祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

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1章

初陣

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 真堂家しんどうけはいわゆる祓い屋というか、拝み屋というか、そういう『人ならざるもの』の相手を生業としている。

 両親が海外へ行ったのも、その仕事の都合。当初は半年ぐらいで帰ってこられると言っていたけれど、依頼が途切れなくて1年以上家を空けている。

 亡くなった祖父はとてつもない能力者だったみたいだけど、私の知っているお祖父ちゃんはとても優しい、温厚な人だった。
    だからだと思うのだけど、我が家の流儀は『できるだけ平和的解決を図る』こと。

 私は小さい頃から修行しているけれど、未だに実戦経験がない。だから今日は初陣だ。

 淳くん、眞澄くん、誠史郎さんにどれくらい迷惑をかけてしまうかわからない。だけど3人は私の意思を尊重してくれた。

 今朝出会った真壁さんの言った『野良犬』は、おそらく吸血種――いわゆる吸血鬼、のこと。

    真壁さんはなかなかの武闘派らしいので有無を言わさず灰にしてしまう可能性が高いと誠史郎さんは言う。
    そんな百戦錬磨を相手に、私は出し抜くことができるのか不安に感じる。

 初めての実戦に、緊張しながら夜の公園を歩く。
 みんなはすでにこの吸血鬼騒動を小耳に挟んでいたらしく、詳しいことはすぐに調べがついた。

 この公園でこの1週間ほど、夜間、人気のない場所で何かに噛み付かれたという人が何人もいた。
 まだ殺されてしまった人はいない、とのことだから、身柄を確保するならできるだけ早めにしてしまいたかった。

 淳くんが誠史郎さんにうちに来てほしいと言ったのは、どちらかと言うと真壁さんを警戒していたらしいのだけど、何か真壁さんに対して思うことがあるようだ。

 真壁さんが真堂家と戦うつもりはないと思うけれど、を良く思っていないかもしれないから。

「大丈夫だ」

 私の緊張に気が付いたみたいで、眞澄くんが呟いた。

「俺たちがいるし、相手はなかなかのおバカさんみたいだからな」

 眞澄くんは片頬だけで不敵に笑ってみせる。

 吸血鬼は痕跡を残さずヒトを襲うことが多いのだけど、今回は違う。吸血鬼として未熟なモノが群れからはぐれてひとりで行動しているというのが淳くんと誠史郎さんの見解だった。

 だからこそ、私にもチャンスがある。
 を相手の吸血鬼が知らなければ。

 ただ、私の力はまだ誰にも試したことがない。そして今探している吸血鬼が適応できなければ死なせてしまうかもしれない。もしかしたら最悪の場合、私が倒されてしまうかもしれない。

 だけど眞澄くんの言葉は私の不安を和らげてくれる。

「……ありがとう」
「みさきの剣となり、盾となるのが俺たちの役目だ」

 眞澄くんは私の右手を取り、漆黒の瞳で凝視する。そんな状況ではないのに、私は眞澄くんの黒曜石のような瞳にどぎまぎしてしまった。

「来たな」

 眞澄くんが構えると少し強く風が吹く。木の葉が揺れて擦れる音がした。
 次の瞬間には眞澄くんと誰かが組み合っていた。相手は眞澄くんより身体は小さいけれど、力では負けていない。押し合いになっている。

「眞澄!」

 少し離れたところにいた淳くんと誠史郎さんが駆けつけ、眞澄くんと力比べになっている吸血種を取り押さえようとした。だけど彼はひらりと飛び上がり、私たちと距離を取る。

 一見するとかわいらしい少年みたいな姿をしていた。

 彼は怯む様子もなく、軽く地面を蹴って再びこちらに飛び込んでくる。すごいスピードだ。
 そこへ受けて立つのは眞澄くん。普通の人間だと太刀打ちできる相手ではないけれど、眞澄くんはスピードは若干劣るものの、パワーでは負けていない。

「眞澄くん!」

 私の武器である対魔用の特殊な脇差で加勢しようと動いたけれど、淳くんが私を止めた。

「あいつの狙いはみさきだ」

 誠史郎さんの鞭が風を切る音が聞こえて、少年の手首に絡みつこうとする。それをかわした彼の着地点を狙って、淳くんは私を庇いながら銀の銃弾を何発も続けて撃ち込む。だけどそれも命中しなかった。そして彼は闇に潜んでしまう。

 3人は私を背中で挟むように囲んで体勢を整える。

「ノーブレーキな感じだな」

 眞澄くんが軽口を叩いた。次の攻撃に備えて太刀を構えるその横顔は、どこか楽しそうに見えた。

「何も学ばないではぐれたのでしょう」
「言葉が通じるかもあやしいぜ」

 私は深呼吸をした。これ以上足手まといになりたくない。

 そのとき頭上に異変を感じた。木の上に彼は潜んでいた。
 淳くんが冷静に狙いすまして放った銃弾が命中した少年は体勢を崩し、そこをすかさず誠史郎さんが鞭で捕縛する。

 彼は肩を負傷して、その痛みのせいか非常に興奮していた。だけどこちらとして解放してあげるわけにもいかない。

「落ち着いて……!」

 私は不用意に少年に近づいてしまった。

「みさきさん!」

 誠史郎さんの声が聞こえた時には、突風のような速度で動いた少年の顔が目の前にあった。
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