前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

044-1

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 目が覚めたら城にある僕の部屋で、ベッドに寝かされていた。

 ダンジョンそのものじゃなくて、階層の一つしか閉じていないのに疲れてしまって、帰りの馬車の中で寝てしまったのを覚えてる。

 僕が起きたのに気付いて、ネロが僕に頬擦りする。
 フルールも寄って来たので、頭を撫でる。

「心配させちゃった? ごめんね」

 格好も寝間着に着替えさせてもらってたみたいで、着替えて食堂に行く。

「アシュリー、起きたか」

 ラズロさんに声をかけられる。
 ノエルさんとクリフさん、ティール様、ナインさんもいた。パフィもいた。

「大丈夫?」

 心配そうにノエルさんが僕の顔を覗き込みながら聞く。

「大丈夫だと思います。ごめんなさい、眠ってしまって」

「いや、そんな事は気にするな。
身体に違和感はあるか?」

「そう言うのはないんですけど、凄くおなかが空いてます」

 僕の言葉に皆がほっとした顔をする。

「でも、何かあったらすぐに言うんだよ」

「はい、ノエルさん」

 帰りに屋台で買ったと言う串焼き肉を、ラズロさんが温めてくれている間に、ティール様から揚げ菓子をもらった。
 冷めてるけど、美味しい。

『アシュリー、食べ終えたら水晶に力を注いで来い』

「パシュパフィッツェ様、アシュリーは慣れぬ事をして目覚めたばかりです、それは明日でも……」

 僕を気遣ってノエルさんがパフィに言ってくれた。パフィはふん、と鼻で笑う。

『アシュリーが眠り続けたのは、体内に許容量以上の魔力が入り込んだ為だ。とっとと出さないとまた寝込むぞ』

 魔力が入り込んだ?

「パフィ、どうして僕に魔力が入り込むの?
ダンジョンにあった魔力が入っちゃったってこと?」

 そうだ、とパフィが答える。

『階層が内包していた魔力が、閉じた際におまえの中に入ったようだな』

 それってこれから先、ダンジョンを閉じるたびにそうなるってこと?

『大気中に霧散すると思われた魔力が、閉じたダンジョンメーカーの体内に入るとなると、クロウリーが作ったダンジョンを閉じる事もままならんな』

 うーむ、と唸うパフィを皆で見つめていたら、ラズロさんが温まった串焼き肉を持って来てくれた。

「とりあえず食え」

「ありがとうございます」

 遠慮なく肉を頬張っていたら、横から細長い舌が伸びてきて、肉がごっそりなくなった。
 見るとアマーリアーナ様──の大蛇がいた。
 ごくりと喉を鳴らして肉を飲み込む大蛇を、パフィが睨む。皆は唖然とした顔で見てる。

『アマーリアーナ、私の分がなくなったではないか』

 パフィ、言うべきことはそれじゃないよ。

『なかなか美味しいわね』

 アマーリアーナ様も、たまにこうして来るんだけど、実は暇なんだろうか……?
 からっぽになってしまった皿を、僕は少し恨めしい気持ちで見る。まだ少ししか食べてなかったのに。
 肩を叩かれて顔を上げるとラズロさんで、ちょっと待ってろ、と言って厨房に戻って行った。
 もしかして、なにか作ってくれるのかな……。

『水晶を持って行けばいいのよ』

 水晶?
 ……あぁ、さっきの続きを話しているんだ。

『もう核が出来ているのなら、持ち運んでも大丈夫な筈よ』

『確かにな』

 水晶──トラスを持ち運ぶ?

『持ち運んでも大丈夫なようにまじないをかけに来たのよ』と言って、赤くて先の割れた舌をチロチロとさせるアマーリアーナ様。

『水晶の出来上がりも早くなるし、その地に余計な魔力を滞留させる事もなくなる。まぁ、悪くないな』

 そうなんだ。
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