祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

文字の大きさ
123 / 145
誠史郎ルート 2章

禁断の果実 5

しおりを挟む
 一学期の中間テストが終わり、本格的に体育祭の準備へとみんなの心は移った。どことなく学校中が浮かれている。

 そんな中、私は気がついてしまった。

 誠史郎さんは女子生徒だけではなく、先生たちからも狙われていると言うことに。

 特に用はないけれど誠史郎さんの姿を見られないかと保健室の前をふらふら通っていると、音楽の安座間あざま先生と家庭科の和田わだ先生は積極的だと気づいた。頻繁に訪ねている。

 安座間先生は今年この学校に赴任してきた若い女の先生。和田先生は誠史郎さんの表向きの年齢より少し年上の女性の先生で、数年同僚として働いているみたい。

 お弁当を食べながらそれとなく咲良に誠史郎さんがふたりの先生から迫られているように見えると話を振ってみたら。

「今さら気づいたの!?」

 そう驚かれた。半ば呆れていたようにも見える。

「すごいよねー、あの二人」
「学校なのにお構い無しだもんね」
「生徒は迂闊に保健室行けないからって、あれはやり過ぎだよねー」

 誠史郎さん目当ての生徒が保健室に入り浸るので、本当に体調が悪かったり怪我をした生徒や保健委員以外は保健室立ち入り禁止になっている。毎年注意喚起のプリントが配られるほどだ。

 莉緒と優菜もうんうんとうなずきながら辛辣な感想を述べている。

「恋を知らなかったみさきちゃんは、また難易度が超絶高めなところへ行きましたなー」
「えっ!?」

 咲良の呟きに、お弁当をひっくり返してしまいそうなぐらい動揺する。顔中に血液が集まってくるのがわかった。

「真っ赤になって、かわいいー」

 優菜にからかわれてさらに挙動不審になってしまう。忍者だったら変わり身の術で隠れられるのに、残念ながらそんな術は使えない。

「あれだけ迫られて何の反応も見せない西山先生とあきらめないふたりの戦い、いつまで続くんだろうね?」
「あれだけ脈なしなのにねー」

 なかなかみんなシビアな言い方だ。私は心臓が痛い。

「みさきは西山先生のどこが好きなの?」
「えっ!?」

 咲良からの質問で、自分でびっくりするぐらい変な声が出てしまった。
 じわじわ追い詰められているような気がしてしまう。下手なことを口にするとボロを出しそうだ。

「は、白衣……」
「白衣?」
「白衣にネクタイが似合ってて、素敵だなーって……」

 しどろもどろで答える私を、みんなは温かい目で見つめてくる。

 恥ずかしいけれどウソはついていない。本当に誠史郎さんの白衣姿は素敵だと思っている。優美な立ち姿を思い出してまた照れてしまう。

 鋭いのに優しい切れ長の双眸とか、鼓膜が溶けるんじゃないかと思うほど甘い声とか、紳士でクールなのにふたりきりになると情熱的なところとか、好きなところは言い出したらキリがない。

 本当は彼氏だとは言えない。みんなに隠し事をしているのは後ろめたいけれど、秘密だと思うとドキドキする。

 それ以上の追及はなく、お昼休みは終わった。

 放課後は体育祭の準備で残る。眞澄くんと淳くん、裕翔くんもそれぞれクラスで準備があるらしく、一緒に帰れるかはわからない。

 応援用のポンポンを作っていたのだけれど、咲良と一緒にゴミを捨てる役を買って出た。
 咲良の提案で、ゴミ捨て場へ行く途中に少し遠回りをして保健室の前を通る。完全に面白がられているけれど、誠史郎さんの姿を見られるのは嬉しい。

 保健室は扉が全開になっていた。中には椅子に座る誠史郎さんと隣に立って話しかける安座間先生がいた。
 頬を赤らめ、身体をくねらせる安座間先生の様子に複雑な気分になる。

「あ……」

 咲良が私に少し気を使った視線を投げかけてきた。

 ふたりが何を話しているのかとても気になる。でもこうして人目に付くようにしているのは、誠史郎さんにやましいことのない証拠だと思う。

 だけど足が止まって、聞き耳を立ててしまう。

「……申し訳ありませんが、大切な人を不安にさせたくないんです」

 ここまでにどんな会話が繰り広げられていたのかは想像するしかないけれど、少なくとも誠史郎さんは私を大切に想ってくれている。

 心臓が大きく鳴った。喜びの中に少し違う感情が混じっていることを自覚する。誠史郎さんは私の恋人だと言ってしまいたい。だから近づかないで、と。

「えっ! 彼女いるんだ……」

 一緒に立ち聞きしていた咲良が目を丸くする。

「盗み聞きした情報は拡散しないでくださいね」

 後ろからいたずらっぽく声をかけられて飛び上がった。
 振り返ると、いつの間にか誠史郎さんが開いたドアの縁に手をかけて立っている。唇の端に浮かぶ微笑が艶やかだ。

「松本さん、真堂さん」
「はっ、はいぃっ!」

 誠史郎さんの色気に当てられた咲良は、真っ赤になって声が裏返っている。

 動揺のあまり小走りに去っていく咲良。私は誠史郎さんに小さく会釈して咲良を追う。

「びっくりしたー! オトナの色気だわ……」

 また1人無意識にファンを増やす誠史郎さんが心配になった。
 もやもやしている私に咲良はすぐに気づいたみたいで、あわてた表情になる。

「だ、大丈夫よ! ちょっとびっくりしただけって言うか……。それより、みさきは大丈夫?」
「え?」
「だってさ、ほら……」

 咲良は言葉を濁す。私を本当に気遣ってくれているのだとわかる。誠史郎さんの彼女は私だと言えないのは心苦しい。

 だけど。

 私は自分の恋を守ることを選ぶ。

「……ありがと」

 咲良の誤解を解くことなく、苦笑いで返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...