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第一章 イニティウム王国
第35話 魔銃士、ダンジョンの厳しさを知る・2
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「わしはAランク冒険者たちと共にパーティを組み、ダンジョン探索に臨んだ。地下へ潜っていくタイプのダンジョンで、そうじゃな、蟻の巣をイメージすれば判りやすいかの。分岐が多く、侵入者を惑わせるダンジョン。そして様々なトラップが仕掛けられておった」
ようやく起き上がったマティアスたちを含め、俺たちに警告を含んだ口調でヴィゴさんは探索したダンジョンについて語る。蟻の巣型ダンジョンね、果実園に出現したダンジョンらしいや。しかし気になるワードがひとつ。様々なトラップっつーのが引っかかる。
「師匠、トラップとは何が」
「お前の職業である竜騎士でも、下手をすると突破できないトラップじゃ。例え竜形態になったとしても、お前の観察力不足によって命を落としかねん」
「そんなに危険なんですか」
「脳筋コンビのお前らでは、な。現にワシとパーティーを組んだ四人が全員、第二階層でトラップにより命を落とした。ワシはドワーフ故に土壌の異変を真っ先に察知し、離脱したから生きて脱出できた。あのダンジョンは手強い。様々なクラスが混じったパーティでないと、浅い階層で全滅するぞ」
沈黙が支配する。
俺たちはAクラスパーティなので、このダンジョン踏破クエストに挑戦する権利がある、あるがしかし。索敵に出たヴィゴさんのパーティが一人を残して壊滅とは。
「こんなこと言いたくないんだが、ギルドマスターってもしかしてヴィゴさんをわざと帰したんじゃないかな」
全員の視線が――いや、ヴィゴさん以外の視線が俺に集中する。ベテラン冒険者である彼の視線が俺に向けられないってことは、彼も俺と同意見なんだろう。ただ自分では認めたくなくて、他人が言ってくれてようやく自分の中で昇華したって感じだ。
「おいテメェ、師匠になんて口きいてんだ? 場合によってはお前の脳髄をここにブチまけてもいいんだぞ?」
「ほんっと下品な物言いしか出来ないんだな、北方人は。まぁ単細胞の竜騎士とはお似合いのコンビだね」
およよ、人当たりの良いエドがこんな毒舌を披露するなんて初めてだ。よっぽど獅子王の瞳とは徹底的に相性が悪いんだな。
「話が進まないから黙っていてくれない? あたしはヴィゴさんの話をもっと詳しく聞きたいんだけど」
ずっと黙っていたアガサが聞いたことのないような低音ボイスを出す。いつの間に取り出したのか、例の深紅の鞭を手にしており、燃やすぞお前ら! って怒気を孕ませて仁王立ち。それを見て男たちは一斉に大人しくなり、ヴィゴさんの方を見る。
「ワシは一階層から二階層へ降りる階段のひとつでトラップを見抜き、帰ってきた。他のメンバーはワシとは別の階段を見つけて降りて……串刺しになったりスライムに呑まれてじっくりと溶かされたり。別のメンバーは階段が底なし沼に変化して呑まれた。ある者はいきなり食人植物に絡め取られて、養分になった」
逃げるヴィゴさんの脳裏に直接、メンバーの最期が流されてきたという。もちろん断末魔の悲鳴や苦痛に満ちた声、骨や肉が砕かれ切り裂かれる音までついてくるというオマケ付きで。うえ、聞いているこっちまで胸糞悪い。随分といい性格をしていらっしゃるようだな、そこのダンジョンマスターとやらは。
「植物系に限らず無機質系のモンスターが浅い階層に配置され、且つ巧妙に罠が仕掛けられている。厄介なダンジョンじゃ、そこの異世界渡りの兄ちゃんが言ったように、ワシは情報を持ち帰らされたんだと思う」
「師匠……」
「それでも、お前さんたちはこのダンジョン踏破に挑むか? ワシはもう一度ここに挑戦したい、だからお前さんたちとパーティを組みたい。お前さんたちは合同でこのクエストに挑まないと、命を落とす可能性が高いぞ。これはワシからの忠告じゃ」
唯一の生き残りであるヴィゴさんの言葉は妙に俺たちにのしかかり、さっきまで漂っていた喧嘩腰の空気は見事に消え去っていた。
「――師匠がそう仰るなら、合同でクエストに挑んでやってもいいぜ」
「業腹ですが、ヴィゴさんの忠告にしたがった方が良いでしょうね」
各リーダーがそう判断したなら、話がまとまる。ヴィゴさんは獅子王の瞳に仮所属し、俺たちは合同でこのダンジョン踏破クエストに挑戦することになった。
まずは準備をしっかりするようにとの言葉を受け、潜るのは一週間後となった。
ようやく起き上がったマティアスたちを含め、俺たちに警告を含んだ口調でヴィゴさんは探索したダンジョンについて語る。蟻の巣型ダンジョンね、果実園に出現したダンジョンらしいや。しかし気になるワードがひとつ。様々なトラップっつーのが引っかかる。
「師匠、トラップとは何が」
「お前の職業である竜騎士でも、下手をすると突破できないトラップじゃ。例え竜形態になったとしても、お前の観察力不足によって命を落としかねん」
「そんなに危険なんですか」
「脳筋コンビのお前らでは、な。現にワシとパーティーを組んだ四人が全員、第二階層でトラップにより命を落とした。ワシはドワーフ故に土壌の異変を真っ先に察知し、離脱したから生きて脱出できた。あのダンジョンは手強い。様々なクラスが混じったパーティでないと、浅い階層で全滅するぞ」
沈黙が支配する。
俺たちはAクラスパーティなので、このダンジョン踏破クエストに挑戦する権利がある、あるがしかし。索敵に出たヴィゴさんのパーティが一人を残して壊滅とは。
「こんなこと言いたくないんだが、ギルドマスターってもしかしてヴィゴさんをわざと帰したんじゃないかな」
全員の視線が――いや、ヴィゴさん以外の視線が俺に集中する。ベテラン冒険者である彼の視線が俺に向けられないってことは、彼も俺と同意見なんだろう。ただ自分では認めたくなくて、他人が言ってくれてようやく自分の中で昇華したって感じだ。
「おいテメェ、師匠になんて口きいてんだ? 場合によってはお前の脳髄をここにブチまけてもいいんだぞ?」
「ほんっと下品な物言いしか出来ないんだな、北方人は。まぁ単細胞の竜騎士とはお似合いのコンビだね」
およよ、人当たりの良いエドがこんな毒舌を披露するなんて初めてだ。よっぽど獅子王の瞳とは徹底的に相性が悪いんだな。
「話が進まないから黙っていてくれない? あたしはヴィゴさんの話をもっと詳しく聞きたいんだけど」
ずっと黙っていたアガサが聞いたことのないような低音ボイスを出す。いつの間に取り出したのか、例の深紅の鞭を手にしており、燃やすぞお前ら! って怒気を孕ませて仁王立ち。それを見て男たちは一斉に大人しくなり、ヴィゴさんの方を見る。
「ワシは一階層から二階層へ降りる階段のひとつでトラップを見抜き、帰ってきた。他のメンバーはワシとは別の階段を見つけて降りて……串刺しになったりスライムに呑まれてじっくりと溶かされたり。別のメンバーは階段が底なし沼に変化して呑まれた。ある者はいきなり食人植物に絡め取られて、養分になった」
逃げるヴィゴさんの脳裏に直接、メンバーの最期が流されてきたという。もちろん断末魔の悲鳴や苦痛に満ちた声、骨や肉が砕かれ切り裂かれる音までついてくるというオマケ付きで。うえ、聞いているこっちまで胸糞悪い。随分といい性格をしていらっしゃるようだな、そこのダンジョンマスターとやらは。
「植物系に限らず無機質系のモンスターが浅い階層に配置され、且つ巧妙に罠が仕掛けられている。厄介なダンジョンじゃ、そこの異世界渡りの兄ちゃんが言ったように、ワシは情報を持ち帰らされたんだと思う」
「師匠……」
「それでも、お前さんたちはこのダンジョン踏破に挑むか? ワシはもう一度ここに挑戦したい、だからお前さんたちとパーティを組みたい。お前さんたちは合同でこのクエストに挑まないと、命を落とす可能性が高いぞ。これはワシからの忠告じゃ」
唯一の生き残りであるヴィゴさんの言葉は妙に俺たちにのしかかり、さっきまで漂っていた喧嘩腰の空気は見事に消え去っていた。
「――師匠がそう仰るなら、合同でクエストに挑んでやってもいいぜ」
「業腹ですが、ヴィゴさんの忠告にしたがった方が良いでしょうね」
各リーダーがそう判断したなら、話がまとまる。ヴィゴさんは獅子王の瞳に仮所属し、俺たちは合同でこのダンジョン踏破クエストに挑戦することになった。
まずは準備をしっかりするようにとの言葉を受け、潜るのは一週間後となった。
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