43 / 145
6章
君のとなり 3
しおりを挟む
「周や私たちに研究への協力を要請してきたのが、大学生だった亘理さんです。お断りしたのですが」
夕食を食べ終えて、流れで皆リビングに集まった。私は裕翔くんと透さんに挟まれてソファーに座る。ひとり掛けのソファーに腰掛けた誠史郎さんが話してくれたのは、現在お隣に住んでいる亘理さんとの出会いだった。
亘理さんは大学で遺伝子の研究をしていたそう。お祖父ちゃんと眷属のみんなの遺伝子を調べさせてほしいと訪ねてきた。特に隠している訳ではないけれど、一般には知られていないことをどこで調べたのかしら。
当時は今ほどインターネットが発達していないし、その情報収集能力に誠史郎さん達は驚いたそう。真堂家で亘理さんのことを調べたけれど、祓い屋の家系というわけでもなかったとのこと。
だけど、どうも亘理さんも何らかの能力を持っていて、霊能者や祓い屋との繋がりを作って、お祖父ちゃんのところへ来たみたい。
お祖父ちゃんは科学的に知りたいと思わないと亘理さんの申し出を断ったそうだ。
「亘理さん、探求心の塊やからなぁ」
透さんが伸びをしながら呟く。彼も亘理さんと知り合いだそう。世間は広いようで狭い。私たちが身を置く業界なら尚更かもしれない。
隣に住んでいることは知らなかったけれど、遥さんと亘理さんは割と仲が良いらしい。
「1年も前から、何のために隣におるんやろなー」
並んでいる眞澄くんと淳くんは亘理さんのことに気が付かなかったと落ち込んでいるみたいで、少し元気がない。誠史郎さんも気づいていなかったから気に病むことはないと慰めていたのだけど。
「ま、みさきちゃんらのこと知りたいんやろうなー」
どこか楽しそうな透さんの言葉である可能性を思い当たる。だけど確証もないのに誰かを疑うのは良くない気もする。
「せやけど亘理さんにインキュバスを寄越す能力はないと思うんや。ま、誰かに頼んだやったら別やけど。せやけどそれやったら、近所で生活する必要感じへんしなー」
私の考えていたことが読み取られたのかと驚いた。透さんは頭の後ろで両手を組んでストレッチのような動きをしている。
「私や真壁さんに会いたくないと思う程度には|疚(やま)しいことがあるのでしょう」
「俺のせい、かな」
「眞澄は悪くない!」
伏し目がちになって呟いた眞澄くんに、間髪入れず淳くんが珍しく大きな声を出した。
驚いたのは私だけじゃなかったみたいで、みんなの視線が淳くんに集中する。
「……ごめん。つい……」
淳くん自身もびっくりしたみたいで、透き通りそうに白い頬に赤みが射す。
「1年も前からすぐ傍にいたのですから、眞澄くんが目的ならもっと早く行動に出ていると、私も思います」
誠史郎さんにそう言われた眞澄くんは、少し安堵した様子で小さく微笑んだ。
「今オレ達がぐだくだ考えたってどーにもなんないよ。直接聞くのが1番早い」
沈みがちになっていた空気を裕翔くんの声が一掃する。確かに彼の言う通りだと納得して私はこくこくと頷いた。
「それより!シキだよ!また来るかなー?」
裕翔くんは楽しそうに足をばたつかせた。大胆不敵な笑顔だ。その時ふと、まだ遥さんからの返信が来ていないことを思い出した。
「遥さんから返事が来ないね」
「何や、また俺の知らんおもしろいことが増えてるんか?」
そう言えば透さんは、昨日シキくんが裕翔くんに決闘を挑んできたことをまだ知らなかった。なので私が手短に話す。
「ほんでまだ返事がないんか。遥も何考えてるんかよーわからんからなー」
「また来てくれれば何でも良いよ。オレ、あいつと戦ってみたい」
裕翔くんは好戦的に破顔する。それを見て、なぜか私は胸の奥がざわざわした。
「裕翔くん……」
「あれー?みさき、心配してくれてる?」
猫のようなくりくりとした瞳が鼻先が触れそうな距離で、私の顔を覗きこむ。
「心配してるよ」
からかわれているような気がして、少し拗ねたような言い方になってしまう。なのになぜか裕翔くんに抱き締められてしまった。
「裕翔くん!?」
「みさきはホントかわいいなー」
頬擦りをされて、顔に全ての血液が集まってきたように熱くなる。
「抜け駆けはあかんなあ」
固まっている私を背中から透さんが抱き寄せようとした。裕翔くんは離さないと言わんばかりに腕に力を込める。
「みさきが痛いだろ」
「そっちが手ェ離したらええやん」
いがみ合うふたりになんと声を掛ければ穏便に事態を終息できるか頭をフル回転させるけれど、良い案が何も浮かばないわ。
「ふたりとも離れろ」
眞澄くんが呆れた表情で私たちの前に立って、透さんと裕翔くんの頭を押した。申し訳ないけれど、私に絡んでいたふたりの腕が緩んだ隙にさっと席を立つ。
「みさきさんはこちらへ」
体勢を整えるより早く、柔らかく微笑んだ誠史郎さんに後ろ手に引かれてバランスを崩してしまう。そのまま誠史郎さんの上に座ってしまった。
「ごめんなさい!」
慌てて立ち上がろうとしたけど、誠史郎さんの腕が阻む。
「……誠史郎さん?」
「どうしましたか?」
薄く妖しい微笑に混乱しながら問いかけた。でも質問で返されてしまってさらに狼狽してしまう。
「誠史郎、いたずらが過ぎるよ」
ため息混じりに淳くんは言うと、私の手を取って立たせてくれる。
「悪戯ではありませんよ」
淳くんと誠史郎さん、どちらももの柔らかな面差しをしているけれど、静かに張り詰めた空気が流れる。
私がまだ答えを出せていないのがいけない。わかっているのでどうしたらこの場を収められるか考えた。
ソファーの向こう側へ移動して、唇を結んだまま鼻から大きく空気を吸う。1度目を閉じて呼吸を整えようと思った。
覚悟を決めて声を出そうとした時、私のふくらはぎにみやびちゃんが身体を擦りつけてきた。お散歩から帰って来たみたい。
「みさき、ごはんちょうだい」
「あ、うん……」
心の中でみんなに謝りながら、みやびちゃんにご飯をあげるためにかわいいおしりの後をついて行った。
夕食を食べ終えて、流れで皆リビングに集まった。私は裕翔くんと透さんに挟まれてソファーに座る。ひとり掛けのソファーに腰掛けた誠史郎さんが話してくれたのは、現在お隣に住んでいる亘理さんとの出会いだった。
亘理さんは大学で遺伝子の研究をしていたそう。お祖父ちゃんと眷属のみんなの遺伝子を調べさせてほしいと訪ねてきた。特に隠している訳ではないけれど、一般には知られていないことをどこで調べたのかしら。
当時は今ほどインターネットが発達していないし、その情報収集能力に誠史郎さん達は驚いたそう。真堂家で亘理さんのことを調べたけれど、祓い屋の家系というわけでもなかったとのこと。
だけど、どうも亘理さんも何らかの能力を持っていて、霊能者や祓い屋との繋がりを作って、お祖父ちゃんのところへ来たみたい。
お祖父ちゃんは科学的に知りたいと思わないと亘理さんの申し出を断ったそうだ。
「亘理さん、探求心の塊やからなぁ」
透さんが伸びをしながら呟く。彼も亘理さんと知り合いだそう。世間は広いようで狭い。私たちが身を置く業界なら尚更かもしれない。
隣に住んでいることは知らなかったけれど、遥さんと亘理さんは割と仲が良いらしい。
「1年も前から、何のために隣におるんやろなー」
並んでいる眞澄くんと淳くんは亘理さんのことに気が付かなかったと落ち込んでいるみたいで、少し元気がない。誠史郎さんも気づいていなかったから気に病むことはないと慰めていたのだけど。
「ま、みさきちゃんらのこと知りたいんやろうなー」
どこか楽しそうな透さんの言葉である可能性を思い当たる。だけど確証もないのに誰かを疑うのは良くない気もする。
「せやけど亘理さんにインキュバスを寄越す能力はないと思うんや。ま、誰かに頼んだやったら別やけど。せやけどそれやったら、近所で生活する必要感じへんしなー」
私の考えていたことが読み取られたのかと驚いた。透さんは頭の後ろで両手を組んでストレッチのような動きをしている。
「私や真壁さんに会いたくないと思う程度には|疚(やま)しいことがあるのでしょう」
「俺のせい、かな」
「眞澄は悪くない!」
伏し目がちになって呟いた眞澄くんに、間髪入れず淳くんが珍しく大きな声を出した。
驚いたのは私だけじゃなかったみたいで、みんなの視線が淳くんに集中する。
「……ごめん。つい……」
淳くん自身もびっくりしたみたいで、透き通りそうに白い頬に赤みが射す。
「1年も前からすぐ傍にいたのですから、眞澄くんが目的ならもっと早く行動に出ていると、私も思います」
誠史郎さんにそう言われた眞澄くんは、少し安堵した様子で小さく微笑んだ。
「今オレ達がぐだくだ考えたってどーにもなんないよ。直接聞くのが1番早い」
沈みがちになっていた空気を裕翔くんの声が一掃する。確かに彼の言う通りだと納得して私はこくこくと頷いた。
「それより!シキだよ!また来るかなー?」
裕翔くんは楽しそうに足をばたつかせた。大胆不敵な笑顔だ。その時ふと、まだ遥さんからの返信が来ていないことを思い出した。
「遥さんから返事が来ないね」
「何や、また俺の知らんおもしろいことが増えてるんか?」
そう言えば透さんは、昨日シキくんが裕翔くんに決闘を挑んできたことをまだ知らなかった。なので私が手短に話す。
「ほんでまだ返事がないんか。遥も何考えてるんかよーわからんからなー」
「また来てくれれば何でも良いよ。オレ、あいつと戦ってみたい」
裕翔くんは好戦的に破顔する。それを見て、なぜか私は胸の奥がざわざわした。
「裕翔くん……」
「あれー?みさき、心配してくれてる?」
猫のようなくりくりとした瞳が鼻先が触れそうな距離で、私の顔を覗きこむ。
「心配してるよ」
からかわれているような気がして、少し拗ねたような言い方になってしまう。なのになぜか裕翔くんに抱き締められてしまった。
「裕翔くん!?」
「みさきはホントかわいいなー」
頬擦りをされて、顔に全ての血液が集まってきたように熱くなる。
「抜け駆けはあかんなあ」
固まっている私を背中から透さんが抱き寄せようとした。裕翔くんは離さないと言わんばかりに腕に力を込める。
「みさきが痛いだろ」
「そっちが手ェ離したらええやん」
いがみ合うふたりになんと声を掛ければ穏便に事態を終息できるか頭をフル回転させるけれど、良い案が何も浮かばないわ。
「ふたりとも離れろ」
眞澄くんが呆れた表情で私たちの前に立って、透さんと裕翔くんの頭を押した。申し訳ないけれど、私に絡んでいたふたりの腕が緩んだ隙にさっと席を立つ。
「みさきさんはこちらへ」
体勢を整えるより早く、柔らかく微笑んだ誠史郎さんに後ろ手に引かれてバランスを崩してしまう。そのまま誠史郎さんの上に座ってしまった。
「ごめんなさい!」
慌てて立ち上がろうとしたけど、誠史郎さんの腕が阻む。
「……誠史郎さん?」
「どうしましたか?」
薄く妖しい微笑に混乱しながら問いかけた。でも質問で返されてしまってさらに狼狽してしまう。
「誠史郎、いたずらが過ぎるよ」
ため息混じりに淳くんは言うと、私の手を取って立たせてくれる。
「悪戯ではありませんよ」
淳くんと誠史郎さん、どちらももの柔らかな面差しをしているけれど、静かに張り詰めた空気が流れる。
私がまだ答えを出せていないのがいけない。わかっているのでどうしたらこの場を収められるか考えた。
ソファーの向こう側へ移動して、唇を結んだまま鼻から大きく空気を吸う。1度目を閉じて呼吸を整えようと思った。
覚悟を決めて声を出そうとした時、私のふくらはぎにみやびちゃんが身体を擦りつけてきた。お散歩から帰って来たみたい。
「みさき、ごはんちょうだい」
「あ、うん……」
心の中でみんなに謝りながら、みやびちゃんにご飯をあげるためにかわいいおしりの後をついて行った。
0
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比バグった世界で美女チート無双〜それでも私は冒険がしたい!〜
具なっしー
恋愛
日本で暮らしていた23歳喪女だった女の子が交通事故で死んで、神様にチートを貰い、獣人の世界に転生させられた!!気づいたらそこは森の中で体は15歳くらいの女の子だった!ステータスを開いてみるとなんと白鳥兎獣人という幻の種族で、白いふわふわのウサ耳と、神秘的な白鳥の羽が生えていた。そしてなんとなんと、そこは男女比が10:1の偏った世界で、一妻多夫が普通の世界!そんな世界で、せっかく転生したんだし、旅をする!と決意した主人公は絶世の美女で…だんだん彼女を囲う男達が増えていく話。
主人公は見た目に反してめちゃくちゃ強いand地球の知識があるのでチートしまくります。
みたいなはなし
※表紙はAIです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる