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最終章 執事服の王子様
13-2 同じ指環をつけたい
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「ただいまー」
温かいこたつでうとうとしていたら祐護さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
ちゅっ、祐護さんは私の額に口付けを落とした。
「すぐにごはんの用意するから待っててね」
「別に急がなくていいですよー」
手伝う、とか言った方がいいのかな。
でもなんだか照れくさい。
テレビをつけてぼーっと眺める。
さっきまで一緒のこたつに入っていたセバスチャンは、玄関が開くと同時に姿を消した。
「ふーん、ふんふんふーん」
なんだか、台所から鼻歌が聞こえてくる。
今日は祐護さん、酷くご機嫌みたいだ。
もしかして返事がもらえるからかな。
――返事。
この期におよんでまだ迷っている自分に苦笑いしかできない。
祐護さんには松岡くんに抱いていた、いつも一緒にいたいなんて思いはない。
それに松岡くんとは幸せな家族が思い描けたのに、祐護さんとの未来は想像できなかった。
でも、それでも、祐護さんには一杯支えてもらって感謝している。
だからいまはそれでいいんだと思う。
そこから本当に恋に発展する話だってあるんだし。
「ごはん、できたよー」
「はーい」
こたつの上を片付ける。
すぐに祐護さんがいろいろ運んできた。
ステーキにスープ、それにサラダとパン。
「これなら失敗がないからね」
困ったように祐護さんは笑った。
なんだかそういうのはほっとする。
「じゃ、食べようか」
今日はワインまで用意してくれていた。
しかもわざわざ、私の生まれ年のワインを。
ただエントリーしただけなのに、大げさすぎておかしくなってくる。
「あ、その前に」
グラスを取ろうとした私を制して、彼はごそごそとなにかを取り出した。
「これ。
受け取ってくれないかな」
小さな箱を私の目の前で開ける。
その中には――指環が、入っていた。
「あの……」
プロポーズ、とかだったら気が早すぎる。
まだ私に、そこまでの覚悟はない。
「あっ、エンゲージリングじゃないから!
……いや、そうなったらいいんだけど。
ただの、ペアリング。
ほら」
祐護さんが右手を見せてくる。
その薬指には同じデザインの指環が嵌まっていた。
「紅夏に僕と、同じ指環をつけてほしい」
じっと、祐護さんが眼鏡の奥から私を見つめている。
その返事がなにを意味するかなんてわかっていた。
『紅夏の本当の彼氏になりたい』
ちらりと松岡くんの言葉があたまの隅をかすめていく。
でもあれは、全部演技だった。
忘れて、私は祐護さんを好きになる。
「……はい。
私も、祐護さんと同じ指環をつけたい、です」
祐護さんの、眼鏡の奥の目が眩しそうに細められる。
私の右手を取り、彼は薬指に指環を嵌めた。
「本当は左手に嵌めたいんだけどね」
祐護さんの顔がゆっくりと近づいてくる。
私も目を閉じてそのときを待った。
――けれど。
「あ、これはやっぱりあとで。
今晩、紅夏の初めてをもらうときに思いっきり甘く、ね」
意味深に祐護さんがふふっと笑う。
なにを言っているのか理解したあたまは……ぼふっと爆発した。
ワインを傾けながらゆったりと食事をする。
こんなに楽しい食事はいつ以来だろう?
「紅夏。
食べながら寝ちゃダメだよ」
目の前のステーキがゆらゆら揺れる。
昨晩はゆっくり寝たとはいえ、ここのところ不眠不休に近かったし、まだ疲れているのだろうか。
それに、お酒も入ったし。
がくんとあたまが落ちて、衝撃で目を開けた。
けれどすぐにまた、目の前がゆらゆらと揺れだす。
「ほら、寝ちゃダメだって」
祐護さんがおかしそうにくすくすと笑っている。
わかっているのだけれど、眠くて眠くて仕方ない。
「あーあ、寝ちゃった。
おやすみ、紅夏。
よい夢を……」
額に触れた柔らかい感触を最後に、意識は暗闇に閉ざされた。
温かいこたつでうとうとしていたら祐護さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
ちゅっ、祐護さんは私の額に口付けを落とした。
「すぐにごはんの用意するから待っててね」
「別に急がなくていいですよー」
手伝う、とか言った方がいいのかな。
でもなんだか照れくさい。
テレビをつけてぼーっと眺める。
さっきまで一緒のこたつに入っていたセバスチャンは、玄関が開くと同時に姿を消した。
「ふーん、ふんふんふーん」
なんだか、台所から鼻歌が聞こえてくる。
今日は祐護さん、酷くご機嫌みたいだ。
もしかして返事がもらえるからかな。
――返事。
この期におよんでまだ迷っている自分に苦笑いしかできない。
祐護さんには松岡くんに抱いていた、いつも一緒にいたいなんて思いはない。
それに松岡くんとは幸せな家族が思い描けたのに、祐護さんとの未来は想像できなかった。
でも、それでも、祐護さんには一杯支えてもらって感謝している。
だからいまはそれでいいんだと思う。
そこから本当に恋に発展する話だってあるんだし。
「ごはん、できたよー」
「はーい」
こたつの上を片付ける。
すぐに祐護さんがいろいろ運んできた。
ステーキにスープ、それにサラダとパン。
「これなら失敗がないからね」
困ったように祐護さんは笑った。
なんだかそういうのはほっとする。
「じゃ、食べようか」
今日はワインまで用意してくれていた。
しかもわざわざ、私の生まれ年のワインを。
ただエントリーしただけなのに、大げさすぎておかしくなってくる。
「あ、その前に」
グラスを取ろうとした私を制して、彼はごそごそとなにかを取り出した。
「これ。
受け取ってくれないかな」
小さな箱を私の目の前で開ける。
その中には――指環が、入っていた。
「あの……」
プロポーズ、とかだったら気が早すぎる。
まだ私に、そこまでの覚悟はない。
「あっ、エンゲージリングじゃないから!
……いや、そうなったらいいんだけど。
ただの、ペアリング。
ほら」
祐護さんが右手を見せてくる。
その薬指には同じデザインの指環が嵌まっていた。
「紅夏に僕と、同じ指環をつけてほしい」
じっと、祐護さんが眼鏡の奥から私を見つめている。
その返事がなにを意味するかなんてわかっていた。
『紅夏の本当の彼氏になりたい』
ちらりと松岡くんの言葉があたまの隅をかすめていく。
でもあれは、全部演技だった。
忘れて、私は祐護さんを好きになる。
「……はい。
私も、祐護さんと同じ指環をつけたい、です」
祐護さんの、眼鏡の奥の目が眩しそうに細められる。
私の右手を取り、彼は薬指に指環を嵌めた。
「本当は左手に嵌めたいんだけどね」
祐護さんの顔がゆっくりと近づいてくる。
私も目を閉じてそのときを待った。
――けれど。
「あ、これはやっぱりあとで。
今晩、紅夏の初めてをもらうときに思いっきり甘く、ね」
意味深に祐護さんがふふっと笑う。
なにを言っているのか理解したあたまは……ぼふっと爆発した。
ワインを傾けながらゆったりと食事をする。
こんなに楽しい食事はいつ以来だろう?
「紅夏。
食べながら寝ちゃダメだよ」
目の前のステーキがゆらゆら揺れる。
昨晩はゆっくり寝たとはいえ、ここのところ不眠不休に近かったし、まだ疲れているのだろうか。
それに、お酒も入ったし。
がくんとあたまが落ちて、衝撃で目を開けた。
けれどすぐにまた、目の前がゆらゆらと揺れだす。
「ほら、寝ちゃダメだって」
祐護さんがおかしそうにくすくすと笑っている。
わかっているのだけれど、眠くて眠くて仕方ない。
「あーあ、寝ちゃった。
おやすみ、紅夏。
よい夢を……」
額に触れた柔らかい感触を最後に、意識は暗闇に閉ざされた。
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