前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

文字の大きさ
195 / 271
第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

047-1

しおりを挟む
 ジャッロたちからもらった蜂蜜を、玻璃の器に入れて蓋をする。
 風魔法で巣がぐるぐると回転していって、ぽたりぽたりと器の底に蜂蜜が溢れ落ちていく。

「何度見ても飽きないんだよなぁ、アシュリーの風魔法で巣と蜜が分離すんの」

 ラズロさんはそう言って玻璃の器を覗き込む。
 器の中では巣が回ってる。
 キレイに蜜が取れるまでは三十分ぐらいはかかる。前にパフィがやってくれた時は、威力が強すぎて全てが液体になってしまって、食べられなくなってしまった。フルールが食べてくれたので良かったけど。

「そう言えばギルドからダンジョン蜜を売ってもらえないかと声をかけられたぞ」

「近頃は渡してませんでしたね、そう言えば」

 まぁな、とラズロさんが頷く。

 バン!と大きな音をさせて食堂のドアが開いた。
 びっくりして見ると、レンレンさんがいた。
 なんて言うか、レンレンさんはいつも唐突だよね。

「アシュリー!!」

「封印解けたのか」

 横でラズロさんがぽつりと呟く。
 封印っていうのは、多分レンレンさんの口に貼られていたパフィのアレのことだろうと思う。

「アシュリーがダンジョン蜜を持ってるって聞いてね! もらいに来たんだ!」

 走って来たレンレンさんのおでこをラズロさんがぺちりと叩く。

「何がもらいに来たんだ、だ。アホか。これは貴重なんだからおまえの欲望に任せてくれてやる訳にはいかないんだよ」

 呆れ顔のラズロさんに、レンレンさんは人差し指をたてて横に揺らしながら、チッチッチ、と舌を鳴らす。

「分かってないね、ラズロ! ダンジョン蜜の持つ効能を魔法薬学で活用すればその可能性は無限大なんだよ! そもそも蜂蜜と言うのは殺菌効果が」

 チリン、と鈴の音がしてパフィが目の前に現れた途端、レンレンさんの話が止まった。

「ダンジョン蜜はな、ギルドに卸してんだよ。その売り上げで国庫の不足分を補ってんだ。分かったら職務に戻れ」

 カクカクとレンレンさんの頭が上下に揺れて、全速力で食堂から出て行った。

『逃げたか』

「まぁ、それは無理もないんじゃないかな……」

 やっと口から貼り紙が取れたのに、また貼られたら大変だろうし……。

 ナインさんがひょこ、と廊下から覗き込んできた。

「あ、おはようございます、ナインさん」

 ナインさんは食堂に入って来て言った。

「魔法薬学長、走って行った」

 それで食堂を覗き込んだのか。

「口を封印されるのを恐れて逃げてったよ」

 ラズロさんの言葉にナインさんは頷いた。

「魔法薬学長、うるさい。静か、良いと思う」

 遠慮のないナインさんの言葉につい、笑ってしまった。

「蜜と巣、分けた?」

 玻璃の器をナインさんが覗き込む。

「そうですね、そろそろ良さそうです」

『何だ?』

「蜂の巣での蝋燭の作り方を教えてもらうんだよ」

『あぁ、蜜蝋だな。それよりも蜜を使ったものを作れ』

 言いたい事を言ってパフィは食堂を出て行ってしまった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方

tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。 しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。 追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが? どうなる俺の田舎でのスローライフ???

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

処理中です...