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第壱帖・白藤の情念
エピローグ
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久遠家が裏から手を回したお陰で、新藤亘の行方不明事件は警察のファイルから抹消され、事件そのものがなかったことにされた。亘には、お琴に囚われていた期間の記憶は一切無かった。衰弱した身体を治し、リハビリをこなし、何とか予定通り秋に挙式した。勝手なことをしたと茉莉は反省し久遠親子を式に招待したが、馨の方はわだかまりが解けなかったために、両親に出席してもらった。
名古屋で盛大に行われた挙式と披露宴に両親は疲れ、帰宅すると泥のように眠ってしまった。翌日、昨日は疲れたから美味しいものが食べたいと我が儘を言う母に付き合い、久しぶりに親子3人で外食することになった。
「うーん、おろし蕎麦ね、わたくしは」
「俺はソースカツ丼だな」
「僕はソースカツ丼と、おろし蕎麦の大盛りで」
おろし蕎麦は越前おろし蕎麦ともいう。冷たい蕎麦と出汁に、たっぷりの大根おろしと鰹節。福井の、特に苓北地方で蕎麦と言えばこの越前おろし蕎麦と主張する者は多い。福井のソースカツ丼は御飯とソースカツのみ。秘伝のソースが染み込んだカツは美味で、福井でカツ丼というと卵綴じではなく、ソースカツ丼の事を指すことが多い。定食屋だけでなく、蕎麦屋にもメニューに存在していることが多い。
「馨さん、よくそんなに食べられるわね」
「母さんと違って、若いですから。母さんは外見は若くても、胃は正直ですね。脂ものが受け付けなくなっているんでしょう?」
言い負かされ、口惜しさで顔を歪める薫。そんな妻を愛しそうに眺める父親。
「何よ、馨さんだっていつか、脂っこいものが食べられなくなるんですからね!」
「はいはい。じゃあ今のうちに、存分に堪能します」
いつもの光景を見ながら、父親はただ笑っている。
家に帰ると、新たな依頼が舞い込んでくるだろう。
小萩の人形を直し終えた馨は、今度はどんな案件だろうかと、溜息を吐いた。
【第一部・了】 第二部へ続く
名古屋で盛大に行われた挙式と披露宴に両親は疲れ、帰宅すると泥のように眠ってしまった。翌日、昨日は疲れたから美味しいものが食べたいと我が儘を言う母に付き合い、久しぶりに親子3人で外食することになった。
「うーん、おろし蕎麦ね、わたくしは」
「俺はソースカツ丼だな」
「僕はソースカツ丼と、おろし蕎麦の大盛りで」
おろし蕎麦は越前おろし蕎麦ともいう。冷たい蕎麦と出汁に、たっぷりの大根おろしと鰹節。福井の、特に苓北地方で蕎麦と言えばこの越前おろし蕎麦と主張する者は多い。福井のソースカツ丼は御飯とソースカツのみ。秘伝のソースが染み込んだカツは美味で、福井でカツ丼というと卵綴じではなく、ソースカツ丼の事を指すことが多い。定食屋だけでなく、蕎麦屋にもメニューに存在していることが多い。
「馨さん、よくそんなに食べられるわね」
「母さんと違って、若いですから。母さんは外見は若くても、胃は正直ですね。脂ものが受け付けなくなっているんでしょう?」
言い負かされ、口惜しさで顔を歪める薫。そんな妻を愛しそうに眺める父親。
「何よ、馨さんだっていつか、脂っこいものが食べられなくなるんですからね!」
「はいはい。じゃあ今のうちに、存分に堪能します」
いつもの光景を見ながら、父親はただ笑っている。
家に帰ると、新たな依頼が舞い込んでくるだろう。
小萩の人形を直し終えた馨は、今度はどんな案件だろうかと、溜息を吐いた。
【第一部・了】 第二部へ続く
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