祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

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透ルート 3章

エンゲージ 3

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 家に帰ってからも、透さんのことばかり考えていた。

 みんなといるときは何とか抑えられたけれど、夜、ひとりでベッドに横になると透さんの熱を鮮明に思い出す。

 透さんと私の境界が曖昧になる、甘いひと時。次はいつ、あんな風に愛してもらえるだろう。

 すっかり浮き足立っていた。

 朝起きてすぐ、早く学校が終わらないかなと考えていた。放課後には退院した透さんに会えるはず。そのことばかり考えていた。

 高校から帰ってくると、退院した透さんが我が家の前にいた。片手に大きめのタブレットを携えている。

「透さん!」

 遊んでもらいたい子犬みたいに駆け寄ってしまう。

「今日は泊めてもらおうと思て」
「みさきに妙なことするなよ」

 後ろから飛んできた眞澄くんの透さんへの忠告にどきりとする。

「今日チューするぐらいしかせぇへんよー」

 今日は、と言うことは、近いうちに透さんは例の『退院祝い』を求めてくるのだろう。昨日の透さんの熱が、声が、表情が、触れられた感覚が甦ってきた。

 少し怖いけれど、あんなこと、いっぱいしてほしい。できればその先も知りたい。

 恥ずかしくて言えないけれど、そう思った。

「チューとか言うな!」

 悪態をつく眞澄くんに、透さんは余裕たっぷりに笑っている。

「みさきちゃん、真っ赤になってかわいらしいなぁ」

 妖艶に微笑んだ透さん。考えていたことを見透かされた気がしてさらに頬が熱くなった。淫らなことを想像していたなんて透さんに知られたら嫌われないか心配になる。

「トールがからかうからでしょー?」

 ぞろぞろ家の中に入っていくみんなの後を付いていく。

「タブレットなんて持ってきて、何するの?」

 裕翔くんはくりくりした両目を興味津々だとキラキラ輝かせながら透さんに問いかける。

「夜にな、ちょっとご挨拶したいから」
「挨拶……ですか?」

 淳くんが首を傾けると、ミルクティーの色をしたさらさらの髪も揺れた。

「そ。みさきちゃんのご両親に、結婚前提にお付き合いさせてくださいって。前からお願いしてたんやけど、やっと都合ついたから、今夜パソコン越しにお会いする約束したんや」

 私だけではなく、みんなも目が点になった。

「い、いくらなんでも気が早すぎだろ!」

 眞澄くんがあわてた声を出す。

「俺、大人やから、その辺ちゃんとしとかんとお縄を頂戴するかもしれへんからなー」
「何だよ、お縄を頂戴するって」
「それはまぁ、いろいろなー」

 ヘラヘラ笑ってごまかす透さん。
 透さんがいろいろ考えてくれていて嬉しいけれど、驚いた。
 そこまで真剣に想ってくれているなんて。

 照れている私の隣に、透さんはするりとネコのように音もなくやって来た。身体を密着されるとそれだけで心臓がどくんと大きく鳴る。

「タイミング良かったわ。昨日かわいいみさきちゃんいっぱい見せてもろうたら、もうガマンできんようになってしもた」

 他の人には聞こえないように、私の耳元で小さくささやいた。それでまた思い出して全身が火照ってしまう。

「……エッチ」

 小さく呟き、唇を尖らせて見せる。頬が熱かった。
 透さんはニヤリと意地悪だけど妖艶に片頬で笑う。セクハラ発言をしてるやに下がった顔なのにどこかカッコ良く思えた。

 好きになったらアバタもエクボになるのは本当みたい。



 ††††††††



 透さんの退院祝いに夕飯のすき焼きの用意をしている最中、インターホンが鳴った。

「はい」

 淳くんが応対してくれる。

「お世話になっております、真壁ですぅ」

 関西のイントネーションで話す女性の声。私のいる位置からはモニターが見えないので顔は確認できない。

 だけどみんなの視線が一斉に透さんに集まる。

「……おかんや」
「オカンヤ?」

 裕翔くんは透さんの言ったままを真似して、慣れない関西弁に首を傾げる。

「おかん、です。近畿地方の言葉でお母さんと言う意味です」

 誠史郎さんの解説を裕翔くんは目をキラキラ輝かせながら聞いていた。

 白菜を切る手を一度止めて、私は玄関に急ぐ。

「お待たせしました……」
「急に押し掛けてごめんなさいねぇ。息子がお世話になってます。真壁ですぅ」

 透さんのお母さんだと聞いたのですごい迫力美人を想像していたけれど、どちらかと言えばおっとりした印象のお母様だ。もちろん年齢不詳の美女なのだけど。遥さんの方がお母さん似なのかもしれない。

 そしてすぐ後ろにスーツ姿の男性が控えている。とても執事さんっぽい。荷物をたくさん持っているので大変そうなのに、とても涼しげだ。

「忙しい時間に突然押し掛けてスミマセン~」
「とんでもないです! どうぞ、お入りください」

 透さんのお母さんが目の前にいる。

 生まれて初めて彼氏のお母さんを目の前にして、どんな対応をすれば良いのかわからない。心の準備もできていなかった。

 何か話さなくてはと必死に考えるけれど思い付かない。
 ふと顔を上げると、透さんが玄関に来ていた。

「いきなり何しに来たん?」
「あんたがいきなり、みさきちゃんと結婚したいから真堂さんにご挨拶するて連絡してきたんやろ。こっちもあわてて家から出てきたんやで」

 どきりとした。真壁さんは結婚に反対だろうか。

「あ、あの、私……っ」

 思わず声を上げてしまった。透さんと真壁さんがこちらを見る。

「真堂みさきと申します。透さんとお付き合いさせていただいています。結婚をお許しいただけますでしょうか……!」

 深々と頭を下げる。透さんにはきっと、すごいおうちからのお見合い話もたくさん来ているだろう。

 だけど、私は透さんと一緒にいたい。透さんと結婚したい。未成年の私が透さんと問題なく交際するには、周囲の了解が不可欠だ。

 とても長い時間に感じる。心臓がどくどく音を立てているのがわかる。

「こんなかわいいお嬢さんがお嫁さんになってくれるなんて嬉しいけど、ホンマに透でエエの?」
「私で良ければ……!」
「みさきちゃんがエエの」

 透さんに背中からぎゅっと抱きしめられる。真壁さんと執事さんの目の前だから恥ずかしい。

「みさきちゃんのこと離す気ぃないから、ちゃんとしときたいんや」
「透さん……」
「透様。お取り込み中申し訳ありませんが、目のやり場に困ります」

 執事さんにクールに告げられて我に返る。あわててリビングへ案内した。
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