孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
52 / 59
第七章 嫉妬と愛と

7-6

しおりを挟む
私は思いがけず休みになったのでいいが、海星はのんびり食後のコーヒーを傾けていて気になった。

「あのー、海星……?」

「俺も今日は休みにした。
会議も接待も入ってなかったからな。
それに憲司のところにも寄らないといけないし」

「砺波さんのところに……?」

どうして彼の名前が出てくるのかわからなくて、首が斜めに傾く。

「昨日の件は花音に対する性犯罪と名誉毀損で訴える」

海星さんは本気だ。
きっとそれくらいしないと彼の気が済まないのはわかっているし、なら私も反対しない。
しかし、気にかかることがあるのだ。

「昨日のあれ、右田課長は本気だったんでしょうか……?」

今にして思えばキスされる直前、ごめんと謝られた気がする。
私を海星から奪うつもりなら、そんな必要はない。
それに思い出せば思い出すほど、昨晩の右田課長はらしくなさすぎた。
一晩経って頭も冷えると、あれは演技だったんじゃないかと思えてくる。
でも、なんで?
彼なら海星と揉めるのはわかっていたはず。
なのにそんな危険を冒してまで、あんなことをする必要があったんだろうか。

「そう……だな」

少しのあいだ考えていた海星もおかしいと気づいたらしく、顔を上げた。

「普段の右田課長なら人を貶めてまで自分の我を通そうとなどしない」

同意だと勢いよく頷く。

「なにかありそうだな。
調べておく」

海星がそう言ってくれてほっとした。

「時間ができたし観光でもして帰るか」

海星は早速、携帯片手に観光地を調べている。
結局、訴える話は保留になった。
事情があってもキスしてきたのは許せないが、それでも訳を聞いてから決めたい。

「近くにアウトレットモールがあるな。
買い物でもするか」

「あ、いや、買い物はいいんじゃないですかね……?」

やんわりと海星の申し出を断る。
初めて海星に百貨店に連れていかれた日、山ほど服を買ってくれたうえに、ときどきなんだかんだいって外商の影山さんに服を持ってこさせては全部お買い上げするのだ。
おかげでレジデンスのウォークインクローゼットはかなり広いのにパンクしそうになっていた。

「いや。
昨日のお詫びになにか買ってやりたいからな。
アウトレットモールで決まりだ」

携帯をポケットにしまい、海星が身支度をしだす。

「うん……はい……わかりました……」

またきっと、とんでもない量を買うんだろうなと、私が遠い目をしたのは言うまでもない。



海星が気の済むまで買い物をし、車のトランクをパンパンにしてアウトレットモールを出る。

「ふふっ」

ふと胸もとに目を落としては、嬉しくてつい笑ってしまう。

「満足してもらえたみたいでよかった」

「あっ、はい!」

くすりとおかしそうに小さく笑われ、焦って返事をする。
私の胸もとには海星が買ってくれた、ペンダントが下がっていた。
お詫びなどいいと断ったが、見るくらいいいだろと入ったアクセサリーショップで紐を結んだようなデザインのものが気に入ったのだ。
でも、悪いしと一度は店を出たもののどうしても忘れられず、結局買ってもらった。

「ありがとうございます、海星」

「いや。
俺は花音の喜ぶことならなんでもしたいだけだ」

下がってもいない眼鏡を海星が上げる。
でも、弦のかかる耳が真っ赤になっていた。

レジデンスに帰り着いた途端、見ていたかのタイミングで海星の携帯が鳴った。

「父からだ」

画面を見て彼は嫌そうな顔をしたあと、電話に出た。

「はい、海星です。
……はい……はい」

話している彼を、不安な気持ちで見つめる。

「わかりました。
じゃあ、土曜日に」

通話を終えた彼は当たりを真っ黒に染めそうなほど、憂鬱なため息をついた。

「話があるから実家に来いってさ」

本当に海星は嫌そうだが、そうなるだろう。

「なんですかね、話って」

「まあ、だいたい見当はつくけどな」

困ったように彼が小さく笑う。
……あ。
そうか。
海星が実家に呼び出されるなんて、あの話しかない。

そっと自分の下腹部を撫でる。
けれどまだ、私にはなんの兆候もなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

再会した御曹司は 最愛の秘書を独占溺愛する

猫とろ
恋愛
あらすじ 青樹紗凪(あおきさな)二十五歳。大手美容院『akai』クリニックの秘書という仕事にやりがいを感じていたが、赤井社長から大人の関係を求められて紗凪は断る。 しかしあらぬ噂を立てられ『akai』を退社。 次の仕事を探すものの、うまく行かず悩む日々。 そんなとき。知り合いのお爺さんから秘書の仕事を紹介され、二つ返事で飛びつく紗凪。 その仕事場なんと大手老舗化粧品会社『キセイ堂』 しかもかつて紗凪の同級生で、罰ゲームで告白してきた黄瀬薫(きせかおる)がいた。 しかも黄瀬薫は若き社長になっており、その黄瀬社長の秘書に紗凪は再就職することになった。 お互いの過去は触れず、ビジネスライクに勤める紗凪だが、黄瀬社長は紗凪を忘れてないようで!?  社長×秘書×お仕事も頑張る✨ 溺愛じれじれ物語りです!

この溺愛は契約外です~恋焦がれた外科医から愛し愛されるまで~

水羽 凛
恋愛
不幸な境遇を生きる健気な女性花名は母親の治療費と引き換えに外科医である純正の身の回りの世話をすることになる。恋心を隠せない花名に純正は……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

処理中です...