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最終章 パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました

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今日は森田さんからの仕事はなかったが、それでも休んでいた分たまっていたので、一時間ほど残業になった。
すでに駒木さんに連絡を入れているので、問題ないけれど。

「花夜乃さん!」

会社を出たらいきなり、目の前に大きな花束が出現した。

「駒木さんですよね?」

苦笑いでそれを避け、彼を探す。

「そうだよ」

すぐにバラの花束の陰から彼が姿を現した。

「なんでタキシードなんですかね?」

苦笑いで彼に促されるままに、停めてあった車に乗る。

「だって、今日は特別な日だからさ」

なんでもない顔で運転席に収まり、私がシートベルトを締めたのを確認して彼は車を出した。
今日が特別な日で駒木さんがタキシードならば、私はウェディングドレスでなければいけないのだが、こんな普通の服でいいんだろうか。

駒木さんが私を連れてきたのは、いつぞやも来た老舗高級ホテルだった。

「花夜乃さんもお着替えだよ」

そう言って彼は、私を衣装室へと連れていく。
そこにはウェディングの二次会で使えそうな、ミモレ丈の白ドレスが準備してあった。

「僕からのプレゼント。
どう?」

少し心配そうに駒木さんが私の顔をうかがう。

「嬉しいです……!」

こんなもの、用意してくれるなんて思ってもいなかった。
嬉しいサプライズだ。

「よかった」

ふにゃんと駒木さんも嬉しそうに笑う。
それだけで、幸せだなって思った。

ヘアメイクまでしてもらったあと行ったのは、フレンチのお店だった。

「ちゃんと婚姻届、提出してきたよ」

個室に案内されてすぐ、証書入れを開いて駒木さんが見せてくる。
それは結婚証明書で、彼と私は夫婦なのだと書いてあった。

「なんか不思議な気分ですね」

これで駒木さんと夫婦になったといわれても、あまり実感がない。
結婚式、挙げていないからかな……。

「そう?
僕は花夜乃さんと夫婦になったんだって凄く嬉しかったけど」

不思議そうに首を傾げたあと、彼は小箱を取り出した。

「やっとこれを渡せるね」

開けた中に入っていたのは想像どおり指環だったが、またデザインが変わっている。

「また買い直したんですか?」

「そう。
前の花夜乃さんは可愛いのが似合う感じだったけど、花夜乃さんをもっと知って、凜としたものがいいと思ったから、変えた」

私の左手を取り、彼が薬指に指環を嵌めてくる。

「凜とした……」

確かにいわれるとおり、前のは花モチーフだったりで可愛いものだったが、今度はシンプルに緩くウェーブした中央に一粒ダイヤを抱くものになっていた。

「……嬉しい」

ただ、可愛いだけじゃなく、こういうふうに見てくれるなんて。

「喜んでもらえてよかった。
結婚指環は一緒に買いに行こうね」

「はい」

笑う彼に微笑み返す。
駒木さんは私に嬉しいをたくさんくれる。
こんな人が私の旦那様なんて、幸せだ。

食事のあとは取ってあった部屋に入った。
前と同じく、スイートルームだ。

「先にお風呂、入っておいでよ」

「あっ、はぃっ!」

つい、声が裏返り、くすりとか小さく笑われたら堪らない。

「うーっ」

念入りに身体を洗ったあと、浴槽に浸かりながら唸ってしまう。
今から駒木さんに抱かれるんだよね……。
ちゃんとできるかな。
私、そういうお作法みたいなの、全然知らないんだけれど。
不安だよ……。

「あがりました……」

「じゃあ、僕も入ってくるね」

私と入れ替わりで駒木さんが浴室へと行く。
冷蔵庫からスパークリングウォーターのペットボトルを掴み、先に寝室へ行った。
ベッドに座って飲みながら、落ち着かない。

「あがったよ」

しばらくして、駒木さんも寝室へ来る。
弄んでいたペットボトルを私の手から取り、彼は一口飲んだ。

「もしかして、緊張してる?」

隣に座った彼が私の太ももに手を置くだけで、ぴくりと反応してしまう。

「……してます」

「無理はしなくていいからね。
少しでも怖かったり、嫌だったら言って」

頬に落ちかかる私の髪を、彼が耳にかける。
するりと頬を撫でられ、唇が重なった。
そのまま、ゆっくりと押し倒される。

「花夜乃さん。
……愛してる」

のしかかり、駒木さんはじっと私を見つめた。

「……私も、愛してます」

証明するように腕を伸ばし、彼に口づけする。
満足げに微笑み、彼は眼鏡を外して置いた。

「花夜乃さん……」

今度は彼のほうから唇が重なる。
ちろりと唇を舐められ、素直に開いた。
すかさず駒木さんが入ってくる。
薄暗い室内にぴちゃぴちゃと私たちが立てる水音が響き、私の体温を上げていった。

「……はぁーっ」

彼が離れ、どちらの口からも落ちたため息は甘い。

「服、脱がすね」

彼の手が私の服を脱がしていき、すぐに下着姿にされた。

「……恥ずかしい」

耐えられなくて、駒木さんから顔を背ける。

「綺麗だよ」

しかしすぐにちゅっと軽く口づけした彼に、元に戻された。

「花夜乃さんだけだと恥ずかしいよね、僕も脱いじゃうね」

あっという間に彼が黒のボクサーパンツ一枚になる。
すでにそこは半ば立ち上がっており、目を逸らしてしまった。

「怖い?」

「……ちょっと」

隠しても仕方ないので、正直に気持ちを話す。

「んー、今から花夜乃さんの気持ちも身体もできるだけほぐすけど、それでも怖かったらやめるから言ってね?」

「ん」

私の髪を軽く撫で、あやすように駒木さんは口づけを落とした。
それだけで、多少の無理はしようと思うのは、やっぱり愛の力なんだろうか。
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