前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第一章 新しい生活の始まり

019-1

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 冬の王との戦いは順調らしいとの話をラズロさんが教えてくれた。

「今年の冬の王はかなり強いらしいんだがな、このまま順当にいけば春の訪れを遅らせる事もなく倒せそうだとの事だ」

 聖女の託宣のおかげだったり、城のみんなの準備のたまものだったり、色々理由はあるんだと思うけど、これだけの寒さでありながら、あまり大きな被害の話を聞かない。
 自然の前に人間は無力だ、って魔女はよく言ってた。
 人はすぐに調子に乗るが、大地が本気を出せば容易く覆されてしまうのだぞ、と。
 どんな事も飄々と解決していた魔女がそんな事を言うものだから、記憶に残ってる。

 やっぱり、ノエルさんとクリフさんが凄いから、順調なのかな?
 いくら二人がとっても強くてもそんな筈はないだろうから、いくつもの国が一緒に戦ってるんだし、他にも強い人がいるのかも知れない。

「ノエルさんやクリフさん達の好きな料理、作ってあげたいですね」

 そうだなぁ、と頷きながらラズロさんは顎を撫でる。

「お誂え向きに春だしなぁ。春って言ったら、花見だろう?」

「ハナミ?」

「アシュリーの村にはなかったか? 春になるとスオウの樹ってのが一斉に咲くんだぜ?」

 スオウの樹。初めて聞く樹。

「白や薄桃や、赤い花びらでな、それはもう見事なんだ」

 思い出してるのか、ラズロさんは遠くを見てる。懐かしむような、嬉しそうな表情に、どんな樹なのかを想像してみる。

「スオウの樹の下でな、宴会をするのが春の楽しみだな」

「ラズロさんって、本当にお酒が好きですね」

 まぁな、と言ってラズロさんはにやりと笑った。
 僕、褒めたんじゃないんだけどな。貶したい訳でもなかったから、良いんだけど。

「アイツらも、兵士達も、無事に帰って来ると良いよなぁ、本当に」

「はい」

 相手は冬の王だから、みんな無傷と言う訳にはいかないんだろうけど、出来たら、誰もいなくなってなくて、怪我も大した事ないと良いなぁ……。
 それで、帰って来たみんなに、ご飯を沢山作って、食べてもらいたい。

 ネロがにゃーん? と、僕の顔を覗き込んで鳴いた。

「みんな、早く帰って来ると良いね」

 背中を撫でると、気持ちよさそうに目を細めてなぅ、と鳴いて、僕の膝の上で寝た。
 横に座っていたフルールも、鼻をひくひくさせていたので、頭を撫でてあげた。スライムにも気持ちが伝わるか分からないけど、伝わると良いなぁ。
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