはわからないし、仕事も山積みなのでとりあえず忘れることにした。
今日は私のほうが帰りが早かった。
「たまには作るか……」
いや、別にカップ麺での晩ごはんを回避したいとかいうわけではなく、毎日、龍志に作ってもらっているのでたまには私が作ろうかと。
……嘘です。
カップ麺を回避したいだけです。
「なんにするか……。
うっ」
自分の部屋の冷蔵庫を開けて固まった。
飲み物とゼリーくらいしか入っていない。
それもそうだ、最近はお風呂に入る、寝る以外の時間、ほとんど龍志の部屋で過ごしている。
そりゃ、冷蔵庫がほぼ空でも不思議ではない。
「龍志の部屋に行けばなんかあるか……」
仕方なく腰を上げ、ガーデンサンダルをつっかけて隣の部屋に向かう。
もちろん、合い鍵はもらっている。
「おっじゃましまーす……」
なんとなくそろりと部屋に入った。
いないときも勝手に使っていいとは言われているが、なんとなく主がいないときに入るのは遠慮してしまう。
「冷蔵庫、開けさせてもらいますね……」
なぜか断りつつ冷蔵庫を開ける。
私の買ったプリンとかアイスとかも入れてあるのでいつもなら勝手に開けるのだが、龍志がいないときだといけないことをしている気になるのはどうしてだろう。
「なにを作るか……」
作ろうと決めたものの、私は料理が苦手だ。
あの、手抜きと言いつつ手が込んでいるような料理をパパッと作る龍志には到底、勝てない。
それどころかまともな料理を提供できるのか不安になるところだ。
「……やっぱりカップ麺で諦めるか」
いくら考えてもいいメニューが出てこなくて冷蔵庫を閉めた。
私が作って唯一、家族が褒めてくれるのはカレーだが、龍志が帰ってくるまでの短時間でじっくりコトコト煮込んだ自慢のカレーは作れない。
「うー、あー」
唸りながら冷蔵庫のドアをぱたぱた閉じたり開いたりさせる。
龍志がいたら、電気代の無駄だと怒られそうだ。
「あ、そだ」
不意に、次の休みの昼ごはん用と先週末、買い出しに行ったときに龍志がチルドの焼きそばを買っていたのを思い出した。
あれなら、私でもできる。
ただ、次の休みの昼ごはんがなくなるが……まあ、そのときこそカップ麺でいい。
「よしっ!」
ようやくメニューが決まり、冷蔵庫から材料を取り出して立ち上がった。
「おー、俺が帰ってくる前に七星がこっちいるとか珍しいな」
靴を脱ぎながら帰ってきた龍志の目が、キッチンへと向く。
「……で。
これはいったい、なにをやってたんだ?」
聞いてくる彼の額に青筋が浮いているように見えるのは、気のせいだろうか。
……まあ、その理由はわかるけれど。
「……焼きそば作ろうとして、失敗しました」
コンロの上には麺がびっしりこびりついたフライパンが置いてある。
具材を炒めるまではまあ上手くいったがなぜか麺がほぼ全部、フライパンにくっついてしまったのだ。
どうにかして剥がそうと頑張ったが、菜箸のほうが折れそうで諦めた。
というか、くっつかないフライパンのはずなのに、なんでこんなにくっついたんだろう?
「はぁーっ」
龍志の口から特大のため息が落ちる。
そりゃ、疲れて帰ってきてこれを見たらそうなるというものだろう。
「……すみません」
私ごときが晩ごはんを作ろうなどというのがまず、無理があったのだ。
おとなしくカップ麺で我慢しておけばよかった。
「作ってくれようとしたのは嬉しかった」
涙目で俯いた頭上に声が聞こえてきて、顔を上げる。
龍志は呆れるようではあるけれど笑っていた。
「ちょっと待ってろ。
これをマシなメシに昇華してやる」
ジャケットを脱いで私に渡し、腕捲りした龍志がキッチンに立つ。
フライパンから竹ベラでこそげるだけ焼きそばをこそぎ、あとは冷蔵庫から卵を取ってきてなにやらやっている。
「できたぞー」
そのうち私の目の前に、あんなに悲惨だった焼きそばの面影などどこにもない、薄焼き玉子に包まれた物体が置かれた。
「オムそば、ですか……?」
ならばこの玉子の下は、あのくずくずの焼きそばなわけで。
「いいから食べてみろ」
促すように龍志がスプーンを渡してくる。
それを受け取り、料理ののったお皿を前にしてごくりとつばを飲み込んだ。
「いただきます」
端だと具がない場所の可能性もあるので、豪快に真ん中からいく。
中身はソースの色をしていた。
それに、麺ではないものが見える。
「え、ご飯ですか?」
「そ。
そば飯。
フライパンにこびりついて減った分、飯で補充した。
そば飯なら麺は短いほうが都合がいいしな」
「ふぉえー」
食べたそば飯のオムライスは玉子とソース、ご飯と麺がいい塩梅で美味しかった。
「そんなにカップ麺の夕食が嫌だったのか」
斜め前に座り、龍志も食べながらさりげなく聞いてくる。
「うっ。
ごほっごほっ!」
図星を指され、思わず咽せていた。
「大丈夫か」
「だ、大丈夫、……です」
慌てて水を飲み、どうにか落ち着ける。
「いや、別にカップ麺が嫌というわけでは……」
などと言い訳しながら、きょときょとと視線はせわしなくテーブルの上を這う。
「だいたい七星が悪いんだぞ、あんな嫌みを言うから」
「えと……」
私としてはあれは事実を言っただけなのに、やはり龍志はご不満みたいだ。
「いや、仮に嫌みだったら今日は、焼き肉か鉄板焼きかに連れていってやってたな」
「それって焼き肉か鉄板焼きを奢れってことですか……?」
これは嫌みではなかったのでかろうじて命拾いしたということだろうか。
龍志が連れていくのは私なんかが行くところよりも高級そうだし。
「は?」
なんか滅茶苦茶不機嫌そうに睨まれ、思わず身が竦んだ。
「なんで七星に奢らせるんだよ?
俺が奢ってやっていたって言ってんの」
「へ?」
ますます意味がわからなくて溢れたクエスチョンマークが頭の中で大渋滞している。
嫌みを言われてそんなに嬉しいなんてはずがない。
「オマエなー」
情報を処理しきれなくてフリーズしている私を見て龍志は呆れ気味だ。
「まー、そういう鈍いところが七星のいいところでもあるしな」
諦めたように彼はため息を落としたが、彼の言いたいことを少しも理解できない私のどこがいいのか、私にはさっぱりわからなかった。
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