祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

文字の大きさ
20 / 145
3章

王子様の秘密 4

しおりを挟む
「気付かれているとは思わなかったなぁ。さすがだね」

 笑顔でのんびりとそう言われて、私は拍子抜けしそうになったわ。

「真壁……さん?」
「あれ? みさきちゃんは僕のことを知ってるの?」
「あ、いえ……。初めまして」

 だけど、どう見ても透さんの血縁者。目元が特によく似ている。

「初めまして。ああ、透を知っているのかな? 良く目が似てるって言われるんだ」

 透さんはとても鋭い雰囲気だけど、彼はふんわりとした明るい空気を纏っていてとても人当たりが良
さそうだ。
    にっこりと笑って挨拶をしてくれた。

「母が君のお祖父さんの大ファンだから一方的に僕も知っていたんだけどね。だけど……そうか。君は眠り姫なんだね」

 ひとりでうんうんと納得している彼の言っていることの意味がわからない。私はぽかんとして彼を眺めた。

「オレは裕翔。おにーさんは?」
「ああ! ごめんね。名乗るのを忘れていて。僕ははるか。真壁遥だよ。透の兄だ。よろしく、みさきちゃん、裕翔くん」

 爽やかに遙さんは自己紹介してくれる。
    行方不明だと誠史郎さんは言っていたけれど、とても元気そう。それから透さんと違って関西弁で話さない。

「あいつはよろしくしたくないみたいだけど?」

 こちらに来ようとしない遥さんの連れを裕翔くんは見る。

「悪いね。シキは人見知りで」
「吸血種だよね、あいつ」

「そうだよ。悩み多き青年なものでね」
「この結界は遥さんが……?」

 私の質問に遥さんは無言で曖昧に微笑んだ。

   これは彼の仕業だと確信する。遥さんはすごい術者だ。
   だけど、どうして吸血種と行動しているのだろう。血を吸われたりしないのかしら。

「遥」

 少し苛ついた声音でシキさんが呼ぶ。若い男性の声だった。

「ごめんね。そろそろ行かないと」

 遥さんは申し訳ないという気持ちがとても伝わってくる苦笑を浮かべた。

「またいつか」

 笑顔でひらひらと手を振って踵を返す。そしてシキさんとふたりで去って行き、結界も解かれた。

 私と裕翔くんは顔を見合わせる。

「……帰ろっか」

 彼の言葉に私はこくりと頷いた。


「ただいまー」

 裕翔くんの声が玄関に響くと、淳くんが出迎えに来てくれた。

「お帰り」
「ヒスイに会ったよ」

 靴を脱ぎながらさらりと裕翔くんが言うので、淳くんはそれを優しい笑顔で聞いていて、ややあってから琥珀色の瞳を大きく見開いた。

「……え!?」
「あと、遥にも」
「ちょっ、ちょっと待って裕翔。話が見えない……」

 珍しく淳くんが狼狽えている。

「うーんとね、ヒスイがオレ達と戦おうとしたんだけど仲間が連れて帰って、遥が出てきた」
「遥って、誰だい? だけど仲間が翡翠を連れ戻すって……」
「透さんのお兄さんです。すごい術者みたいなんですけど、シキさんっていう吸血種と一緒にいて」
 淳くんは眩暈を感じたように額のあたりを押さえたわ。

「とにかく、みさきと裕翔は無事だったんだね?」
「うん。オレはヒスイと戦ってみたかったんだけどなー」
 裕翔くんが好戦的な微笑みを唇の端に浮かべた。
「コハクを返せって言われたよ。淳ってコハクだったの?」
 裕翔くんは悪気なくズバズバ言ってしまうので、横で聞いている私の方がハラハラしてしまうわ。
「……琥珀はもういないよ」
 淳くんの琥珀色の瞳に真っ直ぐな強い光が灯る。
「何そんなとこで話してんだ?」
 リビングにいた眞澄くんもこちらに顔を出したの。
「翡翠が現れたみたい。誠史郎に連絡するよ。誠史郎もひとりでは危ないかもしれないから」
 いつもの穏やかな淳くんに戻ってリビングへ入って行く。私たちもそれに続いた。


 誠史郎さんを眞澄くんと裕翔くんで途中まで迎えに行って、3人で帰ってきたわ。翡翠くんには仲間もいたので、暗い時間はできるだけひとりにはならないようにみんな気を付けようと言うことになったの。
 みんなでリビングに集まって、それぞれソファーや床に座ったわ。
 私と裕翔くんで、透さんのお兄さんに会ったことを話したの。
「……なるほど。それは真壁さんとの交渉に使えるかもしれませんね」
「交渉?」
「こちらの知らぬ間に三つ巴の状態になっているようですし、翡翠に手を引いてもらうために戦力は少しでも多い方が良いです。もっとも、真壁さんがお兄さんの状況を知っていたり、探していなければ交渉材料にはならないのですが」

 確かに行方不明というのは誇張されて伝わっただけで、実はお家を出て暮らしているだけだったら探していないかもしれない。だけど、術者が吸血鬼と共に行動しているというのは通常ではなかなかあり得ない事態よ。どんな事情があるのかしら。
「みさきさん、真壁さんに連絡をお願いします」
「は、はい」
 どう伝えれば良いのか悩みながら携帯電話を握りしめて画面を眺める。責任重大な気がするわ。
 何も思いつかなくてテーブルに突っ伏して唸っていると、淳くんがぽんぽんと私の頭を撫でてくれた。
「一緒に考えよう」
 淳くんの言葉に安心して自然に頬が緩む。
「ありがとう」

「眷属でない吸血鬼と人間が共に行動できるものなんでしょうかね?」
 誠史郎さんは顎の辺りに手をやって考えている。
「まあ、普通は無理だよな」
「シキは悩み多き青年なんだって。後ね、遥はみさきのこと眠り姫なんだねって言ってた」
 裕翔くんの発言で、そう言えば私はそんなことを言われたと思い出したわ。
「眠り姫……?」
 眞澄くんが首を傾げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

処理中です...