前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第二章 マレビト

032-3

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 ノエルさんとラズロさんがいなくなった食堂で、僕はフルールと厨房に立っていた。
 メルとコッコ、ジャッロたちはダンジョンの中。ネロはパフィにもらったおまじない付きの花を持って今日も第一王子の所に。

 氷室の中に大量に積み上げられたいもをどうしようかと考える。
 添え物として炒めたものや煮たものを出してはいたものの、ラズロさんが購入してきた量があまりに多すぎて、思うように減っていかない。
 明日の夜、宵鍋に行くから、ザックさんにおすすめのいも料理がないか、聞いてみよう。

「フルール、明日は宵鍋に行くからね」

 フルールのおでこを撫でると、目を細めた。スライムだけど、撫でられるのは、気持ち良いみたい。

 ザックさんはフルールをとっても気に入ってる。理由はまぁ、言わずもがな、ではあるんだけど。自分が作った料理を捨てるのはやっぱり悲しい。捨てるしかなかった料理の残りを、フルールはぺろりと平らげてしまう。

「たくさん食べてあげてね」

 フルールの耳がぴょこ、と揺れた。

 それはそれとして、夕食をどうしようかな。
 氷室にあるのは、いもとキャベツ。あ、そうだ。キャベツの酢漬けがそろそろ食べ頃な筈。
 酢漬けに入れると美味しい香辛料も在庫がなくなりつつあるから、またギルドに買いに行きたいな。
 王都近辺でも作れたら良いのに。

「アシュリー?」

 声のしたほうを見ると、ナインさんだった。

「こんにちは、ナインさん。休憩ですか?」

「そう」と答えて頷くと、カウンターの椅子にナインさんは腰掛けた。

 ナインさんはホットミルクが好きなので、氷室からミルクを取って来て鍋に移し入れ、温める。
 他の色んな飲み物を飲んでみてナインさんはホットミルクが良いと思ったらしくって、いつもホットミルクが良い、と言われた。

「アシュリー、困ってる?」

「香辛料がもっと手に入りやすくなれば良いのに、って思っていたんです。ギルドや行商からしか今は買えないし、値段も結構するので」

 ラズロさんが安い素材を大量に買うのには、そのへんも関係している。香辛料を使った料理はとても美味しい。
 色んな味が作れるようになって、作る側としても楽しいし、みんなも美味しいと喜んでくれる。

「アシュリー、出来る」

「?」

「ダンジョンで、香辛料作る」

 え、そんな事が出来るの……?

「もし、作れたら凄く嬉しいですけど……」

 香辛料を買う為に毎日いも料理と言うのは、いくら香辛料があっても大変だったりもして。わがままだな、って自分でも分かってるけど。

「出来る。香辛料の育て方の本、図書館にあった。ダンジョンなら育つ気候、作れる」

 あ、そうか。今は春の天気の層しかないけど、パフィも夏や秋、冬の層を作れって言ってたっけ。

 温まったミルクを木の器に注いで、渡す。

「熱いので、気を付けて下さいね」

 頷いて、口もとにうっすらと笑みを浮かべるナインさんに、僕も嬉しくなる。

「ティール様に借りてくる」

「ありがとうございます。でも、駄目なら駄目で良いので、無茶はしないで下さいね」

「うん」

 ダンジョンで、香辛料が作れるのなら、野菜も作れるんじゃないかな……。
 もしかしたら、その方が良かったりするのかな。
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