前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた

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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 あまり煮込み過ぎるとタマネギが溶けてしまうので、ほどほどに煮込んだところで火を止めて、蓋をする。残った熱で中まで火が通るし、味もしみていくから。

「いつか、行けるようになるだろ」

 顔を上げてラズロさんを見る。

「ノエル達も頑張ってるしな、なにしろおまえ、あの水晶だったか? あれ持ってたら手出し出来ないんだろ? 最強じゃねぇか」

 僕自身は最強からは程遠いけど、ありがたい事に守ってくれる人たちがいて、今はトラスもいるから、確かにそうなのかも。

「そうですね」

 北の国とか、南の国とか、クロウリーさんを手にかけた魔女とか……どうにか出来る日が来るのか分からないけど、大変なことが起きないといいなって思う。
 今回のことで、王都の人たちの辛そうな顔を見てるだけで暗い気持ちになって、今だって不安はなくなってはいないし、あの時の不安な気持ちは上手く言えないけど、真っ暗で明かりのない夜の中を歩いてるみたいな、そんな心細さだった。
 ノエルさんや殿下の頑張ってる姿を見て、僕も頑張らなきゃって思えたし、パフィがいたからやってこれた。

「……心や身体が疲れたらな、たくさん食べて、たくさん寝るんだ」

 突然ラズロさんが話し始めた。

「次はな、心を甘やかすんだ」

 心を甘やかす?

「悪いほうにじゃないぞ? 良いほうにだ」

 心と身体が疲れたら、って言うのは、この国に起きたことを言ってるんだろうな。
 甘やかすっていうのは、娯楽をってことなのかな。

「あまり甘やかしすぎは良くねぇけどな。
疲れてたら前に向かって歩けないだろ?」

 そうだよね。

「そうしたら、駆け足じゃなくて良いからな、一歩ずつ前に進めば良いんだよ。進む早さは遅くてもな、それをみんなでやれば大きな一歩、って奴だ」

 みんなでやれば、大きな一歩。

「僕とラズロさんの一歩ずつを足したら二歩ってことですね」

 そうだ、と言って笑うと、ラズロさんは買い物に行ってくる、と食堂を出て行った。

 ひと休みしようと思って、ヨウルトを器によそり、蜂蜜をかける。

 心と身体が疲れたら、おなかいっぱい食べて、たっぷり眠る。
 少し自分を甘やかして、心に元気をあげて、そうしたら一歩前へ。
 一歩が踏み出せない人がいても、みんなが踏み出せれば、進む。

 僕の一歩は小さいけど、無駄じゃないんだってラズロさんは言ってくれた。
 中途半端なスキルしかないと父さんたちを悲しませたけど、中途半端だから駄目だとか、そう言うことじゃないんだなって、ラズロさんの言葉で思った。
 歩けるなら歩いて、疲れたら休んで、また歩く。

 ラズロさんはよく言ってた。
 焦るなよ、って。
 きっと、そう言うことなんだろうな。

 僕の一歩で、助かる人がいるかもしれない。
 誰かの一歩が、僕を助けてくれるかもしれない。

 それはきっと、すごいことだと思う。
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