天才魔導師と秀才魔法剣士を(いろんな意味で)癒すのがお仕事です

うづきなな

文字の大きさ
41 / 52

呼び出し

しおりを挟む
 深夜までカイとシエルに愛されていたゼリンダは行為を終えると裸のまま寝落ちしていた。ふと目覚めるとカーテンの向こう側に陽の光が滲んでいるのがわかる。隣でシエルは寝ていたが、カイはベッドにいなかった。
 枕元の時計を確認すると、いつも通りの起床時刻だった。ゼリンダはシエルの頬にキスをしてから起き上がる。
「ゼリンダ……?」
 シエルが目を覚ましたが寝ぼけている。
「まだ寝てて良いよ」
 ゼリンダに頭を撫でられ、シエルは緩慢にうなずくとすぐに再び眠りに落ちた。シエルのこの寝起きの悪さと普段の気づかい男子ぶりのギャップがゼリンダはたまらなくかわいいと思う。
 ベッドから降りてハンナに作ってもらった下着を着ける。昨夜カイとシエルに胸やお腹につけられたキスマークもデザインの一部になったように思えて余計に愛おしくなる。そしてミアに作ってもらった服を着る。着心地が良い。どちらもとても素敵なので纏うだけで気持ちが華やかになった。気合を入れて、カイとシエルに朝ごはんを作ろうと一階へ移動する。
 リビングのソファに上半身裸のカイがいた。手には魔導書が一冊、テーブルに魔導書が五冊は積まれている。徹夜で魔導書を読み耽っていたらしい。カイの体調は心配になるが、いつものことなので驚かない。鎖骨のあたりにゼリンダが仕返しにつけたキスマークがうっすら残っていた。
「おはよ」
「ん……もう朝か。おはよう」
 カイはゼリンダが起きてきたことで、朝になっていたことに気づいた。
「朝ごはん作るね」
 キッチンへ向かったゼリンダにカイがついてくる。ゼリンダがエプロンを着けているとカイが背後から抱きついた。恋人のサラサラの長い髪に頬擦りをする。大きいネコのようだとゼリンダは思ったが、ネコにしては大きすぎてしっくりこない。当てはまる動物を考え、クマが思い浮かぶ。本当の熊は獰猛だが、ぬいぐるみのクマならかわいらしい。
「どうかした?」
「カイはネコよりクマかなって」
「何それ。ゼリンダをまた食って良いってこと?」
 ゼリンダに絡みついているカイの大きな手がそろそろ動いて右手は下腹部へ、左手は乳房を弄りはじめる。カイの端正な唇がゼリンダの耳殻から首筋に啄むようなキスを繰り返した。
「ァ……っ」
 朝食の準備をしたいのに、この状態で包丁を握るのは危険なので抽斗から出せない。ゼリンダはカイにされるがままになる。
「ごはん、作れないよぉ……」
 ゼリンダはわずかに身じろぎして甘えた声で微かに抵抗してみせるが、カイにはもっとしてほしいとねだっているようにしか感じられなかった。彼女の望み通りに項に噛みつくようなキスをする。
「ひゃん……ッ」
 喘ぎ声とともにビクンとゼリンダが反応したのとほぼ同時に、玄関ドアがノックされた。
 良いところを邪魔されたとカイは小さく舌打ちする。ゼリンダは気づかないふりをして玄関へ向かった。
「はーい……」
 こんな朝早くから誰が何の用だろうと思いながら扉を開く。
「早朝から申し訳ございません」
 何度もお世話になっているローズブレイド家の御者だった。
「ウッツさん。何かありましたか?」
「王宮から旦那様へ、皆様を早急に王宮へお連れするよう連絡がございましたのでお迎えに上がりました」
 何事かとゼリンダは目を丸くする。ゼリンダはともかく、カイはまだ身支度できていないし、シエルは二階で寝ている。
「ちょーっとお待ちいただけますか?」
「承知いたしました」
 ドアを閉めるとゼリンダはあわてて二階へ駆け上がる。
「起きてー! シエル、起きてー!」
 ゼリンダは一生懸命シエルを目覚めさせようと揺さぶる。うとうとしていたシエルはゼリンダの腕を掴んでベッドに引きずり込んだ。
「わっ!」
 色気のない叫び声を上げたゼリンダをシエルは抱き枕のように背中からがっちり抱え込む。
「起きてー! 王宮へ行かないといけないの!」
「どうして?」
 覚醒していないシエルは普段のような穏やかさがない。ドスのきいた声でゼリンダに問いかける。
「わからないけど」
「わからないなら行かなくて良くない?」
 言いながらシエルはゼリンダの首筋にキスをする。
「王宮からの呼び出しだよ!?」
 寝起きの悪すぎるシエルにゼリンダは驚愕した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風
ファンタジー
気がついたら、俺は乙女ゲーの悪役令嬢になってました。 こいつは悪役令嬢らしく皆に嫌われ、周囲に味方はほぼいません。 完全没落まで一年という短い期間しか残っていません。 この無理ゲーの攻略方法を、誰か教えてください。 ライトオタクを自認する高校生男子・弓原陽が辿る、悪役令嬢としての一年間。 彼は令嬢の身体を得て、この世界で何を考え、何を為すのか……彼の乙女ゲーム攻略が始まる。 ※書籍化に伴いダイジェスト化しております。ご了承ください。(旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

処理中です...