前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
83 / 271
第二章 マレビト

021-4

しおりを挟む
「美味しい!!」

 夕食を食べにきたノエルさんがひと口食べて言った。

「ね、美味しいね、ナイン!」

 ノエルさんの横に座っているナインさんも、何度も頷いた。
 ところで、僕はさっきから、ナインさんの隣に座ってる人が気になります。
 明らかに上級官の着衣なのに、髪は伸びっぱなしのボサボサで、髭も生えて、伸び過ぎた前髪の所為で顔の上半分が見えない。
 えーと、ティール様、かな?

「ティール、どう? 美味しいでしょ?」

 ノエルさんの質問にティール様が頷く。

「徹夜明けの胃袋に染み入ります」

 ナインさんとティール様の二人は、ノエルさんに連れられてお風呂に入ってから、この食堂にやって来て、夕食を食べている。
 それにしても徹夜……ラズロさんが言っていた通りの人なんだな、本当に……。

「これを食べていると……あともうちょっとで何か閃きそうな気がするんです」

「いや、食べたら今日は寝なよ。清潔になり、美味しい物を食べ、睡眠をたっぷりとれば、明日にはもっと色々な事を閃くよ」

 ティール様はノエルさんを見る。ノエルさんは気にせず食べていく。

「ティールを寝かせる為に言ってるんじゃなくて、これは僕の経験則。睡眠と食事を正しく摂取しないと、効率が下がるんだよ。集中が続かなくなるし、頭が働かなくなる」

「そんな時はレンレンの作ったポーションを飲めば……」

「ポーションは飲み過ぎると効かなくなるって聞いた事あるよ」

 心当たりがあるのか、ティール様は俯く。

 思っていたのと違って、ティール様は結構大人しめだった。なんかもっと、弾けてるって言うのか、無茶苦茶な人なのかと思っていたのに。多分、ラズロさんの幼馴染って聞いて、似た感じを予想したんだと思う。全然違った。

「せっかくナインも来たんだから、メリハリのある生活にしなよ、ダラダラした生活じゃなくて」

「ダラダラではなく、効率を重視した結果、一定時間感覚でポーションを飲む事が……」

「ナインにティールの悪い癖がうつっても困るし、やめてよ。燃やすよ?」

 あからさまにティール様が怯える。多分、前に一度何かを燃やされてるんじゃないかな……そういう怯え方に見える。優しいノエルさんの過激な言葉にナインさんも怯える。

「大丈夫だよ、燃やすのはティールだけだからねー」

 燃やされたの、ティール様なの? 燃えたのに生きてるのって、凄い気がするんだけど。

「ティールにトキア様から命が下ってるよ」

 聞く所によると、魔法、魔術、魔法薬学は全て魔法師団長配下にあるらしい。
 一番偉いのがトキア様。その下に魔法師の長としてノエルさんがいて、魔術師の中で一番偉いのはティール様。魔法薬学で一度上はレンレンさん、レンレン様?という事になってるらしい。
 確かに、同じように権力のある人がいっぱいいたら、それはそれで大変そうだよね。

「ナインとアシュリーの勉強を毎日見るように、って」

「ええっ?!」

 この世の終わりみたいな声を出されてしまった。
 僕も何故だか入ってるけど、ナインさんの勉強は見てあげて欲しい。

「私の貴重な研究時間が減るじゃないですか!」

「嫌なら嫌でも良いよ。トキア様にはそう伝えておく。
その結果、今まで許されていた、魔術師長としての職務が免除されなくなったとしても、それはティールの選択の結果だからね」

 なるほど。
 交渉って、こうやるんだね。

「感心した顔をしてるけどな、アシュリー。あれは普通に恫喝だからな、覚えるなよ……」

 ラズロさんに止められた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方

tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。 しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。 追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが? どうなる俺の田舎でのスローライフ???

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...