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眞澄ルート 3章
嫉妬と羨望 7
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頭を切り替えて、川のすぐ側へ移動する。
足元を水がサラサラ流れるところまで行って、眞澄くんに依り代とペンを渡した。
「サンキュ」
眞澄くんが丁寧にそれらを受け取ってくれる。
名前と誕生日を書き入れて、眞澄くん自らそれを川に流す。
このまま誰の手にも触れられず自然に還ってもらえれば。
そう願いながら依り代の行き先を目で追っていると、川の流れと同じ方向に少し強い風が吹いた。
依り代にとっては追い風だった。より速いスピードで下っていく。
周囲に人がいないので、誰かが知らずに拾ってしまうこともないだろう。もし依り代に触れてしまうと、眞澄くんへの呪いが拾った人に移ってしまう。
「大丈夫そうだね」
淳くんが少しほっとしたように呟いた。
依り代が見えなくなったところで私たちは駐車場へ戻った。再び透さんに車の運転をしてもらって、家へ帰る。
車に揺られながら大島先生に言われたことを考えていた。今日と言われたけれど、明日がだめだとは言われていない。それで何とかならないか連絡してみようと思った。
電話はつながると空間がつながるので、誰か一緒にいてもらった方が良さそう。
そんなことを考えていたけれど、疲れているのか勝手にまぶたが閉じようとする。
「……みさき」
眞澄くんの声に目を開くと、いつの間にか自宅の前に車が停まっていた。
「寝ちゃってた……」
「疲れたんだろ」
ぽんと頭に触れた眞澄くんの大きな手に安心する。自然に口元が緩んだ。
透さんにお礼を伝えてから車を降りる。地面に両足をしっかりついて、大きく伸びをした。
家の中に入ってしまえば結界に護られる。もしも橋姫の呪いが完全に解けていなくても、もう問題ない。
それで大島先生が『今日』と言ってきた理由に思い当たった。
まだ橋姫の力が残っていたら、夜に目覚めた雪村さんが再び力を与えるからだ。
それでも今日、万全でない状態で突っ込んでいくのは得策ではないと私は思う。他のみんなはどう思うのか聞きたい。
「眞澄くん」
立ち止まっていた私を追い越した眞澄くんを呼び止める。彼はこちらを振り返ってくれた。吸い込まれそうな漆黒の瞳がこちらを見ている。
「大島先生に言われた協力、どうしたら良いと思う? 私は……できれば今日は避けたいって思うんだけど……」
後ろ向きな意見だから何となく言いづらくて、声が小さくなってしまう。
「俺も、今日は止めといた方が良いと思う。あの女の言うことなんて信用できないし」
眞澄くんが肯定してくれたことに安心した。とても心強く感じる。
それに私も、どうしても大島先生の言葉を素直に信じられない。何か魂胆がありそうに思える。
「みんなの意見も聞いた方が良いだろうけど」
その言葉に私はうなずいた。
「あ、あのさ、みさき……」
眞澄くんが続きを言い淀んで、少しうつむく。
「話したいことがあるから、夜、部屋行って良いか……?」
ドキリと心臓が大きくなった。もちろん眞澄くんが来てくれるのは大歓迎だからこくこくと何度も首を縦に振る。
そんな場合じゃないのに、大島先生のことも雪村さんのことも私の頭の中では隅に追いやられていた。
††††††††
今日は連戦でみんな疲れただろうからと、誠史郎さんが夕飯の用意をしてくれた。
ご飯を食べながら、大島先生の提案をどうするか話し合わなければと思って切り出したのだけど。
「研究所に行く必要ないと思うで。あの半分サキュバスのオネーチャンの言うことも間違ってへんけどな。せやけど、みさきちゃんの力を甘く見てるわ」
「え……?」
「私も真壁さんの意見に賛成です。昼間にかなり力を削いでいますし、周がみさきさんに依り代を作るように伝えたということに意味があると思います」
「多分、橋姫は宇治に戻されてると思うで。実家に確認してもらうわ」
驚いて目を丸くした私に、誠史郎さんと透さんは優しく微笑みかけてくれる。
「自信持ち。みさきちゃん、どんどん強くなってるから」
褒められて、そこからの時間はずっと何だかふわふわしていた。
もちろん、まだまだ透さんや誠史郎さんには遠く及ばないことはわかっているけれど嬉しかった。
まだおそらくの段階だし、雪村さんが眞澄くんを研究所に連れて行こうとしている件は何も進展がない。だから浮かれている場合ではないのだけど。
食事の後片付けをしてから、一番にお風呂に入れさせてもらった。リビングのドアを開けて顔を覗かせる。みんなここにいた。
「お先にいただきました」
「あ、俺入らせてもらう」
眞澄くんがすぐに立ち上がった。
「後でな」
すれ違いざまに低く囁かれて、ドキリとする。
何かおかしなところはないだろうか。思わず前髪を直してしまう。
「みさきちゃん、今連絡来たわ」
透さんがスマホを片手にニヤリと片頬で笑う。
「ちょっと封印が解けた痕跡はあったから、向こうで対処してくれたみたいや。せやけど中の良くないモンはちゃんと今まで通りあったて」
「みさき、すごい! 初めて依り代作ったんでしょ?」
「うん……」
もちろん、呼び出された橋姫が本当に一部だったと言うこともあるのだと思う。それでも、まさか一度で押し返せるなんて思ってもなかった。
「橋姫はやっぱりみさきちゃんの依り代で戻されてたな。怖いオネーチャン二人の目論見はどっちも上手いこといかんかったから良かった」
「透さん、誠史郎さん、ありがとうございます!」
勢いよくお辞儀をして、私はちょっと弾むように自室へ移動した。
早く眞澄くんにも知らせたい。
ベッドに寝転んで、一人で彼を待つ。とてもドキドキしていた。
足元を水がサラサラ流れるところまで行って、眞澄くんに依り代とペンを渡した。
「サンキュ」
眞澄くんが丁寧にそれらを受け取ってくれる。
名前と誕生日を書き入れて、眞澄くん自らそれを川に流す。
このまま誰の手にも触れられず自然に還ってもらえれば。
そう願いながら依り代の行き先を目で追っていると、川の流れと同じ方向に少し強い風が吹いた。
依り代にとっては追い風だった。より速いスピードで下っていく。
周囲に人がいないので、誰かが知らずに拾ってしまうこともないだろう。もし依り代に触れてしまうと、眞澄くんへの呪いが拾った人に移ってしまう。
「大丈夫そうだね」
淳くんが少しほっとしたように呟いた。
依り代が見えなくなったところで私たちは駐車場へ戻った。再び透さんに車の運転をしてもらって、家へ帰る。
車に揺られながら大島先生に言われたことを考えていた。今日と言われたけれど、明日がだめだとは言われていない。それで何とかならないか連絡してみようと思った。
電話はつながると空間がつながるので、誰か一緒にいてもらった方が良さそう。
そんなことを考えていたけれど、疲れているのか勝手にまぶたが閉じようとする。
「……みさき」
眞澄くんの声に目を開くと、いつの間にか自宅の前に車が停まっていた。
「寝ちゃってた……」
「疲れたんだろ」
ぽんと頭に触れた眞澄くんの大きな手に安心する。自然に口元が緩んだ。
透さんにお礼を伝えてから車を降りる。地面に両足をしっかりついて、大きく伸びをした。
家の中に入ってしまえば結界に護られる。もしも橋姫の呪いが完全に解けていなくても、もう問題ない。
それで大島先生が『今日』と言ってきた理由に思い当たった。
まだ橋姫の力が残っていたら、夜に目覚めた雪村さんが再び力を与えるからだ。
それでも今日、万全でない状態で突っ込んでいくのは得策ではないと私は思う。他のみんなはどう思うのか聞きたい。
「眞澄くん」
立ち止まっていた私を追い越した眞澄くんを呼び止める。彼はこちらを振り返ってくれた。吸い込まれそうな漆黒の瞳がこちらを見ている。
「大島先生に言われた協力、どうしたら良いと思う? 私は……できれば今日は避けたいって思うんだけど……」
後ろ向きな意見だから何となく言いづらくて、声が小さくなってしまう。
「俺も、今日は止めといた方が良いと思う。あの女の言うことなんて信用できないし」
眞澄くんが肯定してくれたことに安心した。とても心強く感じる。
それに私も、どうしても大島先生の言葉を素直に信じられない。何か魂胆がありそうに思える。
「みんなの意見も聞いた方が良いだろうけど」
その言葉に私はうなずいた。
「あ、あのさ、みさき……」
眞澄くんが続きを言い淀んで、少しうつむく。
「話したいことがあるから、夜、部屋行って良いか……?」
ドキリと心臓が大きくなった。もちろん眞澄くんが来てくれるのは大歓迎だからこくこくと何度も首を縦に振る。
そんな場合じゃないのに、大島先生のことも雪村さんのことも私の頭の中では隅に追いやられていた。
††††††††
今日は連戦でみんな疲れただろうからと、誠史郎さんが夕飯の用意をしてくれた。
ご飯を食べながら、大島先生の提案をどうするか話し合わなければと思って切り出したのだけど。
「研究所に行く必要ないと思うで。あの半分サキュバスのオネーチャンの言うことも間違ってへんけどな。せやけど、みさきちゃんの力を甘く見てるわ」
「え……?」
「私も真壁さんの意見に賛成です。昼間にかなり力を削いでいますし、周がみさきさんに依り代を作るように伝えたということに意味があると思います」
「多分、橋姫は宇治に戻されてると思うで。実家に確認してもらうわ」
驚いて目を丸くした私に、誠史郎さんと透さんは優しく微笑みかけてくれる。
「自信持ち。みさきちゃん、どんどん強くなってるから」
褒められて、そこからの時間はずっと何だかふわふわしていた。
もちろん、まだまだ透さんや誠史郎さんには遠く及ばないことはわかっているけれど嬉しかった。
まだおそらくの段階だし、雪村さんが眞澄くんを研究所に連れて行こうとしている件は何も進展がない。だから浮かれている場合ではないのだけど。
食事の後片付けをしてから、一番にお風呂に入れさせてもらった。リビングのドアを開けて顔を覗かせる。みんなここにいた。
「お先にいただきました」
「あ、俺入らせてもらう」
眞澄くんがすぐに立ち上がった。
「後でな」
すれ違いざまに低く囁かれて、ドキリとする。
何かおかしなところはないだろうか。思わず前髪を直してしまう。
「みさきちゃん、今連絡来たわ」
透さんがスマホを片手にニヤリと片頬で笑う。
「ちょっと封印が解けた痕跡はあったから、向こうで対処してくれたみたいや。せやけど中の良くないモンはちゃんと今まで通りあったて」
「みさき、すごい! 初めて依り代作ったんでしょ?」
「うん……」
もちろん、呼び出された橋姫が本当に一部だったと言うこともあるのだと思う。それでも、まさか一度で押し返せるなんて思ってもなかった。
「橋姫はやっぱりみさきちゃんの依り代で戻されてたな。怖いオネーチャン二人の目論見はどっちも上手いこといかんかったから良かった」
「透さん、誠史郎さん、ありがとうございます!」
勢いよくお辞儀をして、私はちょっと弾むように自室へ移動した。
早く眞澄くんにも知らせたい。
ベッドに寝転んで、一人で彼を待つ。とてもドキドキしていた。
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