天才魔導師と秀才魔法剣士を(いろんな意味で)癒すのがお仕事です

うづきなな

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再会

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 気を失ったように眠りついたゼリンダだが、お腹に重いものがずんと乗ったので目が覚める。カイに抱き枕にされていた。その反対側でシエルはゼリンダにくっついて、胎児のように丸まって眠っている。サラサラの髪が胸に当たってくすぐったい。寝相にも個性があることをふたりを見ているとわかる。シエルの髪をそっと撫でてもう一眠りしようかと思ったが、窓の外はもう明るいことに気づいた。カーテンのすき間からお日様の光が柔らかく差し込んでいる。枕元に置かれた時計は午前八時過ぎを指していた。起きて良い時刻だ。
 今日はお鍋を買いに行きたい。下半身がダル重いが、ゼリンダはカイから抜け出して起き上がった。下腹部のじんじんする痛みはふたりにいっぱい愛された証なので我慢できた。時間が経てば収束することもわかっている。
 ベッドから降りて立ち上がったが、昨夜お腹にたくさん注がれた精液が流れ出てこなかった。ゼリンダが眠っている間にカイとシエルがきれいにしてくれたらしい。
 ふたりとこうなってから、キラキラになった左手の魔宝石を見つめる。いつ見ても輝いている。カイがノーラに回復薬の作り方と回復魔法を教えてと頼んでくれていたのを思い出して、楽しみで頬が緩んだ。
 魔法で身を清めてもらっているようだが念の為シャワーを浴びて、朝ごはんを準備しようとゼリンダは思った。はたとこの家には食材はおろか調理道具すらないことに気づく。
 ゼリンダはまだ王都のことを何も知らない。ひとりで冒険のお出かけをしようかと思いつく。朝食が用意されていたらカイとシエルは喜んでくれる気がする。しかし迷子になる可能性を考えるとためらいが生まれた。
 悩んだ末、王都を見てみたいという好奇心が勝った。身支度を整え、メモを残してゼリンダは外出する。
 どちらへ行けば朝食を調達できるだろうかと、ゼリンダはアジトを出てすぐきょろきょろと見回す。
「おや、ゼリンダ」
「ノーラさん! おはようございます」
 どこかへ出かける様子のノーラが通りかかった。ノーラの隣には優しそうな顔の小柄なおじいさんがいる。ふたりの仲睦まじい雰囲気にゼリンダはにこにこする。知っている人に偶然出会えた喜びも上乗せされた。
「お出かけですか?」
「ああ。おじいさんと朝食デートさ。ゼリンダはひとりかい?」
「カイとシエルはまだ寝てるので、二人の分もどこかで朝ごはんを買いたいと思いまして。いいお店教えていただけますか?」
「まったく、だらしない男どもだねぇ。私たちが今から行くところが持ち帰りもさせてくれるから一緒に行くかい?」
「ぜひ!」
 ちょっと図々しいかなとも思ったが、他に頼れる人もいない。ゼリンダはノーラと旦那さんのデートに途中まで同行させてもらうことにした。
「ゼリンダ、あんた甘い香りがするね」
「そうですか?」
 ノーラに指摘されてゼリンダは自分の腕を上げてくんくんと匂いを嗅いでみるがわからない。
「なるほど。ゼリンダの花の蜜に誘われた虫なんだね、あのふたりは。カイがゼリンダを護る魔法を施しているから心配いらないと思うけど、一応用心しておきな」
「はい」
 何が何だかゼリンダはわからなかったが、ノーラの忠告を素直に受け入れてうなずく。ただ、カイとシエルは虫というにはカッコよすぎる。花をついばむ生き物なら虫より鳥の方がふたりに似合っている気がした。
「シエルを狙ってる女は多いからねぇ。昨日の子もだろう?」
「昨日の方は昔の彼女さんで……」
 ノーラは半眼になって呆れたようなため息をつく。おじいさんは隣でにこにこ話を聞いていた。
「優しいってのも罪だねぇ。シエルは本当にいい子なんだけどね。カイも悪いヤツではないけど」
 ノーラの、カイとシエルに対する評価がなんとなくわかる。どんな顔をすればいいのかわからないゼリンダはごまかすように前を見ると、人々がざわざわしていた。
「何かあったのかね?」
 おじいさんが首を傾げる。ゼリンダは以前感じたことのある気配を察知した。
「あいつがいるってことは、面倒事があったのかね」
 ノーラのつぶやきにゼリンダはどきりとする。
「ノーラさんって、すごい人ですか?」
「ノーラさんはすごい人だよ」
 おじいさんはにこにこ笑顔のままゼリンダに言う。
「わたしゃただの道具屋のおばあちゃんだよ」
 ざわつく人々を気にせず目的地へ向かうノーラは十分すごいおばあさんだとゼリンダは思った。
「あれ、ノーラさん! ゼリンダさんもいる」
 人混みの先にはノーラを見つけて満面の笑みでこちらに手を振るウォルフガング・ジルバーナーゲルがいた。
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