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第一章 イニティウム王国
第23話 魔銃士、領主の暗殺未遂事件に巻き込まれる・3
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朝になると妙に街の空気がざわついていることに気付く。食堂へ行くと朝食を摂っている最中のエドたちが、俺を見つけると片手を挙げてきた。俺たちは食事の必要がないから、水だけを貰った。
「エド、何だか騒がしいんだけど、どうしたんだ?」
「さっき宿屋の主人に聞いたら、真夜中に泥棒騒ぎがあったらしいんだ」
「泥棒?」
「なんでも市民街に住む金持ちの家が荒らされたり、商人ギルドも被害に遭ったようだ」
エドに続いてハミルもそう教えてくれる。
商人ギルドには朝市の売り上げやギルドに所属する商人たちの上納金がある。その金額は相当なものだろう。それらを奪いに来るなんて、ただの泥棒じゃないような気がする。
「今朝の朝市に行ったらその話でもちきりですよ。お客さんたちは冒険者だから、もしかしたら捕獲クエストが出てるかもしれませんね」
宿の主人がルチアに水皿を置きながら、話に入ってくる。俺にも並々と注がれた水の入ったグラスを置いて、宿屋の主人は大仰に溜息を吐く。
「うちもそこそこ売り上げのある宿ですから、不安ですよ。早く捕まってほしいです」
宿屋の主人は一礼して去って行く。俺たちは朝食を終えると宿を出て、大急ぎで冒険者ギルドへ向かう。ルチアは例によって不可視の結界を張りつつ俺のすぐ傍を歩く。不自然に俺たちの周囲に空間が出来るが、そこは古代上位語魔術を唱えた相棒が違和感を打ち消す幻覚を見せている。案の定ギルド内には昨夜の泥棒騒ぎで持ちきりだった。様々なパーティーがいて、早く今日の分のクエストが貼り出されないかと待っている。
「皆様、お待たせいたしました。本日のクエストです」
今日も副ギルドマスターのブライアンが受付業務をするらしく、よく通る声で幾枚かのクエストが書かれた紙を手際よくボードに貼り付けていく。各パーティの代表が待ってましたとばかりにボードへ群がり、昨夜街を騒がせた泥棒に関するクエストがないか探す。だがそれに関しては一枚もなかったらしく、みな肩を落として適当なクエストを手に仲間たちの元へ戻っていく。
「エドワードさん、お待ちください」
ブライアンに呼び止められるエド。他のパーティはさっさとギルドを出て行き、残っているのは俺たち銀の翼のメンバーだけだ。
「みなさん、どうぞこちらへ」
ブライアンは俺たちをギルドマスターしか入れない部屋へ案内する。意外と質素なその部屋には年の頃は五十代と思しき偉丈夫が机の向こうに座っている。人数分の座り心地の良さそうな椅子が並べられていた。
「どうぞお掛けください。ソーさんは初めましてですね、わたしはギルドマスターのウォーレンです。銀の翼の皆様をお呼びしたのは、昨晩発生した泥棒騒動の件についてです」
メンバー全員の表情が訝しげなものになった。クエストに出さず、俺たちだけに話すのはギルドの公平さに欠くんじゃないのか? その疑念はみな同じだったらしく、エドが代表で質問した。
「待ってください、なぜ我々だけにその話をするんですか。他のパーティにはクエストという形で依頼しない理由を教えてください」
「……元「銀の翼」所属メンバーである、聖女候補だったカーミラさん。彼女が昨夜の泥棒騒ぎに加担しているという疑惑があるんです。それであなた方から聞き取り調査をしたいと思いましてね」
「ちょっと待って、カーミラが一枚噛んでいるっていうの? あの子がそんな、信じられないわ!」
「俺もにわかには信じがたい。あのプライドの塊みたいな女が、そう易々と犯罪に手を染めるほど簡単に信仰心を捨てないはずだ。なぁエド」
「おれも信じられません。確かに彼女は我が強いところがありますが、信仰心の篤さは本物です。彼女が犯罪に手を染めるということは信仰心を手放すも同義。絶対に何かの間違いです」
へえ。カーミラって子は性格はともかく信仰心の篤さは、みなに信用されていたんだな。付き合いの長い皆が口を揃えて言うのなら、カーミラが関与しているかもしれないという疑惑は眉唾ものとしておくとするか。しかしカーミラが関与していると疑われた根拠は何なんだ?
「カーミラが加担したっていう証拠はなんなの? それがなきゃ、あたしは信じないわ!」
「俺もそうだ。仮にも仲間だった彼女が犯罪に手を染めたなんて信じられない」
「同感です。おれもカーミラがそんな子じゃないって信じています」
三者三様にカーミラを庇う。その姿にギルドマスターのウォーレンも副マスターのブライアンも困ったように顔を見合わせる。確かになにか証拠があるからこそ、こんなコトを言うんだろうな。
「目撃者がいたんです。昨夜、市民街にある金持ちの家で、誰かを待っているようなカーミラの姿が。その目撃者は我がギルドの受付嬢であるエイミーなんです」
意外な人物が目撃者なのか。受付嬢ならカミラを幾度も見ているから見間違えるはずがない……ギルドマスターたちがカーミラを疑う要素はそこか。逆に言えば身内の証言だけって話なんだが、さて、どうしたものか。
「肝心のカーミラ本人はどこにいるんだ?」
今まで黙っていた俺の発言に、ギルドマスターたちは気まずげに目をそらす。
「地下牢に監禁してあります。見張りとしてエイミーを付けて」
なるほど。それで今日も受付をブライアンが担当したのか。しかし、どうにも腑に落ちない部分があるんだよな。
「とりあえずカーミラに面会させてくれないか。俺は彼女がメンバーから外れてから加入したから、第三者の立場で物が見えると思うんだが」
「一理ありますね。ブライアン、彼らを地下牢に」
「判りました」
さてさて、カーミラの言い分も聞かなきゃ事の真相は判らないんだよな。俺たちはブライアンの後に続いて、地下牢へと続く転移魔法陣の上に乗った。
「エド、何だか騒がしいんだけど、どうしたんだ?」
「さっき宿屋の主人に聞いたら、真夜中に泥棒騒ぎがあったらしいんだ」
「泥棒?」
「なんでも市民街に住む金持ちの家が荒らされたり、商人ギルドも被害に遭ったようだ」
エドに続いてハミルもそう教えてくれる。
商人ギルドには朝市の売り上げやギルドに所属する商人たちの上納金がある。その金額は相当なものだろう。それらを奪いに来るなんて、ただの泥棒じゃないような気がする。
「今朝の朝市に行ったらその話でもちきりですよ。お客さんたちは冒険者だから、もしかしたら捕獲クエストが出てるかもしれませんね」
宿の主人がルチアに水皿を置きながら、話に入ってくる。俺にも並々と注がれた水の入ったグラスを置いて、宿屋の主人は大仰に溜息を吐く。
「うちもそこそこ売り上げのある宿ですから、不安ですよ。早く捕まってほしいです」
宿屋の主人は一礼して去って行く。俺たちは朝食を終えると宿を出て、大急ぎで冒険者ギルドへ向かう。ルチアは例によって不可視の結界を張りつつ俺のすぐ傍を歩く。不自然に俺たちの周囲に空間が出来るが、そこは古代上位語魔術を唱えた相棒が違和感を打ち消す幻覚を見せている。案の定ギルド内には昨夜の泥棒騒ぎで持ちきりだった。様々なパーティーがいて、早く今日の分のクエストが貼り出されないかと待っている。
「皆様、お待たせいたしました。本日のクエストです」
今日も副ギルドマスターのブライアンが受付業務をするらしく、よく通る声で幾枚かのクエストが書かれた紙を手際よくボードに貼り付けていく。各パーティの代表が待ってましたとばかりにボードへ群がり、昨夜街を騒がせた泥棒に関するクエストがないか探す。だがそれに関しては一枚もなかったらしく、みな肩を落として適当なクエストを手に仲間たちの元へ戻っていく。
「エドワードさん、お待ちください」
ブライアンに呼び止められるエド。他のパーティはさっさとギルドを出て行き、残っているのは俺たち銀の翼のメンバーだけだ。
「みなさん、どうぞこちらへ」
ブライアンは俺たちをギルドマスターしか入れない部屋へ案内する。意外と質素なその部屋には年の頃は五十代と思しき偉丈夫が机の向こうに座っている。人数分の座り心地の良さそうな椅子が並べられていた。
「どうぞお掛けください。ソーさんは初めましてですね、わたしはギルドマスターのウォーレンです。銀の翼の皆様をお呼びしたのは、昨晩発生した泥棒騒動の件についてです」
メンバー全員の表情が訝しげなものになった。クエストに出さず、俺たちだけに話すのはギルドの公平さに欠くんじゃないのか? その疑念はみな同じだったらしく、エドが代表で質問した。
「待ってください、なぜ我々だけにその話をするんですか。他のパーティにはクエストという形で依頼しない理由を教えてください」
「……元「銀の翼」所属メンバーである、聖女候補だったカーミラさん。彼女が昨夜の泥棒騒ぎに加担しているという疑惑があるんです。それであなた方から聞き取り調査をしたいと思いましてね」
「ちょっと待って、カーミラが一枚噛んでいるっていうの? あの子がそんな、信じられないわ!」
「俺もにわかには信じがたい。あのプライドの塊みたいな女が、そう易々と犯罪に手を染めるほど簡単に信仰心を捨てないはずだ。なぁエド」
「おれも信じられません。確かに彼女は我が強いところがありますが、信仰心の篤さは本物です。彼女が犯罪に手を染めるということは信仰心を手放すも同義。絶対に何かの間違いです」
へえ。カーミラって子は性格はともかく信仰心の篤さは、みなに信用されていたんだな。付き合いの長い皆が口を揃えて言うのなら、カーミラが関与しているかもしれないという疑惑は眉唾ものとしておくとするか。しかしカーミラが関与していると疑われた根拠は何なんだ?
「カーミラが加担したっていう証拠はなんなの? それがなきゃ、あたしは信じないわ!」
「俺もそうだ。仮にも仲間だった彼女が犯罪に手を染めたなんて信じられない」
「同感です。おれもカーミラがそんな子じゃないって信じています」
三者三様にカーミラを庇う。その姿にギルドマスターのウォーレンも副マスターのブライアンも困ったように顔を見合わせる。確かになにか証拠があるからこそ、こんなコトを言うんだろうな。
「目撃者がいたんです。昨夜、市民街にある金持ちの家で、誰かを待っているようなカーミラの姿が。その目撃者は我がギルドの受付嬢であるエイミーなんです」
意外な人物が目撃者なのか。受付嬢ならカミラを幾度も見ているから見間違えるはずがない……ギルドマスターたちがカーミラを疑う要素はそこか。逆に言えば身内の証言だけって話なんだが、さて、どうしたものか。
「肝心のカーミラ本人はどこにいるんだ?」
今まで黙っていた俺の発言に、ギルドマスターたちは気まずげに目をそらす。
「地下牢に監禁してあります。見張りとしてエイミーを付けて」
なるほど。それで今日も受付をブライアンが担当したのか。しかし、どうにも腑に落ちない部分があるんだよな。
「とりあえずカーミラに面会させてくれないか。俺は彼女がメンバーから外れてから加入したから、第三者の立場で物が見えると思うんだが」
「一理ありますね。ブライアン、彼らを地下牢に」
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さてさて、カーミラの言い分も聞かなきゃ事の真相は判らないんだよな。俺たちはブライアンの後に続いて、地下牢へと続く転移魔法陣の上に乗った。
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