上 下
13 / 30
社会人時代

①兄と友人と(1)

しおりを挟む
 大学を卒業した私は、シラカワコーポレーションへ就職をした。その会社は昔から興味があったので入社できて、一員となれてとても嬉しい。入社式では緊張するかなと思ったけれど、白川にもらった腕時計と名刺入れを持っていたので彼がそばにいるような気がして、緊張が解けた。そして兄と同じ会社ということも落ち着くことができた理由の1つだ。入社式には兄と一緒に行った。兄とは中学以降ずっと違う学校だったので、一緒に同じところに行くのがすごく久しぶりで嬉しかった。今まで違う学校だったのは、双子だから色々と比べられることも多くてわざと変えていたからだそう。それを聞いた時は驚いたが、実際に高校の先輩に双子がいたけれど成績とか運動能力とか顔の良さとかで比べられていたことを思い出した私は、知らない間に兄に守られていたのだと感じた。ありがとう、兄ちゃん。こうして一緒に歩けるのが嬉しくてニコニコしていたら目の前に見覚えのある人がいた。

「白川?!」
「久しぶり」

 振り返った彼は大学時代より大人っぽくなっていて、少し谷口さんを思い出した。そんなことない、と頭を振っていたら「どうした、急に」と白川に顔を覗き込まれた。びっくりして思わず兄に抱きついてしまった。すぐに離れたけれど。

 そして、兄には白川のことを話していたし、白川にも兄のことを話したことがあったこと、2人はカフェで何度も会ったことがあるので、もう知り合いだということで3人で一緒に会社へ行った。それからはふわふわしていた。だって白川に会えたんだもの。連絡先を聞くことができなくて、もう2度と会えないのかもしれないと思うとショックで泣いてしまった。でも幸運なことにもう1度会うことができて、そして同僚として働くことができる。嬉しくて思わず泣いてしまった私は、誰にもバレないように涙を拭った。

 入社式を終え、正式にこの会社の一員となった。希望部署に配属された私はとても嬉しかった。これから仕事を頑張るぞ、と意気込んでいた。それは白川も兄も同じだったようで、3人で一緒にご飯を食べに行った時に「頑張ろうな!」と乾杯した。


 仕事を覚えるのは大変だけれど、同僚も先輩も上司もみんないい人たちで、分からないことはすぐに聞ける雰囲気がとてもいい所なので楽しく仕事をしていた。それはどこの部署でも同じらしく、兄も白川も「仕事って思った以上に楽しいんだな」と言っていた。だから定期的に開催される3人での飲み会でも愚痴が出ることはなかった。だから兄の恋バナがメインだった。恥ずかしいと言いながらも舞さんのことを話す兄がとても幸せそうで、それを聞くのが楽しみになっていた。その中で舞さんとたまにご飯に行っていると教えてくれた。それにも関わらず、いまだにどんな仕事をしているのか、どこの会社なのか教えてくれていないらしい。けれど彼女とご飯を食べるのはとても幸せだ、と笑って言っていた。私は、彼女に騙されているのではないか、とか、キープされているのではないか、と不安になったが、白川に「大丈夫」と言われたので何故か安心できた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

百々五十六の小問集合

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:2

若妻の穴を堪能する夫の話

現代文学 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:17

先生、あなたは前世で恋人だった

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

管をつなぐ

SF / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

彼女は処女じゃなかった

現代文学 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:20

処理中です...