人類滅亡の先導者

こあく

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第1世界 ニルヴァニア

第4話 戦闘、のちに召喚

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ノワールが傍で寝ている中、ツイは暇を持て余していた。本は読み終わってしまい、することがないのだ。
ふとノワールを横目に見る。

「夜が明ける前に戻ってくれば平気か」

ツイは椅子から立ち上がり、本を片手に森の方へ歩いていく。



「……魔物、いるんだけどなぁ」

ノワールは横たわった姿勢で離れていく人影を見つめたあと、目を閉じて眠ったフリを再開した。



森の中をどんどん進んでいく。帰路は覚えている、朝方までに戻れる範囲までしか散策するつもりはない。
自身の足音が木霊する。とても静かな場所だ。灯はノワールが所持していたロウソクを勝手に使用している。

「うん?」

足音が聞こえた。自身の響く足音ではない、かなりの質量を持つ動物の足音。
ツイは恐る恐るゆっくりと首を背後に回す。そこには暗闇に包まれながらも黄色の目でこちらを見る、巨大な怪物がいた。

「お、お邪魔しました~……」

思わず後退りをする。ある程度距離を取ったあと、全速力で走り出した。それに追いつくように怪物は音を立てながらこちらへ向かってきた。

「聞いてないんですけどー?!」

モヤシな敏捷性をフルパワーで稼働させ全速力で走る。しかし歩幅に圧倒的な差があるのだ。森の木々が障害物になっていたとしても怪物はそれを薙ぎ倒して進んでいる、追いつかれるのは時間の問題だろう。

「いい魔法はないもんかね!?」

本で暗記した魔法を必死に思い出す。現在ツイが使用できるのは『龍術式』『召喚魔法』『時空魔法』のどれかである。後者の2つは想像がつくのだが『龍術式』はどのようなものかは想像がつかない。
しかしどれであっても直ぐに使用できるものではない。というか使用したことがないのでどうすれば発動するのか分からないのである。
どんどんノワールのいる拠点から離れていく。逃げていても拉致があかない。そして終点と言う名の行き止まりが見えてきた。

「行き止まりか……」

仕方ない、ここで食うか食われるかの2択。ならば圧倒的に前者が良いに決まっている。振り向き、巨大な化け物を見つめた。

「う、んん゛?」

突如巨大な怪物を見た瞬間、脳に多大な情報が入ってくる。そのため一瞬頭痛がするが、流石天才の称号を持つ者、一瞬で適応してしまった。


名無し
Lv.34
種族:アイラーヴァタ
ランク:S
HP         3000
MP         1000
力            1250
知力          400
敏捷          300
体力         2140
防御力      5000

下位スキル
飛行術 Lv.3

高位スキル
水属性魔法 Lv.6
聖牙 Lv.8

固有スキル
大海の巨象

『アイラーヴァタ』インド、ヒンドゥー教の聖獣である。インドラの乗り物であり、『大海から生まれた者』を意味する巨象。

「勝機が0に近い気がする」

圧倒的なステータスを前に呟く。
森を散策しようと思ったことを後悔した。そもそもノワールがハングリーボアを狩ってきた時点でこの森には魔物がいたのだ。好奇心のみで探求するなどまるで幼稚な子供がやることでしかない。
遂に戦闘態勢に入る。ステータスの差はあれど、手数だけならこちらの方が有利。魔法さえ使えれば無限に撃ち続けることができるのだ、神脈を持つツイならば。

「勝利かヴァルハラか、そんなもの勝利に決まってる」

自分に言い聞かせるように放つその言葉は重い。人生で初めて危機感を味わったのだ、生きたいに決まっている。

「『召喚魔法』」

唱えた魔法は召喚魔法。彼が1番最初に思いついたのはこの魔法だった。理由は何となく。利点は一応思いついた。無尽蔵の魔力が存在するのだ、魔力を込めることで発動する『召喚魔法』が手っ取り早い。
突如現れた魔法陣に魔力を込める。初めて魔力を流すのだが、何故かスムーズに流すことが出来た。魔法陣が巨大化していく。アイラーヴァタはそれを待つかのように、じっと見つめている。
巨大な魔法陣が完成した。あとは詠唱することで召喚出来るのだが、詠唱の文章を知らない。頭をフル回転させていると、適当な厨二用語が思い浮かぶ。仕方ないのでそれっぽくなるよう文を作った。


「『死と再生の輪廻よ、永遠の契約により我が名に応え姿を現せ』」


ツイはいい年になっても痛々しい言葉に恥ずかしくなった。背に腹はかえられぬ。
しかしそれとは裏腹に召喚陣が様々な色に変化をし、輝き出す。ツイもアイラーヴァタもその眩しさに目を瞑らずにはいられない。



「成功か……?」

光が収まり、恐る恐る目を開ける。
魔法陣からは目の前の巨象よりも大きく、上半身しか出ていない蛇のような龍がいた。



『召喚者の命により召喚に応じた』

龍は人間の声色ではない声で喋る。



『我が名はウロボロス。死と再生の体現者である』





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