15年越しに実る恋

しがと

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沙那編②

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「え、予約できていない?」

 退勤後、晴翔が予約してくれたというお店に行ったらそう言われてしまった。

「申し訳ありません。電話を受けた店員が予約表にお名前を記入するのを忘れていたみたいで、他のお客様をお通ししてしまっていて。個室は空きがなく、全てここ30分以内に入られたので、空くのはしばらく先になるかと」
「そうですか」
「申し訳ありません」
「いえ、大丈夫です」

 そう言って晴翔と店を出た。

「わざとじゃないからな」
「分かってる」
「で、どうする? 俺の部屋くるか?」
「はあ? 付き合ってない異性の部屋とか行くわけないじゃん」
「って言いながら、高1まではよく来てたじゃん」
「子供だったからね? 今は大人なんだよ」
「なんだよ。俺のこと男として意識してんの? はは、大丈夫。なんもしねえよ」

 なんもしない

 ああ、本当に私のこと女として見てくれてないんだ。そしたらなんか悔しくなって。あんたが意識してなくても女性側は意識していることだってあるんだよ、って教えたくなって。私は晴翔の部屋に行くことにした。

「お邪魔します」
「どうぞ。散らかってるけど。洗面所、そこの左側な」
「うん、お借りします」

 予備用だというスリッパを借りて私は晴翔の部屋に入った。

「沙那? そんなところに突っ立ってどうした? ソファー、座っていいぞ」
「晴翔」
「ん? わ、ちょ」

 晴翔に勢いよく抱きついた。どんな反応するかなってちょっと楽しみにしてた部分もあったのに。

「やめろ」

 一瞬で剥がされた。そうしたら、学生時代のことを思い出してしまった。

「なんなの?」
「は?」
「他の女の子がボディータッチしてても、『おい、やめろって』って言ってやんわりと距離とってたくせに、私がちょっと肩叩いただけですぐ『やめろ』って言ってたし、わざとじゃないのによろけて抱き合う形になっちゃった時だって『離れろ』って一瞬ではがしてさ」
「沙那?」

 悪くない。晴翔は悪くない。でも止められなかった。

「そんなに嫌い?『中学どうする?』、とか『高校どこ行くの?』とか、『俺もお前と同じ大学にしよ』とか、『同じ会社だな、頑張ろうな!』とか。まるで私と同じところに行きたいかのようなことばっかりで。晴翔ならもう1つレベルが上の所目指せるのに。それで、私、」

 好かれてるのかもって勘違いしちゃって。

「えっ」
「でも、この前の出張ではっきり分かった。私のことなんとも思ってないんだって。紳士だから、私を気にかけてくれていたんだよね。一緒の所が良いとかじゃなくて。勘違いしてごめんね」

 そうして私は帰ろうとした。それなのに、晴翔は私を後ろから抱きしめた。

「色々勘違いしてる」
「それは今謝ったじゃん」
「それが勘違いだって言ってんの」

 そう言って私をくるっと回して、目が合うようになってしまった。

「好きだ」
「は?」
「それをちゃんと知った上で俺の話を聞いてくれ」

 晴翔曰く、受験校や会社のことを聞いていたのは同じところに行きたかったから。ボディータッチされて拒否反応を示していたのは、私に触られるとニヤけてしまって好きだとバレてしまうと思ったから。この会社で私のことを『可愛い』と言っている人が複数人いて危機感を持って欲しかったから、この前の出張でああいうことをした。それで私に嫌われたと思い、落ち込んでいたらしい。

「ずっと、小学生の頃から好きだった。でも、中学の頃『晴翔は大事な友達』って言ってるの聞いて、好きだとバレたら友達ですらいられなくなる、と思った。だから必死に隠してたし、なんもしないって言って、好きな子を部屋に連れ込んだ。ここに沙那が居たんだな、ってだけで生きていけるから」
「なんか、好きすぎじゃない?」
「あったりまえだろ! 高校の頃『モテない』って言ってたのは、俺が牽制してたからだし」

 え、初耳なんだけど?

「というわけで、俺は沙那が好きです。沙那は?」

 もう、この気持ちを隠さなくて良いんだ。

「私も好き」
「俺と付き合ってください」
「はい!」

 そう言ったら、ちゅっとキスをされた。

「早い!」
「え?」
「まだ付き合って数秒じゃん!」
「いいじゃん。15年くらい好きだったんだ。それでやっと付き合えるんだ。この気持ちに蓋しなくていいんだぞ。そりゃあ、なあ?」
「うっ」
「ま、これより先は、沙那の気持ちを大事にするけど、あんまり待てないと思うから、そこんとよろしくな?」

 そう言ってニコッと笑う晴翔が少し怖かったのは、絶対に秘密だ。

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