祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

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眞澄ルート 3章

嫉妬と羨望 6

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 意識を失っていた三人は誠史郎さんと淳くんが術で手当をしてくれた。
 命にか関わるようなことはなかったけれど、少し精気を奪われていた。

 結界を解いてから車イスで順番に保健室へ運び、彼女たちは回復するまでしばらくベッドで休むことになった。

 昼休みにどれだけの人数が中庭にいたのかわからないけれど、午後は池に化け物が出たと言う話で持ちきりになっていた。

 五時間目の授業が始まってもざわつく教室を落ち着かせるのに、古文の先生は苦労していた。

 橋姫に宇治に帰ってもらわなければ。早く放課後になって、透さんたちと依り代を流しに行きたい。

 下校時刻、私は教室を一番に飛び出し急いで昇降口へ行く。そこで眞澄くん、淳くん、裕翔くんと合流して学校を出るため校門へ向かう。

「栗原さんと話をしたよ。確かに藁人形のおまじないの話はしたけれど、誰かにやってみてなんて頼んでないし、栗原さん自身は何もしていないから関係ないって……」

 小さなため息と共に淳くんの端正な唇からこぼれたのは落胆の色だった。

 眞澄くんへの呪いは、モデルをしている栗原さんに憧れる女の子の気持ちや、クラスメイトの友情が引き起こしたことなんだと思う。
 その思いを周囲が勝手にやったことだと突き放されるのは、少し切なく感じた。

 だけど仕方ない。淳くんたちが他の女の子から聞いた話と相違ない。
 栗原さんに何か思惑があったとしても、直接言葉にしていない以上、それが事実だ。

「何を見たのかも聞いたけれど、ネットだった気がするって言ってたから、特定するには時間がかかりそう。あとは橋姫を呼び出す直接のきっかけになった人を特定できれば良いのだけど……」

 問題が山積みだ。

 学校を出て、少し歩く。透さんが車から降りて待っていてくれた。

「ありがとうございます」

 感謝を伝えると透さんはニコッと人懐こい笑顔を見せてくれた。

 みんな車に乗せてもらって、一度家に戻って依り代を取ってから一番近くの川を目指す。
 出発してすぐ、今日の学校で起こった出来事を助手席に座った淳くんが透さんに話した。

「浄化したんやったら、ある程度返しは軽減できるやろ。死ぬようなことはないと思うで」
「後遺症が残るような大きなケガなどしたらと思うと……」
「淳くんは優しいなぁ。せやけど、多分そんなすごい反動はないと思うで。責任は分散してるやろうし。まー、怖いモン見えたり、何日か原因不明の高熱にうなされたりする程度やろ。それより大変なんは眞澄クンやし」

 透さんはバックミラー越しに眞澄くんに視線を送る。

「……そうですね」

 淳くんの穏やかな声の中に、少し違う音色が混じっているような気がした。私は思わず助手席をまじまじと見つめてしまう。

「落ち着け、淳」

 後部座席から投げかけられた眞澄くんの言葉で、淳くんがこちらへ振り向く。微笑みが普段より薄く鋭い。

「……落ち着いてるよ」

 私でもわかる。こういう時の淳くんは怒っている。

 無理もないと思う。私だって、知らなかったとは言え眞澄くんに呪いをかけて、橋姫を呼び出した関係者たちに言いたいことは山ほどある。

 穢れを祓ってしまったから、誰が一番責任が大きくされているかの特定は難しそうだ。それぞれで返しを受けてもらうしかない。

 手元にある依り代をじっと見つめる。眞澄くんにはこれが効いてくれますように。

 川沿いにある駐車場に車を停める。眞澄くんに名前を書いてもらうために筆ペンを持って車を降りた。

 夕方なので人もいない。これなら流した後、誰かに触れられることもなさそうだ。安心して川原へ進もうとした時。

「やっぱりここに来たのねェ」

 ねっとりと絡み付くような甘ったるい声。

 顔を上げて目に入ったのは、大きな乳房がこぼれてしまいそうなぐらい胸元の開いた服を着た女性だった。

「大島先生……! どうして……」

 眞澄くんと淳くん、裕翔くんもさっと私の前に立って大島先生から隠してくれる。

「眞澄クン、ひどぉい。私だって死にたくないからもうあんたたちに手出しなんてバカなコトしないのにィ」
「それなら、何の用だ?」
「気に入らない先輩を失脚させるために来たの」

 にっこり笑う大島先生。どこまで本気なのかわからない。それにしても、どうしてここがわかったのだろう。

「どうしてここが……」
「先輩がぁ、橋姫と悪巧みしてるところ昨日聞いちゃったのよね。橋姫といえば川でしょ? ここは研究所からもそこまで遠くないこら助かったわぁ」

 すごい勘の良さに思わず感心してしまう。

「吸血鬼って不便よねぇ~。呼んでもらわないとお家の中に入れないなんて。真堂家になんて呼んでもらえるワケないのにねー」

 指に髪を巻き付けてニコニコ上機嫌な大島先生を警戒する。私たちに何をさせたいのだろう。

「今日研究所に行けば、奇襲になるんじゃないかしらぁ?」

 今日、私たちはお昼に一度戦っているし、今から依り代を川に流す。それからさらに夜、雪村さんに会ってもし戦うことになったら、みんな体力的にも霊力の面でも辛い。

「手伝ってあげましょうかぁ? 中に入れてあげるわよ」
「……どうしてそこまで?」
「言ったでしょ? 嫌いな先輩を失脚させたいって」

 両目を三日月みたいな形にしてニタリと嗤う大島先生。

「もうそっちには手出しできなくなったからぁ、これぐらいの楽しみはないとねー」

 正直な気持ちだろうけれど、大島先生の娯楽にされても困る。こちらは命懸けだ。

「何か要求があるんじゃないですか?」
「ないわよぉ。まぁいいわ。はい、これ名刺。気が向いたら連絡して」

 妙に機嫌の良い大島先生の名前と直通の携帯電話番号の書かれたジエーネ研究所の名刺を押し付けられた。

「じゃあねー」

 大島先生はヒラヒラ手を振り去っていく。
 少し警戒しながら後ろ姿を見ていると、駐車場に停めた赤いスポーツカーに乗り込んだ。同行者がいたみたいで、男の人の運転で去っていった。
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