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第二章 マレビト

022-1

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 トキア様の元にパニーノを持って行く。
 ノエルさんも戻って来て、トキア様の忙しさもちょっとは減ったみたい。

「ティールは意外な事に、勉強を教えているようだな」

「はい、毎日教えてもらってます」

 あれから、毎日ナインさんと一緒にティール様から勉強を教えてもらってる。読み書き勉強中の僕と、魔術師として教えられた事は出来るけど、普通の事を教えてもらえていないナインさんは、まず読み書きから学んでる。

「私の予想では、教えるのを嫌がって魔術師長の職務をやる予定だったのだがな……」

 ため息を吐きながら、パニーノを食べるトキア様。
 僕はいつも通り、書き損じの紙の裏側に練習していく。
 文字はもう覚えて、最近は計算の勉強をしてる。これが出来ないと買い物が出来ないから、重要です。

 それにしても、そんなに魔術師長の仕事、したくないんだなぁ、ティール様ってば。

「ナインさんが色々覚えて、ティール様のお手伝いを出来るようになると良いですね」

「そうだな。彼奴も自分の研究の手伝いをさせる為にナインに教育を施しているのだろうが……代わりに魔術師長の仕事を覚えさせるか。変則的な教育ではあるが、単純な職務なら既に熟せそうなだけの能力はある」

 トキア様がこんな風に褒めるなんて、ナインさんは本当に優秀なんだなぁ……。
 隣で勉強していても、どんどん覚えていく姿を見て、その頭の良さを目の当たりにしている僕としては、納得してしまうけど。

「計算も反復により習熟度が上がる。ラズロと共になるべく買い出しに行くように」

「はい、トキア様」

 紙の上での計算は、時間をかけられるから出来るけど、紙がなくても出来るようにならないとだよね。

「それから、これを」

 引き出しからそれほど厚みのない本を取り出すと、僕に差し出した。絵本ではなかった。
 絵本はクリスさんやノエルさん、色んな人が貸してくれたので、読めるようになったし、簡単な文章なら書けるようになってきた。
 月に一度、オブディアン家と僕のいた村との交易をする時に、書いた手紙を持って行ってもらってる。
 兄さんから返事が来る。オブディアン家の人たちはとっても商売上手で、難しいけど、とても勉強になる、って書いてあった。その他には村の様子も知れて、僕としては懐かしくて、嬉しい。
 まだ、村を出てそんなに経っていないのに、なんだかずっと昔の事のようにも思えたり、ついこの前のような気もして、不思議な感じがする。

「絵本は卒業し、少しずつ文章に慣れていきなさい。分からなくとも良い。繰り返し繰り返し読むのだ」

 受け取った本の表紙をめくって、一枚ずつページをめくる。今までの絵が多かったものとは違って、文字しかない。

「分からぬ単語があっても、文脈から推察する事が可能だからな。意味については私が日々教えるから安心すると良い」

「分かりました」
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