92 / 145
眞澄ルート 2章
たいせつなひと 6
しおりを挟む
「記憶がないんが、吉と出るか凶と出るかわからんけどな」
眞澄くんの産みの親がひどい人だとは思いたくないけれど、生活に困るほどお金がないのなら、大島先生からの報酬で動かないとは限らない。お腹を痛めて産んだ子さえ傷つけていたのだから、その記憶がないなら尚更だ。
全身に力が入ってしまう。これ以上、眞澄くんが傷つくようなことが起きてほしくない。
「彼女に接触する人物はこちらで全て把握していますから、ご心配なく」
「おー、こわ」
透さんはおどけたように肩を竦めて見せる。
私は誠史郎さんの言葉を聞いて少しほっとした。
「真壁一門の方が、その辺りは容赦ないと思いますが」
「そんなまじめに返さんでもええやん」
「みんな、悪い……。変なことに巻き込んで」
「眞澄のせいじゃないじゃん」
裕翔くんがさらりと発言すると、項垂れていた眞澄くんは頬を緩めた。
「サンキュ」
照れくさいのか、端正な顔を隠すように少し背ける。無性に眞澄くんを抱き締めたくなったけれどがまんした。
「それにしてもあのねーちゃんはツメが甘いな。亘理さんが隣に住んでるのにおとなしくしてるっていうんは、そうしてるんが目的やってことやのに」
透さんの言うことに、なるほどと納得してしまう。
だけど大島先生が動かないとは思えない。眞澄くんのお母さんを引きずり出すことに成功するとは考えにくいけれど、それがさらに彼女をむきにさせてしまう気がする。
「これ以上は温情をかけられない。彼女は眞澄を傷つけ過ぎた」
淳くんの双眸に凍てつくような冷たい光が宿る。
「自滅するのも時間の問題でしょう」
誠史郎さんは少し冷めた紅茶を飲み干した。
遅くならないうちに解散して、みんなそれぞれに行動する。
私は鍛練場へ行った。素振りしようと思っていた。
きちんと整頓されている竹刀の中の、私のお気に入りの一本を持とうと柄に触れたとき、引き戸の開く音がした。顔を上げてそちらを見ると、眞澄くんが扉にもたれるように立っていた。
「ここだと思った」
長い足でやおら歩き出した彼は私の目の前に立つ。
「ちょっとは付き合ってやるから、終わったら早く風呂入って寝ろよ」
眞澄くんからお風呂という言葉を聞くと、なぜか恥ずかしくなった。頬が熱いと思いながらこくりと頷く。竹刀からは手を離してしまっていた。
「何でそこで赤くなるんだよ?」
「だって……眞澄くんがお風呂って言うから……」
身体を縮めてもじもじしてしまう。唇を少し尖らせ、上目遣いに眞澄くんを見やった。
「一緒に入るとは言ってないだろ」
言ってから漆黒の髪と瞳の私の好きな人は、ややあって真っ赤になった。
沈黙が訪れるけれど、ちっとも気まずくない。くすぐったい気持ちになる。目が合うと、照れ笑いがこぼれてしまう。
開いたままになっていた扉の辺りでカタリと音がした。振り向くと淳くんが引き戸に手を掛けていた。
「お邪魔だった……かな?」
少し困ったように微笑む淳くんに、眞澄くんも私もぶんぶんと首を横に振る。
だけど穏やかに淳くんは破顔して立ち去ろうする。そこを眞澄くんが呼び止めた。
「淳……っ」
ゆっくりと振り返った淳くんは、姿勢よく立って漆黒を纏う青年を見つめる。
「淳には、ちゃんと伝えておきたい」
眞澄くんも、真っ直ぐに白皙の王子様を見ていた。
私も背筋をピンと伸ばす。きちんと話さないといけない。たいせつなひとだから、余計に。
「……大丈夫。わかってるから」
淳くんはやんわりと眞澄くんが口を開こうとしたのを遮った。
「僕はうるさい小舅だから、覚悟しておいて」
イタズラっぽく笑って、ちょっとだけ首を傾げる。
「……淳」
もう一度笑顔を見せてから踵を返したミルクティーの色をした王子様のシャツの裾を、慌てて掴んでしまった。それで淳くんは立ち止まってくれたけれど、こちらを振り返ってはくれない。
「淳くん……」
引き留めてしまった。何か言わなければと思うと、真っ先に浮かんだのはごめんねだった。
だけど謝るのは違う気がした。
握りしめてしまったシャツの裾はシワだらけだ。だけど手を離すことができなくて、顔も上げられない。言葉も見つからない。
「……みさき」
淳くんの優しい声がストンと私の中に入ってくる。恐る恐る上を向くと、穏和な微笑みを浮かべる彼がいた。
手から自然に力が抜けていく。私が淳くんのシャツを握るのを止めると、彼は優美な仕草でこちらへ身体ごと向いてくれた。
「笑って」
頭で考えて笑うというのは難しいみたいで、表情筋の動きがぎこちない。そんな私の顔がおもしろかったみたいで、淳くんはくすりと笑った。それにつられると私も自然に笑っていた。
「眞澄に意地悪されたら、すぐに告げ口においで」
淳くんの瞳があまりに優しくて胸が痛む。泣いてはいけないと唇をきつく結んで、深く頷いた。
「眞澄は生まれて初めての友達で、みさきは僕が守るべき大切なひとだよ。それはずっと変わらない」
淳くんの声に、また大きく頷く。
「……ありがとう」
泣くな、と私は自分に言い聞かせた。
「ふたりが笑顔でいてくれることが、僕も嬉しいから」
穏やかな表情でいた淳くんが何かを堪えるように瞳を閉じる。大きく息を吸ったと思うと、大股で一歩前へ出る。そして彼に強く腕を引っ張られると抱擁された。
体温が重なったのは一瞬で、淳くんはすぐに私から離れた。
「あまり遅くならないようにね」
普段と変わらないように口元を綻ばせてくれる。でもいつも穏やかな双眸はどこか寂しそうで、切なく揺れているように見えた。
何も言えないまま、すらりとした背中が去っていくのを見ていた。
ゆっくりと扉が閉じられる。
後ろで見ていた眞澄くんが静かに隣にやって来て、私の頭を撫でた。
眞澄くんの産みの親がひどい人だとは思いたくないけれど、生活に困るほどお金がないのなら、大島先生からの報酬で動かないとは限らない。お腹を痛めて産んだ子さえ傷つけていたのだから、その記憶がないなら尚更だ。
全身に力が入ってしまう。これ以上、眞澄くんが傷つくようなことが起きてほしくない。
「彼女に接触する人物はこちらで全て把握していますから、ご心配なく」
「おー、こわ」
透さんはおどけたように肩を竦めて見せる。
私は誠史郎さんの言葉を聞いて少しほっとした。
「真壁一門の方が、その辺りは容赦ないと思いますが」
「そんなまじめに返さんでもええやん」
「みんな、悪い……。変なことに巻き込んで」
「眞澄のせいじゃないじゃん」
裕翔くんがさらりと発言すると、項垂れていた眞澄くんは頬を緩めた。
「サンキュ」
照れくさいのか、端正な顔を隠すように少し背ける。無性に眞澄くんを抱き締めたくなったけれどがまんした。
「それにしてもあのねーちゃんはツメが甘いな。亘理さんが隣に住んでるのにおとなしくしてるっていうんは、そうしてるんが目的やってことやのに」
透さんの言うことに、なるほどと納得してしまう。
だけど大島先生が動かないとは思えない。眞澄くんのお母さんを引きずり出すことに成功するとは考えにくいけれど、それがさらに彼女をむきにさせてしまう気がする。
「これ以上は温情をかけられない。彼女は眞澄を傷つけ過ぎた」
淳くんの双眸に凍てつくような冷たい光が宿る。
「自滅するのも時間の問題でしょう」
誠史郎さんは少し冷めた紅茶を飲み干した。
遅くならないうちに解散して、みんなそれぞれに行動する。
私は鍛練場へ行った。素振りしようと思っていた。
きちんと整頓されている竹刀の中の、私のお気に入りの一本を持とうと柄に触れたとき、引き戸の開く音がした。顔を上げてそちらを見ると、眞澄くんが扉にもたれるように立っていた。
「ここだと思った」
長い足でやおら歩き出した彼は私の目の前に立つ。
「ちょっとは付き合ってやるから、終わったら早く風呂入って寝ろよ」
眞澄くんからお風呂という言葉を聞くと、なぜか恥ずかしくなった。頬が熱いと思いながらこくりと頷く。竹刀からは手を離してしまっていた。
「何でそこで赤くなるんだよ?」
「だって……眞澄くんがお風呂って言うから……」
身体を縮めてもじもじしてしまう。唇を少し尖らせ、上目遣いに眞澄くんを見やった。
「一緒に入るとは言ってないだろ」
言ってから漆黒の髪と瞳の私の好きな人は、ややあって真っ赤になった。
沈黙が訪れるけれど、ちっとも気まずくない。くすぐったい気持ちになる。目が合うと、照れ笑いがこぼれてしまう。
開いたままになっていた扉の辺りでカタリと音がした。振り向くと淳くんが引き戸に手を掛けていた。
「お邪魔だった……かな?」
少し困ったように微笑む淳くんに、眞澄くんも私もぶんぶんと首を横に振る。
だけど穏やかに淳くんは破顔して立ち去ろうする。そこを眞澄くんが呼び止めた。
「淳……っ」
ゆっくりと振り返った淳くんは、姿勢よく立って漆黒を纏う青年を見つめる。
「淳には、ちゃんと伝えておきたい」
眞澄くんも、真っ直ぐに白皙の王子様を見ていた。
私も背筋をピンと伸ばす。きちんと話さないといけない。たいせつなひとだから、余計に。
「……大丈夫。わかってるから」
淳くんはやんわりと眞澄くんが口を開こうとしたのを遮った。
「僕はうるさい小舅だから、覚悟しておいて」
イタズラっぽく笑って、ちょっとだけ首を傾げる。
「……淳」
もう一度笑顔を見せてから踵を返したミルクティーの色をした王子様のシャツの裾を、慌てて掴んでしまった。それで淳くんは立ち止まってくれたけれど、こちらを振り返ってはくれない。
「淳くん……」
引き留めてしまった。何か言わなければと思うと、真っ先に浮かんだのはごめんねだった。
だけど謝るのは違う気がした。
握りしめてしまったシャツの裾はシワだらけだ。だけど手を離すことができなくて、顔も上げられない。言葉も見つからない。
「……みさき」
淳くんの優しい声がストンと私の中に入ってくる。恐る恐る上を向くと、穏和な微笑みを浮かべる彼がいた。
手から自然に力が抜けていく。私が淳くんのシャツを握るのを止めると、彼は優美な仕草でこちらへ身体ごと向いてくれた。
「笑って」
頭で考えて笑うというのは難しいみたいで、表情筋の動きがぎこちない。そんな私の顔がおもしろかったみたいで、淳くんはくすりと笑った。それにつられると私も自然に笑っていた。
「眞澄に意地悪されたら、すぐに告げ口においで」
淳くんの瞳があまりに優しくて胸が痛む。泣いてはいけないと唇をきつく結んで、深く頷いた。
「眞澄は生まれて初めての友達で、みさきは僕が守るべき大切なひとだよ。それはずっと変わらない」
淳くんの声に、また大きく頷く。
「……ありがとう」
泣くな、と私は自分に言い聞かせた。
「ふたりが笑顔でいてくれることが、僕も嬉しいから」
穏やかな表情でいた淳くんが何かを堪えるように瞳を閉じる。大きく息を吸ったと思うと、大股で一歩前へ出る。そして彼に強く腕を引っ張られると抱擁された。
体温が重なったのは一瞬で、淳くんはすぐに私から離れた。
「あまり遅くならないようにね」
普段と変わらないように口元を綻ばせてくれる。でもいつも穏やかな双眸はどこか寂しそうで、切なく揺れているように見えた。
何も言えないまま、すらりとした背中が去っていくのを見ていた。
ゆっくりと扉が閉じられる。
後ろで見ていた眞澄くんが静かに隣にやって来て、私の頭を撫でた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる