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第壱帖・白藤の情念
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「お嬢さんに相応しいと思える弟子が、わたしの弟子におりましてね。宗家に引き合わせたいと、常々思っていたんです。お嬢さんの伴侶にも、そしてわたしの代わりの指導者としても相応しいかと」
「そうですか。高瀬さんが見込んだ人ならば、間違いなさそうですね。判りました、そのお弟子さんの名前は?」
「新藤亘くんといって、お嬢さんより5歳年長の有望な若者です。20歳で師範の資格を取り、天白区の支部で指導をしています」
27歳の若き師範。実際に踊りを見てみなければなんとも言えないが、高瀬のお墨付きならばと心が傾く佳乃。そんな彼女の心境を見透かしたように、高瀬は続けた。
「性格も良い若者ですよ。お嬢さんに似合いだと、勝手に思っているんですがね」
駄目押しのひと言が、宗家の心を決めさせた。
5日後、高瀬に呼び出された亘はいきなり宗家の前で、得意演目である相生獅子を踊った。突然のことで面食らいもしたが、師範としての面目を保ち尚且つ宗家の目を釘付けとする踊りを見せつけた。
「さすが高瀬さんのお墨付きなだけはありますね、お見事です」
「宗家にお褒めいただきまして、身に余る光栄です」
きちんと礼を尽くして謝辞を述べる姿勢に、佳乃はますます好感を持った。
顔立ちは地味だが朴訥とした人柄は、自分に似て気が強めの孫娘と釣り合いが取れそうだと内心で皮算用を弾く。そこで茉莉の指導を今後は見て欲しいと、宗家から直々に依頼を受け、亘は断ることも出来ずに承諾した。しかも亘も今後は、宗家直々に指導を受けるという、破格の厚遇を受けることに。
そういう経緯を亘から聞いたとき、彼との出会いは仕組まれたもので、半ばお見合いに近い出会いだったと思い返す。それでも亘は茉莉を宗家の孫娘としてではなく、ひとりの女性として見てくれたことが、交際に繋がる決定打となった。実際、誠実な人柄はたちまち茉莉を虜にしたし、彼の指導のおかげで、舞踊家としてやっていこうという気持ちになれたのだから。
(彼がいなかったら今頃、私は家を飛び出していたでしょうね。仕事だって、私が池園家の人間だから雇ってもらえた。それくらい世間知らずの私だって判る)
亘の指導は高瀬に負けず劣らず厳しいものだったが、細やかな指導の裏に潜む私的な感情に気付いてからは、厳しさも苦痛とは思わなくなった。いつしかこの人と池園流を守っていきたいと願うようになり、自然と結婚を茉莉から申し込んだ。池園家に婿入りという形になるため、男性からプロポーズにはならなかった。
「亘さん……生きているよね? 無事だよね?」
感情が高ぶってしまった茉莉は、こぼれそうになる涙を慌ててハンカチで押さえる。目に眩しい躑躅の白い花弁が、妙に茉莉の目に焼き付く。久遠家の当主が未だに来ないことなど気にもならぬほど、茉莉は自分のことで頭がいっぱいだった。
「そうですか。高瀬さんが見込んだ人ならば、間違いなさそうですね。判りました、そのお弟子さんの名前は?」
「新藤亘くんといって、お嬢さんより5歳年長の有望な若者です。20歳で師範の資格を取り、天白区の支部で指導をしています」
27歳の若き師範。実際に踊りを見てみなければなんとも言えないが、高瀬のお墨付きならばと心が傾く佳乃。そんな彼女の心境を見透かしたように、高瀬は続けた。
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駄目押しのひと言が、宗家の心を決めさせた。
5日後、高瀬に呼び出された亘はいきなり宗家の前で、得意演目である相生獅子を踊った。突然のことで面食らいもしたが、師範としての面目を保ち尚且つ宗家の目を釘付けとする踊りを見せつけた。
「さすが高瀬さんのお墨付きなだけはありますね、お見事です」
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きちんと礼を尽くして謝辞を述べる姿勢に、佳乃はますます好感を持った。
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そういう経緯を亘から聞いたとき、彼との出会いは仕組まれたもので、半ばお見合いに近い出会いだったと思い返す。それでも亘は茉莉を宗家の孫娘としてではなく、ひとりの女性として見てくれたことが、交際に繋がる決定打となった。実際、誠実な人柄はたちまち茉莉を虜にしたし、彼の指導のおかげで、舞踊家としてやっていこうという気持ちになれたのだから。
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