前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
33 / 271
第一章 新しい生活の始まり

009-5

しおりを挟む
 貝が口を開けた。あまりの熱さに耐えかねて開けるんだって。ラズロさんが言っていたように、殻の中の身はそんなに大きくない。
 ラズロさんは手慣れた様子で身にお酒を垂らしていく。熱せられたお酒の香りが辺りに広がる。

「臭み消しだな」と教えてくれる。

 トキア様はもう一つ網を用意すると、僕のと同じぐらいの大きさの火を出した。

「少量だが、維持し続けるのはなかなか難しいな」

 ラズロさんは嬉々として網の上に大きな魚をのせて、塩をふる。さっきは塩は要らないって言ったのに、魚はいるの? 貝と魚は違うのかな。

「貝が焼き上がったぞ! 熱いから火傷すんなよ!」

 持っていたお皿に貝をのせてくれた。……どうやって食べるんだろう?
 そんな僕にノエルさんは直ぐに気が付いてくれた。

「ラズロ、アシュリーは食べ方が分からないんじゃない?」

「おぉ、そうか。じゃあノエル、食い方を教えてやってくれ」

 ノエルさんのお皿に貝がのる。

「熱いから、手で直接触らない方がいいよ。フォークで刺すと良い」

 そう言ってノエルさんは、身と殻の間にフォークを刺した。フォークの上にのった身はぷるぷるとして、それだけで美味しそうだ。
 ノエルさんはひと口で身を食べた。

「うん、美味しい。さ、アシュリーも身を殻から剥がして食べてみて」

 身を殻から剥がす?
 不思議に思いながら、ノエルさんの真似をしてフォークを身と殻の間に刺し入れる。持ち上げようとすると抵抗がある。見ると身と殻が僅かにくっ付いていた。
 なるほどー、これを剥がせって言ってたんだな。

 剥がした身を口に頬張る。塩味とお酒の味がした。ちょっと生臭い。
 美味しさもあるけど、生臭さが気になる。
 ノエルさんもラズロさんもトキア様も気にせず食べてる。
 生臭いのは今食べた貝だけだったのかも、と思い直して次の貝を口に入れる。……うん、生臭い。
 コーヒーの時もそうだったけど、僕が子供だから生臭いと感じるのかも知れない。
 生臭さを消す方法……。

 厨房から胡椒を持って来て貝にかけてみた。
 僕の様子を見て、ラズロさんが苦笑する。

「アシュリーにはまだこのにおいが辛いかー」

 胡椒をかけたら少しは減ったものの、においは消し切れない。でも、美味しさは増した。
 他のものもかけてみたいかも。
 もう一度厨房に戻って、ニンニクとネギを細かく刻んだのを持って中庭に戻る。

「何だ? ニンニク?」

「そうです。ニンニクとネギならにおいを消せるかなと思って」

 スプーンで貝の上に刻みニンニクとネギをのせ、胡椒もかけてから食べる。
 んんっ! 美味しい!

「……アシュリー、僕ももらって良い?」

 頷くとノエルさんもニンニクとネギ、胡椒をかけて貝を食べた。

「うまっ!」

「なにっ!」

 ラズロさんも同じようにしてニンニクと胡椒をかけて食べた。

「うまいっ!」

 気付けばトキア様もやってて、貝を口に入れた後、少し口角が上がってた。

「魚も焼けたぞ! アシュリー、こっちは貝ほど癖がないから大丈夫だと思うぞ」

 ラズロさんが魚をお皿にのせてくれようとするんだけど、お皿の上には貝の殻がある。
 いつの間に来たのか、フルールが隣にやって来ていたので、試しに貝殻を渡すと、両手で受け取る。
 鼻をふんふんさせたかと思うと、貝殻をパキパキと音をさせながら割るように齧り出した。
 あっという間に食べてしまって、僕を見上げる。まだある貝殻を渡すと、食べ始めた。

「言い忘れていたが、擬態しているスライムは燃費が悪いのだ」

 ネンピ?

「沢山食べないと駄目って事だよ」とノエルさんが教えてくれた。

 ノエルと一緒だな、とラズロさんがにやりと笑いながら言って、うるさいなと返すノエルさん。いつものやりとりです。

「その点、フルールは食堂で素材を沢山もらっているから、問題ないだろう」

 トキア様がフルールに貝殻を差し出す。フルールは良い音をさせながら食べていく。
 音だけ聞いてると美味しそうで、食べたくなってくる不思議。

 ラズロさんは厨房からお皿を持ってきて、そこに貝殻を乗せ始めた。
 フルール用って事みたいだ。
 みんなのお皿にあった貝殻をお皿にまとめて、フルールの前に置く。

「フルール、貝殻だよ」

 ふんふん、と鼻をひくひくさせた後、夢中で貝殻を食べていくフルール。
 頭を撫でても気にせず殻を食べていく。おなか空いてたのかな。
 食べすぎはよくないと思ってあんまりあげないようにしてたんだけど、どうやら気にしなくても良さそう?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方

tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。 しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。 追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが? どうなる俺の田舎でのスローライフ???

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...