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透ルート 3章
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「奥様からです」
「ありがとうございます」
執事さんに渡された大きな荷物には、すき焼きの材料と、鍋とカセットコンロまで入っていた。ただ、牛肉が我が家で用意しているものよりずっと高級品で、量も多い。
経験のないお土産に狼狽える。どうすれば良いのか困って淳くんを見た。
「こちらも使って作らせてもらおうか。人数が多いし」
さすが淳くん。ちっとも動揺しないで王子様の笑顔で最善の方法を教えてくれる。
「ありがとうございます、真壁さん」
「いいえぇ。変なお土産になってごめんなさいねぇ」
お肉はどちらの鍋でも真壁さんがくださったものを使わせてもらおう。買ったことはないけれど私でも知っているくらい超有名な高級ブランド牛だから、きっとおいしい。
そう言えば、どうして我が家が今日はすき焼きだとわかったのだろう。不思議だ。
「どうぞ、こちらにおかけください」
淳くんが真壁さんと執事さんをダイニングチェアへ座るように案内してくれた。真壁さんはすぐイスに座ってくれたけれど、執事さんは鋭い雰囲気を纏って真壁さんの後ろに控えている。もしかしたら護衛も兼ねている方なのかもしれない。
「黒沢、ここは強力な結界に護られてる場所や。真堂さんが座ってて言うてくれてはるんやから」
真壁さんの言葉に黒沢さんは従ってくれた。
私は少しホッとして淳くんを見る。淳くんも穏やかに微笑んだ。
「みさきは真壁さんにお出しするものをダイニングテーブルで作って。僕はキッチンで僕らが食べる分を作るから」
てきぱきした淳くんの采配にうなずく。
すぐにダイニングテーブルに真壁さんからいただいたものを広げた。
鍋は淳くんが一度軽く洗って、すぐに水気を拭き取る。
「うちのオカンがゴメンな」
透さんが私の手伝って野菜を出してくれた。
「とんでもないです」
私は何度も首を横に振る。こんなにいろいろいただいて、申し訳ないぐらいだ。
「僕が切りますから、いただけますか?」
淳くんのところへ、真壁さんにいただいた野菜たちを透さんが運んでくれた。
「ホンマにゴメンねぇ」
「とんでもないです!」
ここで未来の嫁検定に落ちるわけにはいかない。
コンロに火を着け、温めたすき焼き鍋に牛脂を塗り広げた。そしていただいたお肉を焦げないように焼き付けていく。
「真堂さんも関西風の作り方なんやねぇ」
真壁さんの嬉しそうな声に、私は首を傾げる。
「関西風……ですか?」
「そうや。関西はお肉焼くけど、関東のすき焼きはお肉と野菜を一緒に割り下で煮込むんやで」
「知りませんでした」
我が家は祖父や両親もこうやってすき焼きを作っていたので、全国どこでもこの作り方だと思っていた。
「周様もこうやって、すき焼き作ってはったんやね……」
真壁さんが口元を押さえて、目に涙を浮かべている。悲しそうには見えない。むしろ感動とか、そう言った感情に思えた。
何が起こっているのかわからない。助けを求めて切れた野菜を運んでくれている透さんを見る。透さんは端正な面に苦笑いを浮かべた。
「ゴメンな。オカン、みさきちゃんのお祖父ちゃんの熱狂的なファンやねん……」
うるうるした瞳ですき焼きを作る様子を見つめられることに緊張しながら、何とか野菜を煮込むところまでたどり着く。
もうすぐ私が作ったものも淳くんの調理したすき焼きもでき上がる。
完成したら、ダイニングテーブルで食べるチームと、リビングのテーブルで食べる組に別れた。私は透さんと真壁さん、黒沢さんと一緒にダイニングで食べさせてもらう。
まず最初にお肉を生卵につける。いただいた高級なお肉は口の中で解けた。
「すごい……」
リビングのテーブルで牛肉を食べた眞澄くんが呆然と呟くのが聞こえて、私は心の中で激しく同意する。
「ごちそうさまです」
向かいの席で食べている真壁さんに改めてお礼を伝えた。
「いーえー。突然押しかけて、ご飯まで作ってもろて、こちらこそおおきに。おいしいわ。みさきちゃん料理上手やね」
「とんでもないです」
褒めていただいたのに、何だか緊張してしまう。真壁さんのお口合って良かった。
「みさきちゃんの作ってくれるご飯は何でもおいしいで。淳くんたちも上手やし」
「ありがとうございます」
淳くんが透さんに笑顔とお礼で応える。
「いつも透が迷惑かけてゴメンねぇ」
「こんなにおいしいお肉食べさせてもらえるならイイヨ!」
「おおきに」
無邪気な裕翔くんを真壁さんはニコニコしながら見つめる。
黒沢さんは相変わらず無表情だし一言も話してくれないけれど、お箸は進んでいるので問題ないのかもしれない。
隣にいる透さんがどんな顔をしているのか気になって、ちらりと視線を送る。少し肩身の狭そうな表情をしていた。いつも飄々としているから珍しい。
私が見ていることに気づいたみたいで、透さんは唇の端に少しだけ笑みを浮かべた。
ふたりだけの秘密みたいで、何だか胸の中がくすぐったい。
「おとんは仕事?」
「せや。あんたの連絡遅すぎるわ。みさきちゃん、ごめんねぇ」
「いえ……!」
私もさっき聞いたばかりで驚いた。
透さんが私の両親にもまじめなお付き合いだと伝えてくれる。
嬉しいけれど、緊張もしていた。
「ありがとうございます」
執事さんに渡された大きな荷物には、すき焼きの材料と、鍋とカセットコンロまで入っていた。ただ、牛肉が我が家で用意しているものよりずっと高級品で、量も多い。
経験のないお土産に狼狽える。どうすれば良いのか困って淳くんを見た。
「こちらも使って作らせてもらおうか。人数が多いし」
さすが淳くん。ちっとも動揺しないで王子様の笑顔で最善の方法を教えてくれる。
「ありがとうございます、真壁さん」
「いいえぇ。変なお土産になってごめんなさいねぇ」
お肉はどちらの鍋でも真壁さんがくださったものを使わせてもらおう。買ったことはないけれど私でも知っているくらい超有名な高級ブランド牛だから、きっとおいしい。
そう言えば、どうして我が家が今日はすき焼きだとわかったのだろう。不思議だ。
「どうぞ、こちらにおかけください」
淳くんが真壁さんと執事さんをダイニングチェアへ座るように案内してくれた。真壁さんはすぐイスに座ってくれたけれど、執事さんは鋭い雰囲気を纏って真壁さんの後ろに控えている。もしかしたら護衛も兼ねている方なのかもしれない。
「黒沢、ここは強力な結界に護られてる場所や。真堂さんが座ってて言うてくれてはるんやから」
真壁さんの言葉に黒沢さんは従ってくれた。
私は少しホッとして淳くんを見る。淳くんも穏やかに微笑んだ。
「みさきは真壁さんにお出しするものをダイニングテーブルで作って。僕はキッチンで僕らが食べる分を作るから」
てきぱきした淳くんの采配にうなずく。
すぐにダイニングテーブルに真壁さんからいただいたものを広げた。
鍋は淳くんが一度軽く洗って、すぐに水気を拭き取る。
「うちのオカンがゴメンな」
透さんが私の手伝って野菜を出してくれた。
「とんでもないです」
私は何度も首を横に振る。こんなにいろいろいただいて、申し訳ないぐらいだ。
「僕が切りますから、いただけますか?」
淳くんのところへ、真壁さんにいただいた野菜たちを透さんが運んでくれた。
「ホンマにゴメンねぇ」
「とんでもないです!」
ここで未来の嫁検定に落ちるわけにはいかない。
コンロに火を着け、温めたすき焼き鍋に牛脂を塗り広げた。そしていただいたお肉を焦げないように焼き付けていく。
「真堂さんも関西風の作り方なんやねぇ」
真壁さんの嬉しそうな声に、私は首を傾げる。
「関西風……ですか?」
「そうや。関西はお肉焼くけど、関東のすき焼きはお肉と野菜を一緒に割り下で煮込むんやで」
「知りませんでした」
我が家は祖父や両親もこうやってすき焼きを作っていたので、全国どこでもこの作り方だと思っていた。
「周様もこうやって、すき焼き作ってはったんやね……」
真壁さんが口元を押さえて、目に涙を浮かべている。悲しそうには見えない。むしろ感動とか、そう言った感情に思えた。
何が起こっているのかわからない。助けを求めて切れた野菜を運んでくれている透さんを見る。透さんは端正な面に苦笑いを浮かべた。
「ゴメンな。オカン、みさきちゃんのお祖父ちゃんの熱狂的なファンやねん……」
うるうるした瞳ですき焼きを作る様子を見つめられることに緊張しながら、何とか野菜を煮込むところまでたどり着く。
もうすぐ私が作ったものも淳くんの調理したすき焼きもでき上がる。
完成したら、ダイニングテーブルで食べるチームと、リビングのテーブルで食べる組に別れた。私は透さんと真壁さん、黒沢さんと一緒にダイニングで食べさせてもらう。
まず最初にお肉を生卵につける。いただいた高級なお肉は口の中で解けた。
「すごい……」
リビングのテーブルで牛肉を食べた眞澄くんが呆然と呟くのが聞こえて、私は心の中で激しく同意する。
「ごちそうさまです」
向かいの席で食べている真壁さんに改めてお礼を伝えた。
「いーえー。突然押しかけて、ご飯まで作ってもろて、こちらこそおおきに。おいしいわ。みさきちゃん料理上手やね」
「とんでもないです」
褒めていただいたのに、何だか緊張してしまう。真壁さんのお口合って良かった。
「みさきちゃんの作ってくれるご飯は何でもおいしいで。淳くんたちも上手やし」
「ありがとうございます」
淳くんが透さんに笑顔とお礼で応える。
「いつも透が迷惑かけてゴメンねぇ」
「こんなにおいしいお肉食べさせてもらえるならイイヨ!」
「おおきに」
無邪気な裕翔くんを真壁さんはニコニコしながら見つめる。
黒沢さんは相変わらず無表情だし一言も話してくれないけれど、お箸は進んでいるので問題ないのかもしれない。
隣にいる透さんがどんな顔をしているのか気になって、ちらりと視線を送る。少し肩身の狭そうな表情をしていた。いつも飄々としているから珍しい。
私が見ていることに気づいたみたいで、透さんは唇の端に少しだけ笑みを浮かべた。
ふたりだけの秘密みたいで、何だか胸の中がくすぐったい。
「おとんは仕事?」
「せや。あんたの連絡遅すぎるわ。みさきちゃん、ごめんねぇ」
「いえ……!」
私もさっき聞いたばかりで驚いた。
透さんが私の両親にもまじめなお付き合いだと伝えてくれる。
嬉しいけれど、緊張もしていた。
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