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第5章〜聖都スノーフィス〜

再来

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「ベロウズ……!!」
フューゼが声のする方向を向くと家の屋根に
ベロウズと赤髪の少女が居た。

「あぁ……!!大丈夫か……?怪我は…!?」
少女を見た途端家に駆け寄ろうとする村長。

「おっと、お待ちなさい。止まらないと後悔しますよー?」
ベロウズが魔力で出来た刃物のようなものを
少女の喉元に当てる。

「や、やめてください!その子だけは……!」
村長の悲痛な叫びが響く。

「やめろ!ベロウズ!!」


「おわっほほ!!煩い外野ですねぇ!!そーんなにこの子が大切ですかぁ?」

「そ、その子だけは……お助け下さい……。」
懇願する村長。

「おっほっほ!!ほーっほっほ!…ゲホッゲホッ!反吐が出た!ふふほ!反吐が出る程の美しい愛ですねぇ!!」
くるりと回るベロウズ。

「あなた達の愛を試しましょう。5分です。今から5分で村の者全てがこの子のためにここに集まればこの子は解放しましょう。」

「何だと……?」
……どういうつもりだ?
村人を集めてどうするつもりなんだ?
かなり危険な気がするぞ……。

「村長。これはきっと罠だ。やめておいた方がいい。」
村長に進言するフューゼ。

「し、しかし……。」
ベロウズと少女を見上げる村長。

「……信じなくても結構です。ボクちんはどっちでも構いまっせーん!!人間の愛なんてそんなもんだよねー。まぁとりあえず約束しちゃったからースタート!!にゃは!」
ベロウズが指を鳴らすと
大きな砂時計のようなものが宙に現れた。


「……あれが時間を表しているようですね」

「あぁ、そうみたいだな。」

「あれが……時間を……。」
フューゼとシルビアの会話を聞き
砂時計のようなものを見つめた後駆け出す村長。

「…っ!村長!!」

「すみません……スノーフィスのご指示は絶対のものであり個は全のために尽くすものであるとの教えも失ったわけではありません。しかし、これだけは…これだけはお許しください!」

「村長!!」
フューゼの呼び止めも虚しく村長は
村人を集めだした。


そしてすぐに30人程度の村人が集められた。
「ど、どうですか?集まりましたよ?」

ベロウズがチラリと砂時計のようなものを見る。
「おぉ。時間も大丈夫でしたねぇ!ボクちん約束は守りますのでお返ししっまーす!」
そう言って少女を蹴落すベロウズ。

「なんて事を……!!」
すぐさま駆け寄る村長。
少女はむくりと立ち上がる。

そして村長が少女を抱き締める。


少女を返した……。これで終わりか?
村人達を集めた意味は?
何を考えてるんだベロウズは……。

フューゼがベロウズに視線を戻すと
手で口を覆い必死に笑いをこらえるベロウズ。

「…っ!?」
それを見て村長達に視線を戻すフューゼ。

村長は力無く地に伏せ少女の手には刃物が
握られていた。
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