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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 魚の切り身をきのこと蒸すことに決定。
 肉の方は捌けるけど、魚はまだ慣れてないから、ザックさんの所に持って行って教わりつつ、お裾分けする。
 宵鍋以外のお店には、ラズロさんがお裾分けしてるみたい。

「きなくせぇ噂を聞いたぞ」

 ザックさんが魚を捌きながら言う。
 カウンターに腰掛けて、捌く様子を見てるラズロさんは眉をちょっとだけ動かしたけど、それ以外は何も反応していないように見える。

「北と南が手を組もうとしてるって噂だ」

「お貴族至上主義と、名ばかり民主主義。仲良くやれそうなこった」

「北はダンジョンが欲しいそうだ」

 それまでベンチで寝そべっていたパフィの耳が立つ。
 思わず僕も反応しそうになって、ちょっと切り込みが深くなってしまった。危ない危ない……。

「よくご存知だなぁ」

「大方、第二王子派の貴族で、逃げおおせた奴が漏らしたんだろうよ」

 ロクでもねぇ、と言うとザックさんが魚の頭を一回で落とした。結構大きな魚だったんだけど、それだけザックさんも苛立ってるんだろうな。

「そもそも順位を覆す為に勝手に他国と手を組むような奴らだ。何があってもおかしくないだろうよ」

「どうすんだ」

「何とかするだろ。うちの上は優秀なんだからよ」

 ザックさんが言う。

「そのダンジョンってのは、アシュリーに関するもんなんだろう?」

 ラズロさんは認めて良いものなのかどうなのか迷っている風だった。

「さすがにな、噂になってる。
ギルドも城の連中もわざわざ吹聴したりはしねぇがな、目立つだろうよ、子供が重要な局面に加わっていればな」

 ラズロさんが髪をわしわしとかく。

『そうだ』

 これまでネコのフリをしていたパフィが喋って、ザックさんは深いため息を吐いた。

「こっちのネコもなんか訳有りだろうとは思ってたが、喋るとはなぁ……」

 まぁ、普通のネコを飲み屋さんに連れてこないよね。

「安心しろ。
一時は王家に対して口さがなく言う奴もいたがな、第一王子やらなんやらが必死に動いてんのは見聞きしてる」

 全部の魚を捌き終えて、残った頭をフルール用食器に入れたのを、フルールが頭からかじっていた。

「オレらより若くて、しかも今回の被害者の第一王子や、年端もいかないアシュリーなんかが頑張ってんのを聞いてて王家に恨みを持つような奴はそういねぇよ」

 手を洗いながら話すザックさんの言葉に、僕は嬉しかった。
 僕は、僕の出来ることで手伝ってきた。それが喜ばれているのは嬉しい。それより、殿下の頑張りが伝わってることが嬉しかった。
 そうじゃなきゃ、悲しい。

「オレらはオレらで頑張るからよ、お偉いさんも頑張ってくれ」



 ザックさんの言葉を殿下に伝えたいって思ったけど、殿下は忙しいから、まだ下手な字しか書けないけど、手紙にして食事に添えた。
 内容は誰に見られても困らない。
 殿下に伝えたかったから、届いて欲しいな。

 無事に僕の手紙──ザックさんの言葉は届いたみたいで、ありがとうと書かれた手紙をクリフさんから受け取った。

「殿下はアシュリーからの手紙に喜んでいた、とても」

 ネロがいない日も、殿下は悪夢に悩まされることが減ったって、教えてもらった。
 良かった、本当に。
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