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第四章 あなたを幸せにするのは……

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家が決まり、和家さんは一旦、アメリカへ帰ることになった。

「できればあの家に移ってからアメリカに戻りたいんだが、ちょっと用ができてね。
すまない」

出発する日の朝、申し訳なさそうに和家さんが詫びてくる。

「別にそれはかまいませんが」

だいたい、今回の帰国に私との結婚なんて予定はなかったはずだ。
急に私の妊娠がわかって彼の予定は狂いまくりだろう。

「それよりも、早く帰ろうって無理はしないでくださいね?」

「わかった。
李依とお腹の子のためにも無理はしない」

約束だと言わんばかりに、和家さんの唇が重なる。

「なにかあったら連絡してくれ。
すぐに帰ってくる」

「だから、そんな無理はしないでくれと言っているんです」

和家さんのことだから、本当にしそうで怖い。
しかも、彼はプライベートジェットを持っているのだ。
ちょっとしたことで今からすぐ帰るって、帰ってきかねない。

「わかってるって」

和家さんは笑っているが、ちゃんとわかってくれているのか疑わしい。

今日も会社まで和家さんが送ってくれる。
私を会社に送り届け、そのまま空港へ向かうらしい。

「あ、そうだ。
李依の車と運転手兼ボディーガード兼世話係、決めてきた。
今日の帰りから彼女が迎えに来るはずだ」

「ええっと……」

情報が多すぎて理解が追いつかない。
車……まではわかる。
運転手はかろうじて。
でもその先がわからない。

「あの、ボディーガードとか世話係とか……?」

「李依になにかあったら困るからボディーガードは必要だろ?
身の回りの世話をしてくれる人間も必要だ」

「はぁ」

そう……なのか?
今はホテル住まいだからホテルのスタッフがしてくれているが、和家さんにもそんな人がいるのかな……?

「しかし可愛い李依によろめかない男なんていないからな。
女性でも安心はできないが、男よりはマシだ」

これは本気で言っているのかな……?
私なんて過去に付き合った男はあの別れた彼しかいない。
よろめかない男はいないなんて大袈裟すぎるが、和家さんは真剣に心配している。
でも、そうやっていない相手にヤキモチを妬いているのは、可愛い。

「でも安心しろ。
彼女は元自衛官でそこらの男には負けないし、家事も育児もできるからな」

和家さんは酷く得意げで……もういいや、それで。
私にとっては普通じゃないが、和家さんにとって普通ならこれは慣れるしかないのだ。
諦めよう。
それに。

「私のためにありがとうございます」

こうやって私を思っていろいろしてくれるのが、嬉しくないわけがない。

「李依のためにいろいろするのは当たり前だろ」

照れくさそうにぽりぽりと人差し指で彼が頬を掻く。
なんだかそれに私も恥ずかしくなってきた。

「いってらっしゃい。
なるべく早く帰ってくるな」

今日も車から降りた私に、人目も気にせずに彼がキスしてくれる。

「悠将さんもいってらっしゃい、気をつけて」

そのまま素早くキスし返して、離れた。

「えっ、あっ、李依!?」

なにが起こったのかわかっていない和家さん――悠将さんに背を向ける。
顔が熱い。
でも、これくらいたまにはいいと思う。

「速攻で仕事終わらせて帰ってくるなー!」

会社に入る私の後ろから、上機嫌な悠将さんの声が追ってきた。
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