契約書は婚姻届

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第5話 これって軟禁?

1.新しい習慣

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Gutenグーテン Morgenモルゲン,Meinマイン Schatzシャッツ(おはよう、マインシャッツ)」

目を開けると、金髪が飛び込んできた。
ちゅっ、唇にふれたそれに、一気に目が覚める。

「おはようございます……」

起きあがったもののまともに顔を見れない朋香に、くすりと尚一郎がおかしそうに笑った。

「準備ができたら降りておいで。
朝食にしよう」

「……はい」

ちゅっ、今度は額に口付けを落とすと、尚一郎は部屋を出て行った。

……はぁーっ、大きなため息が落ち、そのまま朋香はベッドに崩れる。

毎朝これだなんて、耐えられるんだろうか?
 

尚一郎の生い立ちを聞いてから、朋香は態度を少し、改めた。
一緒のベッドで眠るくらいはしてもいいかと思ったものの、その夜。

「尚一郎さん。
その、あの、……夜、」

「ん?
もしかして朋香、一緒に寝てくれるのかい?」

ぱぁーっと尚一郎の顔が輝き、見えない尻尾がばたばたとうるさく振られているわんこモードで見られると、一気に気分が萎えた。

「寝ませんから!」

思いっきり否定した瞬間、後悔した。
別に、そんなことが云いたかったわけじゃないのだ。

「そうかい。
じゃあ、僕からひとつ、お願いをしていいかな」

尚一郎がにっこりと笑って、意外、だった。
きっといつものように落ち込むんだと思っていたから。

「お願い、ですか」

「うん。
朝は、僕に起こさせてくれないかな。
そして夜は朋香が眠るまで傍にいさせて」

するり、尚一郎の手が頬を撫で、レンズの奥の目が眩しそうに細められる。

「それくらい、なら」

だいたい、一緒のベッドで眠っていいと云うはずだったのだ。
これくらいは容易い。

「よかった。
これで、朝起きて朋香が一番初めに見るのは僕だし、夜、最後に見るのは僕だね」

ちゅっ、頬にふれる唇。

……どうして尚一郎はいちいち、恥ずかしいことをしたがるんだろうか。

熱くなった顔で黙ってしまった朋香にちゅっ、再び尚一郎が唇を落とした。
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