前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第二章 マレビト

032-2

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 ダンジョンから食堂に戻ったラズロさんとノエルさんは休憩している。僕はメルのミルクを鍋に移し入れて、弱火で煮始めた。僕のいた村では、牛のミルクは加熱する。
 一見キレイに見えても、そうじゃないものが入ってることもあるからだと教えられた。

「アシュリーは偉いよね」

 ミルクコーヒーを飲みながら、ノエルさんが言った。

「僕ですか?」

 そう、とノエルさんは頷く。

「村でやっていた、良いとされる事をさ、今でもちゃんと守ってるでしょ? 面倒だからとやらなくなってもおかしくないのに、そうやってミルクも欠かさず消毒してる」

「火を通したミルクと、していないミルクだと、していないミルクの方がさらりとして美味しいんですけど、加熱したミルクの味に慣れてしまってるからか、どうも落ち着かないんです」

 見えない何かが怖い、って言うのも大きい。

「アシュリーは結構潔癖なんじゃないかと、オレは思う訳よ」

 ラズロさんがそう言うと、ノエルさんがすかさず「ラズロは杜撰なだけ」と指摘していた。
 指摘されたラズロさんはうぐ、と呻いたかと思うと、別の話題を振った。

「そ、それはそうと、ノエル。アシュリーを守る手筈は整ってるんだよな?」

 勿論、と答えてノエルさんは頷く。

「アシュリーに関係する人物は全員保護対象になってるからね、ラズロ、君もだよ」

「え」

 固まるラズロさん。

「当然でしょう? アシュリーに一番多く接するのはラズロなんだから、ラズロがあっち側に捕まったり、取り込まれるのは致命的な事ぐらい、分かるよね?」

「そ、それはまぁ、そうだな?」

 ……全然考えてなかったんだ、ラズロさんってば……。

「だから、夜の外出も当面禁止だね」

「えぇっ?!」

 ラズロさんが悲鳴をあげる。

「アシュリーの身を危険から守る為に協力してね、って言ったら、任せておけって言ってたよね?」

「それは、そうだけどさ、じゃ、じゃあ、いつまで?」

 動揺しすぎてどもってます、ラズロさん……。

「さぁ?」

 笑顔のノエルさんに、泣きそうなラズロさん。なんて対照的なんだろう……。

 大丈夫なんだろうか……。
 そんな僕の気持ちに気付いたのか、ノエルさんが僕を見た。

「アシュリーは気にしなくて大丈夫だよ。そもそもラズロはフラフラと遊び過ぎなんだよ。少しぐらい遊びを休んでも罰は当たらないよ」

 とどめを刺されたラズロさんはテーブルに突っ伏した。

「最近、ようやくツキが回ってきてたのに……」

 ラズロさんはノム、ウツ、カウと言われるものの、ノムとウツが好きなんだって前にノエルさんが教えてくれた。

「ごめんなさい、ラズロさん」

 テーブルに突っ伏しながらラズロさんが首を横に振る。

「いいんだ……どうせオレなんて……」

 賭け事が出来ないだけで自分を否定し始めてしまった……賭け事って、そんなに大事なの?

「宵鍋に行く時は皆で行こうか」

 顔を上げたラズロさんは涙目だった。

「え」

「宵鍋に皆で行くのは別に構わないよ。僕もクリフも行けば大丈夫でしょう。城の警備は欠かさず騎士団や魔法師団から人を派遣しておけば良いんだし」

 それに、と言ってノエルさんは僕を見る。

「本来なら子供のアシュリーを飲み屋に連れて行きたくはないけど、アシュリーの気分転換に宵鍋は良いみたいだから。宵鍋は特別に。ただ、僕とクリフが揃ってない時は駄目だよ?」

「はい、ノエルさん。ありがとうございます」

 にっこりと微笑むノエルさん。

「さっそくだけど、明日の夜、行こうか」

「おう!」

 ラズロさんは宵鍋に行けると分かって機嫌を回復したみたい。良かった。
 僕も宵鍋は行きたい。美味しい料理に、ザックさんとのお話も楽しいし、フルールもおなかいっぱい食べられるから嬉しそうだし。
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