祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

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誠史郎ルート 2章

禁断の果実 7

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 完全下校を知らせる校内放送が流れた。五分ほど経ったらチャイムが鳴り、人の気配はほとんどなくなった。

 体育倉庫の蛍光灯がついたことにほっとする。
 もしかしたら残業している先生か警備員さんが、ここに灯りが点いていることに気づいて見つけてくれるかもしれない。

「仕方ありません。あまり気は進みませんが、そこに座りましょう」

 誠史郎さんが指差したのは、走り高跳び用のマット。
 確かにこれぐらいしか座って救助を待てそうな備品はない。

 私の頭をおかしな想像がよぎる。いくらなんでもマンガの読みすぎだ。思い浮かんだ映像を払おうとかぶりを振る。

 だけどふたりきりで閉じ込められた体育倉庫なんて、お約束のシチュエーション。触れられることを期待しないなんて無理な話。

「お、お邪魔します……」

 妙に意識してしまったせいで、誠史郎さんから離れた位置に座ってしまった。せっかく引っ付くチャンスだったのに、私のバカ。欲望丸出しに思わず頭を抱えた。

 誠史郎さんがくすりと艶やかに笑ったのがわかる。ますます恥ずかしくなった。

「大丈夫ですか?」
「……大丈夫です」

 意識しているのは私ばかりで悔しい。
 プイと顔を逸らした私に密着する場所に誠史郎さんが移動してきた。

 そっと肩を抱かれ、耳たぶに吐息が触れる。身体中が熱くなった。

「ご期待に添えず、申し訳ございません」

 いやらしい想像まで見透かされているなんて。このまま消えてなくなりたいほどいたたまれない。
 混乱しているとこめかみにそっと唇が落とされる。それで私の脳内は活動停止した。

「みさきさんが大切なので、今はここまでで」

 私の気持ちを肯定してくれる、甘い口づけ。悦びに吐息がこぼれた。

「私としては、他人の悪意で閉じ込められた勢いに任せてより、先日のデートのように美しい思い出に残る形でみさきさんと結ばれたいんです」

 耳元で甘く優しくささやかれ、完全に私はとろけていた。身体を委ねて小さくうなずく。

「ここでいやらしいことをするのも背徳的で、興味がないわけではありませんが、もしもの時に言い訳ができませんからね」

 私の手の甲を誠史郎さんの長い指が官能的に弄ぶようになぞる。ぞくぞくして、喘ぎがこぼれそうになった。

「おとなしく助けが来るのを待ちましょう」

 言っていることとやっていることが違いすぎる。意地悪な誠史郎さんが不満で唇をとがらせた。

「他人の悪意って、どういうことですか……?」

 少しでも意識を変えようと気になったことを質問する。

 それなのに触れ合っている箇所はとても熱くて、溶けてしまいそうで。手の甲の上を誠史郎さんの指先がわずかに動いただけで、ピクリと反応してしまう。

「あっ……」

 全部、誠史郎さんに支配されているみたいだ。

「山神さんの思惑に安座間先生や島田先生が上手く乗せられて、私たちがここに閉じ込められたと言うことです」

 島田先生は三十歳ぐらいの男性教師だ。体育担当で筋肉質なちょっと暑苦しい感じの、いかにも体育の先生と言う感じの人。どうしてここで名前が出てきたのかわからない。

「島田先生?」
「ええ。彼に体育倉庫を見てきてほしいと頼まれたんです。安座間先生のことで、彼なりの小さな意趣返しでしょう」

 先生同士にもいろいろあるみたい。

「みさきさんはなぜここに?」
「伝言ゲームで呼び出されました」

 誠史郎さんの推察からすると、私をここに呼び出したのは山神さんなのだろう。どんな手を使ったのかはわからないけれど。

「なるほど。お陰で、研究所がの一端が見えた気がします」
「え?」

「一刻も早く、みさきさんと私に一線を越えてもらいたいのでしょう」

 誠史郎さんは普段の会話と全く変わらないトーンでさらっと言う。私は理解するのに時間が必要だった。

「えっ、ええっ……!?」

 うろたえて言葉が出てこない。顔が真っ赤になっていくのを自覚する。

 そんな極めてプライベートなことに興味を示されても困る。

「彼らが知りたいのはその結果でしょうけれど」
「結果って……」

 誠史郎さんの大きな手のひらが優しく私のお腹を包むように触れた。眼鏡の奥の双眸が柔らかく微笑んでいるのでどきりとする。

「私たちに子どもができるかどうか、なんて興味深くありませんか?」
「子ども……」

 誠史郎さんの手に包まれたお腹に視線を落とす。
 考えたこともなかったけれど、誠史郎さんとそういう関係になったらあり得ない話ではない。

 いつか誠史郎さんと結婚して、家族が増える未来。まだふわふわと現実感がないけれど、ずっと一緒にいられたら嬉しいし、楽しいし、幸せだ。

 だけどそもそも、白の眷属の誠史郎さんに子どもを作る能力があるのか。吸血種のことだってわからないのに、元吸血種は数が少ないから余計に知られていないと思う。

 呆然としている私の頭を、誠史郎さんが微笑みながら撫でてくれる。

「あ、あの……」

 どきどきしながら、誠史郎さんを正面から見つめた。切れ長の双眸は相変わらず大人の余裕を湛えている。

「私が大人になったら結婚してくれますか?」

 難しいことはよくわからないけれど、大好きなこの気持ちだけはわかる。

 私の唐突なお願いに、誠史郎さんが珍しく固まった。

「誠史郎さん?」

 不意に強く抱き締められる。誠史郎さんの胸に顔を埋める体勢になった。

「……もちろんです。ですが、みさきさんが高校を卒業したら私から改めてプロポーズさせてください」

 誠史郎さんの言葉が嬉しくて、ぎゅっと抱き締め返した。

「……はい!」

 離れがたい。誠史郎さんもそう思ってくれていたみたいで、しばらく抱き合っていた。

「それにしても、こんな場所で見境なく襲いかかると思われているとは……」

 誠史郎さんが不満そうにポツリとこぼす。

「私のみさきさんへの想いを見くびられて腹立たしいですね」

 上目遣いでそっと覗き見ると、端正な口許に鋭く冷たい微笑みが浮かんでいた。
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