家政夫執事と恋愛レッスン!?~初恋は脅迫状とともに~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第7章 家政夫執事の独占欲

7-5 私の可愛い彼氏(仮)

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「でも、やっぱり警察に行かねー?」

 警察、と言われるとどうしても、及び腰になってしまう。
 それに前に桃谷さんが、警察にも相談しているけど、誰がやっているのかわからない、って言っていたし。

「あのね。
ほかの作家さんも被害に遭ってるみたいだし、出版社さんに任せた方がいいと思うの」

「……それって」

 一気に、松岡くんが不機嫌になる。

 そんなに嫌い?
 立川さんが。

「仕方ねーよな、俺にはどうしょうにもできないし」

 小さくはぁっと松岡くんの口からため息が落ちる。

「早急に立川の野郎に相談しろ」

「うん、そうする。
……いたっ」

 なんでかいきなり、両方の頬を指でむにっと摘ままれた。

「なんか嬉しそうなのがムカつく」

「う、嬉しくなんか……ない、もん」

 もしかして、顔に出ていた!?

 だって、こんな用事でも王子様に会えるのが嬉しくないわけがない。
 それに王子様の立川さんだったら、華麗に姫を助けてくれそうだし。

 ……あ、でも、私は姫じゃないけど。

「浮気できねーように、しっかり痕つけといてやる」

「えっ、あっ、ちょっと!
……いっ」

 止める間もなく私の首筋をあらわにして松岡くんはまた……そこに噛みついた。

「ほんとはもっと、エロいところにいっぱい痕をつけたいけど……。
それで我慢しといてやる」

 ずきずきと痛む噛み痕を指で撫でられて、背筋がぞくぞくする。
 それにもっとエロいところって……。
 伊達に、私だってTLノベル作家をやっているわけじゃない。
 だからすぐにそれがどこを指すのか気づいた。
 おかげでぼん!とあたまが爆発する。

「紅夏。
おーい、紅夏ー?」

 完全にフリーズしてしまった私を、おかしそうにくすくすと松岡くんが笑っていた。


 松岡くんが晩ごはんを作りに台所へ行き、私もメールフォームを立ち上げる。

 ……えっと。

 少しだけ考えて、キーを叩く。

【立川様
いつもお世話になっております。
例の、嫌がらせの郵便の件で、また違うのが届きました。
それでご相談したいのですが、よろしいでしょうか。
ご都合のいいときでかまいませんので、連絡ください。
申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

大藤雨乃】

 ざっと読み直して誤字脱字をチェックし、送信ボタンを押した。
 本当はいつでも気軽にお電話ください、って言ってくれているけど、電話は私にとってハードルが高いのだ。
 最近はNYAINなんて便利な連絡手段があるから、非常に助かっている。
 というわけで、電話は本当に、非常事態のときしか使わない。

「続き……はごはん食べてからにしよう」

 集中力も切れたし、そのうち晩ごはんもできる。
 それに立川さんは返信がまめだから、ごはんを食べている間にもしかしたら来るかもしれない。

「うん、それがいい」

 ひとりで納得して椅子を立ち、茶の間へと移動した。


 今日の晩ごはんはエビドリアとスープ、ブロッコリーのサラダ。

「美味しい」

 エビドリアを食べて、ついつい顔がふにゃんと緩む。
 火曜日に立川さんと食べた高級なしゃぶしゃぶもいいけど、私としてはこっちの方が非常に好みだしほっとする。

「焼くだけで食べられる状態にして冷凍庫に入れておきます。
召し上がってください」

「うん、ありがとう」

 年明け早々、空っぽになってしまっていた冷蔵庫は、あっという間に松岡くんがお総菜でいっぱいにしてくれた。
 よくこれで飢え死にしなかったな、って笑いながら。
 おかげでしばらくは大丈夫そうだし、それに来るたびにこうやって補充してくれるから。

「では、本日はこれで失礼いたします。
また次回、月曜日に」

「はい、お疲れ様でした」

 ちゅっ、松岡くんの唇が私の頬に触れる。

「立川の野郎にさっさと解決しないと俺が許さねー、って言っとけ」

「偉そうだよ。
だいたい、立川さんが悪いんじゃないし」

 思わずくすりと、笑いが漏れた。

「そうだけどさ……」

 唇を尖らせてすねている松岡くんは結構、可愛い。
 それがしかも、執事服姿だと。
 なんかギャップ萌え?
 そんな感じ。

「うん、彼氏も心配してるので、って伝えとく」

「俺、彼氏?」

 ぱーっと松岡くんの顔が輝き、一瞬、ぶんぶんと勢いよく振られている尻尾の幻が見えた。

「うん、彼氏。
……いまは仮、だけど」

「……ちぇ」

 みるみる松岡くんの顔が萎んでいく。

 ごめんね、まだ本当の彼氏って言い切る自信がないの。
 ――私の方に。

「まあいいや。
おやすみ、紅夏。
ちゃんと戸締まりしとけよ」

「うん、わかった」

 もう一度、ちゅっと頬に唇が触れ、松岡くんは帰っていた。
 しっかりと戸締まりをして家の中に戻る。

「さて、頑張りますかね……」

 デジタルメモを立ち上げる前に一度、パソコンでメールをチェック。

「さすが、立川さん」

【嫌がらせの件、了解いたしました。
早い方がいいと思うので明日、お会いできますか】

 休みの土曜日にわざわざ会ってくれるというのは悪いが、でも少しでも早く相談したい。
 すぐに私は返信のメールを打った。
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