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透ルート 2章
籠の鳥 4
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彰太くんには申し訳ないけれど空いている部屋がないので、鍛練場に布団を敷いて休んでもらっている。
私は眠る用意をして自室にいた。真宮家の次男さんに明日会わないといけないと思うと憂うつでため息が出る。
透さんと誠史郎さんのあの反応。一体どんな人なのだろう。
透さんの顔を見たいと思った。そうしたらこのモヤモヤが少し晴れる気がする。
なんとなくリビングへ行けば会えるような気がしたので、部屋から静かに出た。
人気のなくなったそこで、彼がひとりでソファーに座ってくつろいでいた。形の良い後頭部が見えただけで嬉しくなってしまう。
これでは透さんの思うつぼだとはっとして、口元が緩んでいないか確認する。
「透さん」
背もたれから覗きこむみたいにして声を掛けた。
「ありがとうございます」
「何が?」
お酒を飲んでいた透さんの瞳が、ちらりとこちらを一瞥した。
お風呂上がりの少し濡れた髪が色っぽくてドキドキしてしまう。
「彰太くんのこと、と……」
私は少し距離をあけて隣に座って、上目遣いに彼を見る。私を守ると言ってくれたことが嬉しかった。
「……何と言うか、その。私を……」
自分で口にするのは気恥ずかしい。どう言えば恥ずかしくないかとモゴモゴしていると、透さんは小さく笑った。
隣にいる美男子は、持っていた茶色い液体の入った背の低いグラスをテーブルにそっと置いた。
これは我が家のものではないと思うから、透さんが持ってきたのだろう。きれいな細工が施された素敵なグラスだ。
透さんはいつもセンスの良いものを身につけている。
お酒も見たことのない瓶だ。何と言うお酒を飲んでいるのか気になる。
「何もしてへんけど、みさきちゃんがそう言うなら」
ぎし、とソファーが軋む。透さんが動いてふたりの太ももがくっついた。感触にどきりとしてしまう。
大きな掌が私の頬を包み込んで上を向かせる。甘く破顔した彼から目が離せない。
「お礼、貰おうかな」
意図を理解して、戸惑っている間に呼吸が触れ合う距離になる。
私が目を閉じるより早く重なった唇から、お酒の味がした。大人のキスだと思った。
「えらい素直やな」
透さんは目の前でそうささやくと、艶やかな微笑みを整った口元に浮かべる。
「……お礼ですから」
つい負け惜しみを言ってしまう。
くすりと笑った透さんの双眸は、きっと全部見透かしていた。とても甘美で見惚れてしまう。どうしてこんなに惹かれてしまうのだろう。
誰か来てしまうかもしれないのに、深く口づけることを止められない。透さんの寝間着代わりの黒いTシャツの胸の辺りを、シワになるほどきつく握りしめた。
どんなに意地を張っても、こうして彼を受け入れていたら好きだと白状しているのと同じだ。
解放されると切ない吐息がこぼれた。まだ口の中を蹂躙する透さんの柔らかい粘膜の感触が残っている。
キスでアルコールの成分をもらってしまったのか、頭の芯がぼんやりする。
「……何て言うお酒ですか?」
「ウイスキーや」
唇が重なり、透さんの少しざらざらした舌が私の舌に絡んで奥から誘い出され、軽く吸われた。
「んン……っ!」
身体の力が抜けていく感じがする。
「部屋行ってもええ?」
耳朶を食んだ唇が、吐息でくすぐるようにささやいた。
「だ、だめです……」
「そりゃ残念」
その声は軽やかで、少しも残念そうではない。
透さんはパジャマ越しに私の左側の乳房に右手を添えながら、首筋を舌でなぞる。甘ったるい声がこぼれてしまわないよう、唇を固く結んで身体を縮め懸命に堪えた。
「ガマンせんでもええのに」
「誰か来ちゃ……んっ」
言い終わる前にキスで唇を塞がれる。透さんに侵食されて、神経伝達がうまくできなくなっていく。
「今度、俺が着てほしいパジャマ買いに行こか」
着衣越しとは言え、官能的に身体をまさぐってくる大きな手から逃れようと身を捩る。得体の知れない感覚に飲み込まれてしまいそうで怖かった。
だけど透さんの方が技術も経験も数段上で、艶やかに微笑みながら私を絡めとる。
私はうつ伏せになってソファーの肘掛けにしがみつく。
透さんは私の背中に覆い被さり、耳やうなじに唇を滑らせた。
浅い呼吸しかできなくて息苦しい。
だけど手の甲に押し当てた唇をそこから離すと、あられもない嬌声がこぼれてしまうからできなかった。
ついに透さんの手が、パジャマの裾から入り込んできた。上半身は下着をつけていないので無防備だ。
彼の手は遠慮なく下から持ち上げるように乳房を揉む。乳頭を指で挟まれ、弾かれると全身に電流が走ったみたいだった。
「ひ、ぁ……っ」
「かわいいなぁ」
首筋にねっとり透さんの舌が這う。敏感になっているので悲鳴のような喘ぎが漏れそうになったのを必死で耐えた。
「自分に正直になり」
やっと透さんの愛撫が止まって、緊張していた身体は崩れ落ちる。全身が火照っていた。
「とお、る……さん……」
肩で息をしながら、背後にいる秀麗な男性を少し振り返った。
「どうして……そんなに普通なんですか?」
私ばかりが余裕ない。この状況が嫌で拗ねているだけだとわかっている。
透さんが私を好きだと言ってくれることも本当だと信じているけれど、まだ迷っている。
「……普通やないよ」
軽々と器用に私を仰向けにした。その上にのし掛かるような体勢になって、私の頬を透さんは撫でる。
「カッコつけてるだけや。ホンマはこうやって襲いかかるんも、嫌われたらどないしよーってびくびくしてるんやで」
「じゃあ、どうして……」
続く言葉が恥ずかしくて、口ごもって視線を逸らす。
「本能と煩悩がなー、みさきちゃんに触りたくて仕方なくさせるんや」
柔らかく口づけて、透さんは目の前で不敵な笑みを浮かべた。
「みさきちゃんは何がそんなに怖いん?」
彼の瞳は全てを悟っているように感じる。
「……私だけ、が」
見つめ返すことが怖くて、少し横を向いて視線をフローリングに落とす。
「透さんに夢中で」
わからないから知りたくて。知ろうと近づくほどわからなくて。
「……そんなことあらへん」
透さんはとても嬉しそうに、だけど照れたように双眸を細めた。
「こんなに言うてんのに、信じてもらわれへん?」
額に、頬に、優しくキスされる。
「信じたいけど……怖いです」
風のように自由で掴み所のない男性。透さんは困ったようにはにかんだ。
「言葉じゃ伝えきれんから触りたいんや」
指がきつく絡められる。私の耳朶に透さんの端正な唇が寄せられる。思わず大きく酸素を吸った。
「何も怖がらんでええ。俺の全部でみさきを愛するから」
透さんの耳に心地好い声で甘く、だけど確信を持ってそう言われたら、おとなしく受け入れるしかない。
「よ、よろしく、お願い……します……」
照れくさくてまっすぐ透さんを見ることができなかった。だけど透さんにおでこにキスをされて、ぱっと視線を彼の顔に戻してしまう。
「任しとき」
とても優しい微笑みだった。穏やかだなと見とれているうちに、鼻の頭がくっつく。
「好きや」
誓いのキスのように唇が重なった。
私は眠る用意をして自室にいた。真宮家の次男さんに明日会わないといけないと思うと憂うつでため息が出る。
透さんと誠史郎さんのあの反応。一体どんな人なのだろう。
透さんの顔を見たいと思った。そうしたらこのモヤモヤが少し晴れる気がする。
なんとなくリビングへ行けば会えるような気がしたので、部屋から静かに出た。
人気のなくなったそこで、彼がひとりでソファーに座ってくつろいでいた。形の良い後頭部が見えただけで嬉しくなってしまう。
これでは透さんの思うつぼだとはっとして、口元が緩んでいないか確認する。
「透さん」
背もたれから覗きこむみたいにして声を掛けた。
「ありがとうございます」
「何が?」
お酒を飲んでいた透さんの瞳が、ちらりとこちらを一瞥した。
お風呂上がりの少し濡れた髪が色っぽくてドキドキしてしまう。
「彰太くんのこと、と……」
私は少し距離をあけて隣に座って、上目遣いに彼を見る。私を守ると言ってくれたことが嬉しかった。
「……何と言うか、その。私を……」
自分で口にするのは気恥ずかしい。どう言えば恥ずかしくないかとモゴモゴしていると、透さんは小さく笑った。
隣にいる美男子は、持っていた茶色い液体の入った背の低いグラスをテーブルにそっと置いた。
これは我が家のものではないと思うから、透さんが持ってきたのだろう。きれいな細工が施された素敵なグラスだ。
透さんはいつもセンスの良いものを身につけている。
お酒も見たことのない瓶だ。何と言うお酒を飲んでいるのか気になる。
「何もしてへんけど、みさきちゃんがそう言うなら」
ぎし、とソファーが軋む。透さんが動いてふたりの太ももがくっついた。感触にどきりとしてしまう。
大きな掌が私の頬を包み込んで上を向かせる。甘く破顔した彼から目が離せない。
「お礼、貰おうかな」
意図を理解して、戸惑っている間に呼吸が触れ合う距離になる。
私が目を閉じるより早く重なった唇から、お酒の味がした。大人のキスだと思った。
「えらい素直やな」
透さんは目の前でそうささやくと、艶やかな微笑みを整った口元に浮かべる。
「……お礼ですから」
つい負け惜しみを言ってしまう。
くすりと笑った透さんの双眸は、きっと全部見透かしていた。とても甘美で見惚れてしまう。どうしてこんなに惹かれてしまうのだろう。
誰か来てしまうかもしれないのに、深く口づけることを止められない。透さんの寝間着代わりの黒いTシャツの胸の辺りを、シワになるほどきつく握りしめた。
どんなに意地を張っても、こうして彼を受け入れていたら好きだと白状しているのと同じだ。
解放されると切ない吐息がこぼれた。まだ口の中を蹂躙する透さんの柔らかい粘膜の感触が残っている。
キスでアルコールの成分をもらってしまったのか、頭の芯がぼんやりする。
「……何て言うお酒ですか?」
「ウイスキーや」
唇が重なり、透さんの少しざらざらした舌が私の舌に絡んで奥から誘い出され、軽く吸われた。
「んン……っ!」
身体の力が抜けていく感じがする。
「部屋行ってもええ?」
耳朶を食んだ唇が、吐息でくすぐるようにささやいた。
「だ、だめです……」
「そりゃ残念」
その声は軽やかで、少しも残念そうではない。
透さんはパジャマ越しに私の左側の乳房に右手を添えながら、首筋を舌でなぞる。甘ったるい声がこぼれてしまわないよう、唇を固く結んで身体を縮め懸命に堪えた。
「ガマンせんでもええのに」
「誰か来ちゃ……んっ」
言い終わる前にキスで唇を塞がれる。透さんに侵食されて、神経伝達がうまくできなくなっていく。
「今度、俺が着てほしいパジャマ買いに行こか」
着衣越しとは言え、官能的に身体をまさぐってくる大きな手から逃れようと身を捩る。得体の知れない感覚に飲み込まれてしまいそうで怖かった。
だけど透さんの方が技術も経験も数段上で、艶やかに微笑みながら私を絡めとる。
私はうつ伏せになってソファーの肘掛けにしがみつく。
透さんは私の背中に覆い被さり、耳やうなじに唇を滑らせた。
浅い呼吸しかできなくて息苦しい。
だけど手の甲に押し当てた唇をそこから離すと、あられもない嬌声がこぼれてしまうからできなかった。
ついに透さんの手が、パジャマの裾から入り込んできた。上半身は下着をつけていないので無防備だ。
彼の手は遠慮なく下から持ち上げるように乳房を揉む。乳頭を指で挟まれ、弾かれると全身に電流が走ったみたいだった。
「ひ、ぁ……っ」
「かわいいなぁ」
首筋にねっとり透さんの舌が這う。敏感になっているので悲鳴のような喘ぎが漏れそうになったのを必死で耐えた。
「自分に正直になり」
やっと透さんの愛撫が止まって、緊張していた身体は崩れ落ちる。全身が火照っていた。
「とお、る……さん……」
肩で息をしながら、背後にいる秀麗な男性を少し振り返った。
「どうして……そんなに普通なんですか?」
私ばかりが余裕ない。この状況が嫌で拗ねているだけだとわかっている。
透さんが私を好きだと言ってくれることも本当だと信じているけれど、まだ迷っている。
「……普通やないよ」
軽々と器用に私を仰向けにした。その上にのし掛かるような体勢になって、私の頬を透さんは撫でる。
「カッコつけてるだけや。ホンマはこうやって襲いかかるんも、嫌われたらどないしよーってびくびくしてるんやで」
「じゃあ、どうして……」
続く言葉が恥ずかしくて、口ごもって視線を逸らす。
「本能と煩悩がなー、みさきちゃんに触りたくて仕方なくさせるんや」
柔らかく口づけて、透さんは目の前で不敵な笑みを浮かべた。
「みさきちゃんは何がそんなに怖いん?」
彼の瞳は全てを悟っているように感じる。
「……私だけ、が」
見つめ返すことが怖くて、少し横を向いて視線をフローリングに落とす。
「透さんに夢中で」
わからないから知りたくて。知ろうと近づくほどわからなくて。
「……そんなことあらへん」
透さんはとても嬉しそうに、だけど照れたように双眸を細めた。
「こんなに言うてんのに、信じてもらわれへん?」
額に、頬に、優しくキスされる。
「信じたいけど……怖いです」
風のように自由で掴み所のない男性。透さんは困ったようにはにかんだ。
「言葉じゃ伝えきれんから触りたいんや」
指がきつく絡められる。私の耳朶に透さんの端正な唇が寄せられる。思わず大きく酸素を吸った。
「何も怖がらんでええ。俺の全部でみさきを愛するから」
透さんの耳に心地好い声で甘く、だけど確信を持ってそう言われたら、おとなしく受け入れるしかない。
「よ、よろしく、お願い……します……」
照れくさくてまっすぐ透さんを見ることができなかった。だけど透さんにおでこにキスをされて、ぱっと視線を彼の顔に戻してしまう。
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「好きや」
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