祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

文字の大きさ
11 / 145
2章

狙われた少年 3

しおりを挟む
 火曜日の昼休み。

 咲良と莉緒と莉緒の友達で同じクラスの副島そえじま優奈ゆうなさんと私の4人で屋上でお昼ごはんを食べることになった。

 たわいもない世間話に花を咲かせていたのだけど、私はどうしても昨日の莉緒の様子が気になり単刀直入に聞いてみた。

「莉緒は佐藤宗輔くんと何かあったの?」

 莉緒はきょとんとした顔をする。

「いきなりだねー、みさき」
「なんか、昨日の朝の莉緒が暗かった気がして……」

「……中高と一緒の腐れ縁でさ、その上今は部活も一緒だから、いろいろと話が入ってくるのよ。あいつ、中学のときはサッカー部のエースで勉強もできて、学内では1番のモテ男だったの。それが高校に入学したら水谷先輩と武藤先輩や西山先生っていう殿上人がいたワケ。だけど身の程を知らずに変な対抗意識燃やして寄ってくる女子たちを次々と泣かせるし、サッカー部の先輩の彼女を奪ってみたりで、チーム内の雰囲気をぶち壊してくれるの。さらにこないだの試合で怪我して足を痛めて後輩に八つ当たりする。そんなこんなでこっちがイライラしてるところに今度はみさきにちょっかい出そうとしてるから、もう腹が立って。あんた他にもっとやることあるでしょ!」

 莉緒は一気にまくし立てて息を切らせた。咲良と優奈はあー、と生温い眼差しになる。

「そんなに酷いんだ……」

 咲良が呟くと莉緒はカッと目を見開いた。

「そうなのよ!」

 莉緒がヒートアップする。

「だいたい、水谷先輩も武藤先輩も、女の子泣かせるって言ったって告白を全部断って泣かせてるという紳士なのに、佐藤はちょっと付き合ってすぐに飽きてポイ系なのよ! 二股三股も当たり前だし。みさきにちょっかい出そうとしてるのだって、たぶんおふたりへの対抗意識なのよ! 身の程を知れ!」

 私の勘は大はずれだった。
    莉緒の怒りはサッカー部マネージャーとしてのものだ。佐藤くんと互いに負の連鎖を起こす可能性は皆無と言っても良いかもしれない。

「莉緒の好きなひとって……」
「莉緒は他校にラブラブな彼氏いるんだよー」

「優奈!」
「いーじゃん。別に秘密じゃないでしょ? みさきは好きな人いないの?」

「私の好きな人……?」

 考えたこともなかった質問に、思考が停止してしまう。

「そう言う優奈はどうなのー?」

 からかうような咲良の優奈への質問でうやむやになったけれど、私の中ではもやもやしたものが残ってしまった。




 午後の授業も終了し、帰り支度をして教室を出ようと思っていると何だか女の子たちがざわざわしていた。
   下校で混雑する廊下で眞澄くんと淳くんが待っていた。

「帰ろうぜ」

 こくりと頷いてみんなで歩き始めた途端、人影が立ちはだかる。

「ボクも仲間に入れてください」

 佐藤宗輔くんだった。だけど昨日とはまるで別人のように感じた。
    息を呑んで目を瞠った私を、眞澄くんは視線と手で制止した。淳くんは私を庇うように一歩前に出て返事をする。

「構わないよ」

 私は緊張で鞄の持ち手を強く握りしめた。

「ありがとうございます」

 佐藤くんが妖しく微笑む。

「行きたいところはあるかい?」
「そちらのご都合に合わせますよ」
「そりゃどーも」

 眞澄くんが疲れたように、ため息と共に吐き出した。


 学校から出てしばらく歩き、人目につきにくい場所へ移動する。周囲に他の人がいないことを確認して、眞澄くんが佐藤くんの前へ回り込んで顔を覗き込んだ。

「その身体から出て行ってくれないか?」
「嫌だ、と言ったら?」

 佐藤くんの中にいるは不敵に笑う。

「力ずくだな」

 眞澄くんがそう言った瞬間に空気が変化した。

   理由は待ち伏せていた誠史郎さんが結界を張ってこの空間を切り取ったから。これで結界内で起こっていることは私達以外にはわからなくなる。

「今すぐにこの世界から出て行くなら消滅はさせない」

 淳くんが言うと佐藤くんはにやにやと嫌な笑い方をした。

「甘いね、君たちは。この子は彼女を自由にできると聞いて、簡単にボクに身体を貸したのに」
「その件については、後ほど彼を説教しますのでご心配なく。貴方はみさきさんに何のご用ですか?」

「ボクの個人的な興味だよ。君たち半妖を従える、吸血種の天敵のお姫様はどんな味がするのかと思って」

 彼は舌舐めずりをして見せる。その光景に私は背筋が寒くなった。
    慌てて鞄から携帯用の対魔棍を取り出し、手元の伸びるスイッチを押して構える。

「あの、私、食べてもおいしくないと思います! お姫様でもありませんし! まだ死にたくないのでごめんなさい! 帰ってください!」
「え……?」

 あわてる余り早口で捲し立てて、佐藤くんの脳天目掛けて力いっぱい棍を振り下ろしてしまった。それが見事にヒットする。
   佐藤くんの身体は倒れ、中にいたものがするりと現れた。

「やはりインキュバス……」

 銃を持った淳くんの視線の先には男性とも女性ともつかない美しい容姿の人が宙を舞っていた。

「い、生きてるか?」
「大丈夫のようです」

 眞澄くんと誠史郎さんが意識を失って横たわる佐藤くんの生存を確認する。

「ああっ、ごめんなさい!」

 気絶した佐藤くんに何度も深々と頭を下げているとインキュバスの笑い声が響いた。

「ボクは本当に貴女を食べたりはしないよ。貴女の純潔を奪い、子を成したいのさ」
「子を……成す……」

 彼の言葉を反芻して理解すると、頭が真っ白になった。そして顔が真っ赤になる。
   いくら恋愛に疎くても、高校生なのでその程度の知識はある。

「むっ……ムリ! 無理です!!」
「お前……!」

 私を背中で庇った眞澄くんを見てインキュバスはとても美しい声で笑った。

「子作りのために、君達の誰かがボクに身体を貸してくれても構わないんだよ?」
「笑えないね」

 淳くんの声は氷の刃のようだったわ。

「みさきには指一本触れさせない」

 冷徹な瞳で狙いを定めて、退魔用の銃弾を撃ち込む。それでインキュバスは霧散した。その様子を見て淳くんは小さく溜息を吐く。

「……本体ではないね」
「あの様子では、また対峙することになりそうですね」
「大丈夫か?みさき」

 眞澄くんが私の肩に手を置いて、心配そうな表情をしていたわ。

「大丈夫。ちょっとびっくりしたけど。ありがとう」

 ちょっと引きつった笑顔になってしまったけれど、眞澄くんに応えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

男女比バグった世界で美女チート無双〜それでも私は冒険がしたい!〜

具なっしー
恋愛
日本で暮らしていた23歳喪女だった女の子が交通事故で死んで、神様にチートを貰い、獣人の世界に転生させられた!!気づいたらそこは森の中で体は15歳くらいの女の子だった!ステータスを開いてみるとなんと白鳥兎獣人という幻の種族で、白いふわふわのウサ耳と、神秘的な白鳥の羽が生えていた。そしてなんとなんと、そこは男女比が10:1の偏った世界で、一妻多夫が普通の世界!そんな世界で、せっかく転生したんだし、旅をする!と決意した主人公は絶世の美女で…だんだん彼女を囲う男達が増えていく話。 主人公は見た目に反してめちゃくちゃ強いand地球の知識があるのでチートしまくります。 みたいなはなし ※表紙はAIです

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...