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眞澄ルート 3章
嫉妬と羨望 1
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朝起きて、机の上に置いた眞澄くんとお揃いの指輪を見てにやける。
テストが終わり、大島先生が眞澄くんをあきらめてくれて、平和な日常が戻ってくると思っていた。
昼休み、お弁当を食べ終わってお手洗いへ行く。廊下で違うクラスの子達の一団とすれ違った時、ひそひそ離している声が漏れ聞こえた。
「武藤先輩に……」
武藤先輩というのは眞澄くんのことだと思う。
何を話しているのかとても気になったけれど、立ち止まって聞くわけにもいかない。後ろ髪を引かれる思いでトイレへ行く。
眞澄くんがどうしたのだろう。知りたくてうずうずする。
教室へ戻ると、さっきの集団が咲良に話しかけていた。
「お、みさきー」
咲良が私に声をかける。
五人ほどいる女の子はそれぞれにたじろぐような反応を見せた。
何事だろうと思いながら私がみんなのところへ行く。一番気の強そうな女の子がこちらを見て、覚悟を決めたような顔をした。
「……真堂さん、武藤先輩と仲良いよね。先輩の彼女のこと知ってる?」
「え……」
「この子がハチマキくださいって言ったら、彼女にあげるからって断られたの」
この子、と言って彼女が見た女の子は、泣いていたのか目の周りが赤くなっていた。
体育祭の時、女の子の間では好きな男子のハチマキをもらうのがこの学校の恒例行事だ。
嘘をついたりごまかしたりするのは、眞澄くんにも、眞澄くんを想って泣いた彼女に対しても失礼な気がした。
「……私」
「え?」
「私が眞澄くんと付き合ってるの」
「ちょっと! 初耳なんだけど!?」
咲良が正面で、すごい形相で私の両肩をつかんで揺さぶってくる。
「ごめん……。本当に最近で……」
「おめでとー!」
ぎゅっと抱きしめてくれる咲良。こんな風に祝福してもらえるなんて、思ってもなかった。
「ありがとう」
咲良と手を取り合って微笑む。すっかり緊張が解けていた。
「ずるい!!」
大きな声に驚いた。
目を赤くしていた女の子が、顔を真っ赤にして唇を噛んでいる。
何事かと、教室にいるみんなの視線がこちらへ集中する。
「水谷先輩の親戚だから、武藤先輩に近づけただけなのに……」
強く握った拳が震えていた。
本当はいろいろ違うのだけど、わざわざ訂正すると大変なので黙っておく。
確かにいろんな偶然が重なって私は眞澄くんや淳くんと一緒にいる。だけどそれをずるいと言われても、私にはどうすることもできない。
私が何も言わないのでいたたまれなくなったのか、彼女は教室を飛び出した。
咲良もポカンと様子を見ていたけれど、彼女の友達は全員後を追って去った。教室はざわざわしてしまう。
こういうできごとは予想はしていたし、大島先生で少し免疫ができていたけれど、やっぱり複雑な気分だ。
「みさき、大丈夫?」
「うーん……」
どう答えれば良いのかわからなくて、曖昧に微笑む。
恋愛って大変だ。
††††††††
「お前たち、昼休みだけで何人にハチマキくれって言われた?」
同じクラスの友人、綾瀬健太にそう問われた淳は苦笑いをし、眞澄は無表情になった。
昼休みが始まったのと同時に、何度も様々な女子生徒に声をかけられて、ふたりは弁当をゆっくり食べられなかった。
登校してきてすぐ、淳に想いを寄せる女子が一人お願いをしてきたことをきっかけに、今日は隙あらば誰かがハチマキをくれと言ってくる。
「俺、武藤に彼女ができたなんて初耳なんだけど」
「淳にしか言ってなかったもん」
「あの子だろ!? 二年の、武藤と水谷といつも一緒にいるフワッとしてるかわいい子! ええと、真堂さん!」
みさきのことを誉められて悪い気はしないが、綾瀬に対しても眞澄は警戒心を抱いてしまう。
「そんな怖い顔するなよ」
怯える綾瀬の隣で、淳がくすくすと笑っている。
「悪い……」
眞澄は大きく息を吐いて全身の緊張を解こうと試みた。
「みさきのことになると全然余裕ないんだよ、俺」
「止めろよ……。俺までときめきそうになっただろ……」
「綾瀬がときめくことなんて何も言ってない」
「……みさき、大丈夫かな」
淳の呟きに、眞澄ははっとする。
本当に余裕が無さすぎる。自分のことだけで手一杯だった。周囲への気遣いが淳に敵わないと思い知らされる。
眞澄が彼女がいると伝えたら、みさきのところに詳細を聞きに行く子が現れるかもしれない。
その時、彼女のことを知っているかと問われて、みさきが嘘をついたりごまかしたりするのは考えられなかった。
「みさきのところに行ってくる」
大島ほど苛烈にみさきを攻撃する人間はそうそういないとは思う。だが、もしもみさきに何かあった時、側にいられなくて何が彼氏だ、と眞澄は思った。
眞澄がみさきのいる教室に着いた時、出入口から女の子が一人飛び出してきた。何事かと思っていると、彼女の後を数人が追っていく。
教室の中を覗くと、呆然と立ち尽くしているみさきがいた。
一歩遅かったのかもしれない。
「何かあったか?」
すぐ側にいた男子に聞いてみるが、首を傾げる。
ここにいても埒が開かない。眞澄は教室の中へ入った。
「みさき」
「眞澄くん!」
みさきは驚いていたが、同時に安堵したように眞澄の目に映る。
来て良かった。そう思いながらそっと彼女の頭を撫でる。
「何があったんだ?」
「ここじゃない場所の方が良いかも」
みさきにそう言われて周囲の異変に気づく。みさきの隣にいた女子は少し居心地が悪そうなのに、興味津々で目が輝いている。眞澄に対していろいろ聞きたい様子に見えた。
この子は確か、みさきの友達だと思い当たる。
「悪い。ちょっとみさき借りてく」
「どーそどーそ!」
躊躇なくみさきの手を握り、教室から連れ出した。
テストが終わり、大島先生が眞澄くんをあきらめてくれて、平和な日常が戻ってくると思っていた。
昼休み、お弁当を食べ終わってお手洗いへ行く。廊下で違うクラスの子達の一団とすれ違った時、ひそひそ離している声が漏れ聞こえた。
「武藤先輩に……」
武藤先輩というのは眞澄くんのことだと思う。
何を話しているのかとても気になったけれど、立ち止まって聞くわけにもいかない。後ろ髪を引かれる思いでトイレへ行く。
眞澄くんがどうしたのだろう。知りたくてうずうずする。
教室へ戻ると、さっきの集団が咲良に話しかけていた。
「お、みさきー」
咲良が私に声をかける。
五人ほどいる女の子はそれぞれにたじろぐような反応を見せた。
何事だろうと思いながら私がみんなのところへ行く。一番気の強そうな女の子がこちらを見て、覚悟を決めたような顔をした。
「……真堂さん、武藤先輩と仲良いよね。先輩の彼女のこと知ってる?」
「え……」
「この子がハチマキくださいって言ったら、彼女にあげるからって断られたの」
この子、と言って彼女が見た女の子は、泣いていたのか目の周りが赤くなっていた。
体育祭の時、女の子の間では好きな男子のハチマキをもらうのがこの学校の恒例行事だ。
嘘をついたりごまかしたりするのは、眞澄くんにも、眞澄くんを想って泣いた彼女に対しても失礼な気がした。
「……私」
「え?」
「私が眞澄くんと付き合ってるの」
「ちょっと! 初耳なんだけど!?」
咲良が正面で、すごい形相で私の両肩をつかんで揺さぶってくる。
「ごめん……。本当に最近で……」
「おめでとー!」
ぎゅっと抱きしめてくれる咲良。こんな風に祝福してもらえるなんて、思ってもなかった。
「ありがとう」
咲良と手を取り合って微笑む。すっかり緊張が解けていた。
「ずるい!!」
大きな声に驚いた。
目を赤くしていた女の子が、顔を真っ赤にして唇を噛んでいる。
何事かと、教室にいるみんなの視線がこちらへ集中する。
「水谷先輩の親戚だから、武藤先輩に近づけただけなのに……」
強く握った拳が震えていた。
本当はいろいろ違うのだけど、わざわざ訂正すると大変なので黙っておく。
確かにいろんな偶然が重なって私は眞澄くんや淳くんと一緒にいる。だけどそれをずるいと言われても、私にはどうすることもできない。
私が何も言わないのでいたたまれなくなったのか、彼女は教室を飛び出した。
咲良もポカンと様子を見ていたけれど、彼女の友達は全員後を追って去った。教室はざわざわしてしまう。
こういうできごとは予想はしていたし、大島先生で少し免疫ができていたけれど、やっぱり複雑な気分だ。
「みさき、大丈夫?」
「うーん……」
どう答えれば良いのかわからなくて、曖昧に微笑む。
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††††††††
「お前たち、昼休みだけで何人にハチマキくれって言われた?」
同じクラスの友人、綾瀬健太にそう問われた淳は苦笑いをし、眞澄は無表情になった。
昼休みが始まったのと同時に、何度も様々な女子生徒に声をかけられて、ふたりは弁当をゆっくり食べられなかった。
登校してきてすぐ、淳に想いを寄せる女子が一人お願いをしてきたことをきっかけに、今日は隙あらば誰かがハチマキをくれと言ってくる。
「俺、武藤に彼女ができたなんて初耳なんだけど」
「淳にしか言ってなかったもん」
「あの子だろ!? 二年の、武藤と水谷といつも一緒にいるフワッとしてるかわいい子! ええと、真堂さん!」
みさきのことを誉められて悪い気はしないが、綾瀬に対しても眞澄は警戒心を抱いてしまう。
「そんな怖い顔するなよ」
怯える綾瀬の隣で、淳がくすくすと笑っている。
「悪い……」
眞澄は大きく息を吐いて全身の緊張を解こうと試みた。
「みさきのことになると全然余裕ないんだよ、俺」
「止めろよ……。俺までときめきそうになっただろ……」
「綾瀬がときめくことなんて何も言ってない」
「……みさき、大丈夫かな」
淳の呟きに、眞澄ははっとする。
本当に余裕が無さすぎる。自分のことだけで手一杯だった。周囲への気遣いが淳に敵わないと思い知らされる。
眞澄が彼女がいると伝えたら、みさきのところに詳細を聞きに行く子が現れるかもしれない。
その時、彼女のことを知っているかと問われて、みさきが嘘をついたりごまかしたりするのは考えられなかった。
「みさきのところに行ってくる」
大島ほど苛烈にみさきを攻撃する人間はそうそういないとは思う。だが、もしもみさきに何かあった時、側にいられなくて何が彼氏だ、と眞澄は思った。
眞澄がみさきのいる教室に着いた時、出入口から女の子が一人飛び出してきた。何事かと思っていると、彼女の後を数人が追っていく。
教室の中を覗くと、呆然と立ち尽くしているみさきがいた。
一歩遅かったのかもしれない。
「何かあったか?」
すぐ側にいた男子に聞いてみるが、首を傾げる。
ここにいても埒が開かない。眞澄は教室の中へ入った。
「みさき」
「眞澄くん!」
みさきは驚いていたが、同時に安堵したように眞澄の目に映る。
来て良かった。そう思いながらそっと彼女の頭を撫でる。
「何があったんだ?」
「ここじゃない場所の方が良いかも」
みさきにそう言われて周囲の異変に気づく。みさきの隣にいた女子は少し居心地が悪そうなのに、興味津々で目が輝いている。眞澄に対していろいろ聞きたい様子に見えた。
この子は確か、みさきの友達だと思い当たる。
「悪い。ちょっとみさき借りてく」
「どーそどーそ!」
躊躇なくみさきの手を握り、教室から連れ出した。
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