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第一章 イニティウム王国
第26話 魔銃士、領主の暗殺未遂事件に巻き込まれる・6
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地下牢の住人が入れ替わる。
エイミーはスキルと魔力を封じる手枷足枷を嵌められ、カーミラが入っていた牢の隣にぶち込まれる。顔面の爛れは完治していないから、痛みに呻きながら彼女は項垂れている。解放されたカーミラは手足の自由を取り戻し、安堵の息を漏らした。
「あの……ソーさん、わたくしの疑いを晴らしてくださりありがとうございます。それと、山賊に襲われた怪我も治して下さって。わたくし、きちんとお礼を言わないまま銀の翼を脱退してしまったから」
「礼を言うのは俺じゃなく、ここにいるみんなに、だな」
カーミラの無実を信じていたのはエドたちだ。彼らが信じていたからこそ、俺もお節介を焼いただけだ。
「わたくし、傲慢でしたわね」
神妙な表情のまま、エドたちに向き直ると深く頭を下げている。うんうん、謙虚で素直な態度じゃないか。最初からこうであれば、俺に嫉妬することなく銀の翼に所属していられたのにな。
「思い上がっていましたわ。トレースの都を守る聖女候補に上っただけで、結局は選ばれなかった。ちっぽけなプライドにすがって、山賊には真っ先に襲われて……恥ずかしいですわ」
「反省できているだけ、変わったよカーミラは。おれたちはもう別のパーティに属しているけれど、カーミラは獅子王の瞳で頑張ってほしい」
「エド……そしてみんな、わたくしの無実を信じてくれてありがとう」
うっすらと涙を滲ませてカーミラは、深々と頭を下げた。最後に彼女は銀の翼に未練を残しつつも、新しい所属先である獅子王の瞳へと戻っていく。獅子王の瞳のメンバーはカーミラが拘束されたことを知ってはいたが、別段救助に動くわけでなく静観していた。無実が証明され解放されても態度は変わらず、カーミラを受け入れている。
「おれたちもクエストを探さないとな」
今日のクエストはカーミラ関連で潰されてしまった。協力したからギルドから特別報酬が金貨で払われたが、前回の護衛クエスト失敗の穴を埋めるにはまだ足りない。
「今日は仕方ない、初心に戻って金にならないクエストをしよう。――地下水道に出没する大ネズミ退治クエストに着手しようか」
暗い、汚い、臭いの三拍子が揃っているので誰もやりたがらないクエストだけが、掲示板に残っている。どのパーティも引き受けてくれないので報奨金は日に日に上がっている。これを成功させれば護衛クエストを成功させたときに貰えた報酬が手に入る。補填するためには、背に腹は代えられない。
「仕方ないわね。地下水道は生活水でもあるんだから、清潔にしないとね」
アガサが意を決したように言うと、ハミルも頷いた。俺は別に何でも構わない。彼らには内緒にしているが、ルチアからの好意で懐が暖かいからな。別にパーティーを組んだからって俺個人の金を彼らに提供する義理もない。え、ケチ? 何とでも言え、前の世界で命を張って金を得ていたんだ。金を得たければ自分で何とかしろの精神を骨の髄まで叩き込まれたんだよ。
「よし、それじゃあクエストを受けよう」
掲示板から依頼書を剥がし、受付に戻ってきたブライアンに渡す。ギルドの方も持て余していた案件がようやく動くことが嬉しいらしく、本来なら冒険者たちが個人的に用意しないといけない魔力回復薬や毒消し草をくれた。水に濡れても炎が消えない魔法の松明もブライアンは渡そうとしたが、それは俺が断った。
「灯りの供給は俺が担当する。ルチアがいれば魔力切れは起こさないからな。それに松明を持てば片手が塞がるだろう? 万が一に備えて、両手は自由にしておいた方がいい」
素早さが命のハミルやアガサは特にだ。みんなは俺とルチアに礼を述べると、早速被害が拡大し始めているという中央広場へと向かう。ここの地下は地下水の源泉ともいえる場所らしく、大ネズミの巣があるのもここらしい。早く退治して源泉自体を浄化しないとな。
点検用のマンホールから俺たちは中に入る。魔銃の光魔法を発動させ、地下水道全体を隅々まで明るく照らす。
「す、すげぇ。地上と殆ど変わらない明るさじゃねぇか」
「こんなに広範囲を一度に照らせるなんて……ソーの魔力はどれだけ豊富なんだ」
いや感心してるとこ悪いけど、これルチアから魔力供給されていないと半径一メートルしか照らせないからね? 俺の貧弱なマナからの魔力じゃ無理無理。鉄製のはしごを全員が降りると、悪臭が鼻をつく。ついでに甲高い耳障りな声も。柴犬サイズに縮んだルチアが臭い臭いと訴えてくる。人間ですら鼻が曲がりそうなんだ、嗅覚が鋭いルチアには耐えられないだろう。
俺の可愛い大事な相棒を泣かせるんじゃねぇ腐れドブネズミども。殲滅してやる!
エイミーはスキルと魔力を封じる手枷足枷を嵌められ、カーミラが入っていた牢の隣にぶち込まれる。顔面の爛れは完治していないから、痛みに呻きながら彼女は項垂れている。解放されたカーミラは手足の自由を取り戻し、安堵の息を漏らした。
「あの……ソーさん、わたくしの疑いを晴らしてくださりありがとうございます。それと、山賊に襲われた怪我も治して下さって。わたくし、きちんとお礼を言わないまま銀の翼を脱退してしまったから」
「礼を言うのは俺じゃなく、ここにいるみんなに、だな」
カーミラの無実を信じていたのはエドたちだ。彼らが信じていたからこそ、俺もお節介を焼いただけだ。
「わたくし、傲慢でしたわね」
神妙な表情のまま、エドたちに向き直ると深く頭を下げている。うんうん、謙虚で素直な態度じゃないか。最初からこうであれば、俺に嫉妬することなく銀の翼に所属していられたのにな。
「思い上がっていましたわ。トレースの都を守る聖女候補に上っただけで、結局は選ばれなかった。ちっぽけなプライドにすがって、山賊には真っ先に襲われて……恥ずかしいですわ」
「反省できているだけ、変わったよカーミラは。おれたちはもう別のパーティに属しているけれど、カーミラは獅子王の瞳で頑張ってほしい」
「エド……そしてみんな、わたくしの無実を信じてくれてありがとう」
うっすらと涙を滲ませてカーミラは、深々と頭を下げた。最後に彼女は銀の翼に未練を残しつつも、新しい所属先である獅子王の瞳へと戻っていく。獅子王の瞳のメンバーはカーミラが拘束されたことを知ってはいたが、別段救助に動くわけでなく静観していた。無実が証明され解放されても態度は変わらず、カーミラを受け入れている。
「おれたちもクエストを探さないとな」
今日のクエストはカーミラ関連で潰されてしまった。協力したからギルドから特別報酬が金貨で払われたが、前回の護衛クエスト失敗の穴を埋めるにはまだ足りない。
「今日は仕方ない、初心に戻って金にならないクエストをしよう。――地下水道に出没する大ネズミ退治クエストに着手しようか」
暗い、汚い、臭いの三拍子が揃っているので誰もやりたがらないクエストだけが、掲示板に残っている。どのパーティも引き受けてくれないので報奨金は日に日に上がっている。これを成功させれば護衛クエストを成功させたときに貰えた報酬が手に入る。補填するためには、背に腹は代えられない。
「仕方ないわね。地下水道は生活水でもあるんだから、清潔にしないとね」
アガサが意を決したように言うと、ハミルも頷いた。俺は別に何でも構わない。彼らには内緒にしているが、ルチアからの好意で懐が暖かいからな。別にパーティーを組んだからって俺個人の金を彼らに提供する義理もない。え、ケチ? 何とでも言え、前の世界で命を張って金を得ていたんだ。金を得たければ自分で何とかしろの精神を骨の髄まで叩き込まれたんだよ。
「よし、それじゃあクエストを受けよう」
掲示板から依頼書を剥がし、受付に戻ってきたブライアンに渡す。ギルドの方も持て余していた案件がようやく動くことが嬉しいらしく、本来なら冒険者たちが個人的に用意しないといけない魔力回復薬や毒消し草をくれた。水に濡れても炎が消えない魔法の松明もブライアンは渡そうとしたが、それは俺が断った。
「灯りの供給は俺が担当する。ルチアがいれば魔力切れは起こさないからな。それに松明を持てば片手が塞がるだろう? 万が一に備えて、両手は自由にしておいた方がいい」
素早さが命のハミルやアガサは特にだ。みんなは俺とルチアに礼を述べると、早速被害が拡大し始めているという中央広場へと向かう。ここの地下は地下水の源泉ともいえる場所らしく、大ネズミの巣があるのもここらしい。早く退治して源泉自体を浄化しないとな。
点検用のマンホールから俺たちは中に入る。魔銃の光魔法を発動させ、地下水道全体を隅々まで明るく照らす。
「す、すげぇ。地上と殆ど変わらない明るさじゃねぇか」
「こんなに広範囲を一度に照らせるなんて……ソーの魔力はどれだけ豊富なんだ」
いや感心してるとこ悪いけど、これルチアから魔力供給されていないと半径一メートルしか照らせないからね? 俺の貧弱なマナからの魔力じゃ無理無理。鉄製のはしごを全員が降りると、悪臭が鼻をつく。ついでに甲高い耳障りな声も。柴犬サイズに縮んだルチアが臭い臭いと訴えてくる。人間ですら鼻が曲がりそうなんだ、嗅覚が鋭いルチアには耐えられないだろう。
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