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第一章 イニティウム王国
第24話 魔銃士、領主の暗殺未遂事件に巻き込まれる・4
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薄暗い地下室に二十代後半の女性が立っている。手には細鞭が握られており、それはほのかに雷を纏った魔法の鞭だ。牢の中には、魔法を封じる手枷と足枷を嵌められた、ピンク髪の少女がいる。簡素な木の椅子に腰掛けており表情は暗く、生気がない。昨夜に泥棒騒ぎがあって今朝囚われたとしても、その頬はげっそりとしている。灯りは一切点いていない。細鞭が放つ雷光のお陰で鉄格子付近にいるカミラの姿だけは見えるが、その他は暗闇だ。
「おや暗いですね、灯りくらい点けたら如何ですか」
ギルドマスターであるウォーレンが呆れたように呟くと、魔法で地下牢全体を明るく照らし出した。明るくなると地下牢の全貌が見える。薄汚い壁も床もこれぞ不衛生と言わんばかりに汚れており、元聖女候補のカーミラには耐えがたいだろうな。いや彼女じゃなくても人間の尊厳を無視する環境に、反吐が出そうだ。
「エイミー、銀の翼メンバーを連れてきました」
「お疲れさまです。彼女、容疑は否定していますが」
「当たり前でしょう? わたくしは泥棒なんてしていませんわ! 昨夜あの場にいたのはアーサーさんの家に用事があったからですわ。用向きが終わって新しいパーティメンバーの待つ宿屋へ向かうところを見られたに過ぎませんわ!」
やつれているように見えたが訂正だ。実に元気よく噛み付いてくる。これだけ元気があれば心配することはないかな。まぁまだ十代の女の子だ、嫌疑を掛けられて心細かったこともあるんだろう。
「第一、何で抜けた銀の翼メンバーが来るんですの? 今のわたくしは「獅子王の瞳」に所属しているんですのよ、呼ぶなら彼らじゃなくって?」
「付き合いの長い銀の翼メンバーの方が、あなたの性格や行動基準をよくご存知かと思いまして、わざわざご足労願った次第です。みなさまはカーミラさんがそんなことをする訳がないと、主張されていますが」
「と、当然ですわ! わたくしは信仰に背くようなことに手を染めたりはしませんのよ!」
エドたちが主張するように、信仰心の篤さは本物のようだ。俺から見てもカーミラが嘘を言っているようにはみえない。だとすると、目撃者の言い分とやらも聞かないと不公平だ。
「で、目撃者のアンタは何が根拠でカーミラを泥棒と決めつけたんだ?」
偉そうに細鞭を持ち、カーミラを威嚇するように床に叩きつけている受付嬢――エイミーに問う。俺は見逃さなかった。エイミーの目が一瞬だけ泳いだのを。人間はなにか疚しいことがあると態度に現れる。どんなに訓練した暗殺者でも不意打ちは無意識に本音が出る。エドたちは気付かなかったが、俺は最初からこのエイミーという女を疑っていたから変化に気付けた。大した女狐だな、こいつは。
「わたしがこのカーミラを真夜中に目撃したからです。アーサー氏の家の前で佇む姿を。この特徴的なピンク髪は冒険者の中ではカーミラだけですので、間違いありません」
「ふーん、さすが受付嬢だな。このトレースの都を訪れる数多の冒険者たちの特徴を、全て覚えているのかい?」
「す、少なくともわたしが受付を担当してからは、ピンク髪の後衛職の方はカーミラだけです」
「ちょっとあなた! さっきから黙って聞いていれば何ですの? わたくしのことを呼び捨てにして! わたくしを呼び捨てにして良いのは、両親と気心の知れた銀の翼メンバーだけですのよ!」
「……あーちょっとカーミラさん、申し訳ないけれど黙っていてくれないかな。俺が今から君の無実を証明するから」
ヒステリックに喚く声に耐えきれず、思わずこめかみを押さえながら低い声で牽制する。そこでようやく俺の存在をはっきりと認識したんだろうな。
カーミラは自分を助けてくれた恩人であると同時に、パーティから抜ける原因である人間に対して、複雑な表情になっている。だが無実を証明するとの言葉に、結局は大人しくなってくれた。
「結論から述べる。カーミラさんは犯人じゃない――あぁ黙っていて。全部説明するからさ」
また喚きだそうとしたカーミラを制し、俺はさりげなく右腰のホルスターに手を伸ばしいつでも魔銃を抜けるようにしておく。頼もしい相棒に念話で確認をすれば、思った通りの返答がきた。さて、昨夜の答え合わせをして真の犯罪者を炙り出すとするか。
「おや暗いですね、灯りくらい点けたら如何ですか」
ギルドマスターであるウォーレンが呆れたように呟くと、魔法で地下牢全体を明るく照らし出した。明るくなると地下牢の全貌が見える。薄汚い壁も床もこれぞ不衛生と言わんばかりに汚れており、元聖女候補のカーミラには耐えがたいだろうな。いや彼女じゃなくても人間の尊厳を無視する環境に、反吐が出そうだ。
「エイミー、銀の翼メンバーを連れてきました」
「お疲れさまです。彼女、容疑は否定していますが」
「当たり前でしょう? わたくしは泥棒なんてしていませんわ! 昨夜あの場にいたのはアーサーさんの家に用事があったからですわ。用向きが終わって新しいパーティメンバーの待つ宿屋へ向かうところを見られたに過ぎませんわ!」
やつれているように見えたが訂正だ。実に元気よく噛み付いてくる。これだけ元気があれば心配することはないかな。まぁまだ十代の女の子だ、嫌疑を掛けられて心細かったこともあるんだろう。
「第一、何で抜けた銀の翼メンバーが来るんですの? 今のわたくしは「獅子王の瞳」に所属しているんですのよ、呼ぶなら彼らじゃなくって?」
「付き合いの長い銀の翼メンバーの方が、あなたの性格や行動基準をよくご存知かと思いまして、わざわざご足労願った次第です。みなさまはカーミラさんがそんなことをする訳がないと、主張されていますが」
「と、当然ですわ! わたくしは信仰に背くようなことに手を染めたりはしませんのよ!」
エドたちが主張するように、信仰心の篤さは本物のようだ。俺から見てもカーミラが嘘を言っているようにはみえない。だとすると、目撃者の言い分とやらも聞かないと不公平だ。
「で、目撃者のアンタは何が根拠でカーミラを泥棒と決めつけたんだ?」
偉そうに細鞭を持ち、カーミラを威嚇するように床に叩きつけている受付嬢――エイミーに問う。俺は見逃さなかった。エイミーの目が一瞬だけ泳いだのを。人間はなにか疚しいことがあると態度に現れる。どんなに訓練した暗殺者でも不意打ちは無意識に本音が出る。エドたちは気付かなかったが、俺は最初からこのエイミーという女を疑っていたから変化に気付けた。大した女狐だな、こいつは。
「わたしがこのカーミラを真夜中に目撃したからです。アーサー氏の家の前で佇む姿を。この特徴的なピンク髪は冒険者の中ではカーミラだけですので、間違いありません」
「ふーん、さすが受付嬢だな。このトレースの都を訪れる数多の冒険者たちの特徴を、全て覚えているのかい?」
「す、少なくともわたしが受付を担当してからは、ピンク髪の後衛職の方はカーミラだけです」
「ちょっとあなた! さっきから黙って聞いていれば何ですの? わたくしのことを呼び捨てにして! わたくしを呼び捨てにして良いのは、両親と気心の知れた銀の翼メンバーだけですのよ!」
「……あーちょっとカーミラさん、申し訳ないけれど黙っていてくれないかな。俺が今から君の無実を証明するから」
ヒステリックに喚く声に耐えきれず、思わずこめかみを押さえながら低い声で牽制する。そこでようやく俺の存在をはっきりと認識したんだろうな。
カーミラは自分を助けてくれた恩人であると同時に、パーティから抜ける原因である人間に対して、複雑な表情になっている。だが無実を証明するとの言葉に、結局は大人しくなってくれた。
「結論から述べる。カーミラさんは犯人じゃない――あぁ黙っていて。全部説明するからさ」
また喚きだそうとしたカーミラを制し、俺はさりげなく右腰のホルスターに手を伸ばしいつでも魔銃を抜けるようにしておく。頼もしい相棒に念話で確認をすれば、思った通りの返答がきた。さて、昨夜の答え合わせをして真の犯罪者を炙り出すとするか。
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