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1章
前世の記憶と癒しの魔法1
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カタリーナに人生の転機が訪れたのは5歳の時だ。5歳で人生の転機など仰々しいと思うかもしれないが間違いなくカタリーナが生まれ変わった日だ。
5歳の誕生日、カタリーナは流行り病にかかった。その病は国内でも多くの死者を出した。特効薬は存在せず、ただ本人の体力に任せるしかない病だった。熱に浮かされた中カタリーナが夢で見たのは前世の記憶だった。その記憶は楽しいものばかりではなく、決まって最後には涙を流す事になった。熱は5日程で下がったが、それでもカタリーナが目覚めることがなかったのは、前世の記憶を取り戻した影響があったのかもしれない。病と前世の記憶と格闘を続け、何日も経過し、代わる代わる医者や侍女が部屋を出入りする。両親も部屋を訪れ涙する様子が何度もみられたが、それにカタリーナが反応する事はなかった。
熱が下がってからさらに1週間が経過した頃カタリーナは目を開けた。前世の記憶と今世の記憶が入り混じる中最初にカタリーナの目に入ったのは広い広いベッドの天蓋だった。目覚めたカタリーナに気付いた侍女は冷静に
「お医者様と、奥様を呼んで参ります」
と一言述べて部屋を後にする。そんな侍女を見ながらカタリーナは
(呼びに行くより先に私に水を飲ませてほしかったなー)
などと他人事の様に考えていた。夢の中での前世の記憶と5歳までの記憶が反芻する中、少しでも状況を整理しようとしていると廊下を慌ただしく走る音が聞こえてくる。公爵家ではまず聞かれる事のない音であるが、病で床にふせていた一人娘が目覚めたのだから仕方のない事だろう。扉の蝶番が外れるのではないかという勢いで開いた扉の向こうに見えたのは涙で目を真っ赤に腫らせた母と憔悴しきった父の姿だった。父は国政に携わる仕事をしておりこんな日が高い時間に家にいる事はない。不思議に思ったカタリーナがながなぜここにいるのか声を出そうとするがかすれて声が出ない。あとから遅れて入ってきた主治医が
「声が出にくいのですね。少し水をお飲みください」と吸い飲みに入れた水を渡してくれた。水を飲んだカタリーナはかすれながらも声を出すことができる様になる。そこでカタリーナは流行り病にかかり2週間近く意識がない状態で眠り続けていたことを知った。一人娘がその状態で仕事にならなかった父は国王から休みをもらっていたらしい。熱もすっかり下がり、意識もしっかりしていたため大丈夫だろうとの診断を受け、滋養強壮を高めるための茶色のドロリとした謎の飲み物を飲んだ後また休むことになった。
「マズイ・・・」一人になった部屋で呟いた声は、思いの外響いていた。
カタリーナは前世で流行りだった異世界転生・異世界転移モノの小説はいくつか読んだことがあった。だが、まさか自分の身に起こるとは思わなかった。ここで問題なのはカタリーナの立ち位置だ。悪役令嬢なのかヒロインなのかはたまた関係のない世界なのか。今の所聞き覚えのある名前はないのでカタリーナの知る中での該当作品はないと思うが中にはモブ転生からのトラブル巻き込まれなどがあるので油断はできない。カタリーナは頭の中で色々考えてみるがやれる事は何も思い浮かばなかったため諦めて寝ることにした。これは前世からの性格の影響だろう。カタリーナは無駄な事はしない主義であり諦めも非常に早いのだ。とりあえず寝て体力を戻す。全てはそこからだ。
それから、さらに2週間ほど経ち体はすっかり元どおりとなった。今まで行っていた魔力制御や勉学も以前と同じ様に行っている。・・・以前と同じ様に行っていると言えば少し語弊があるかもしれない。というのも、記憶が戻る前のカタリーナは色々な理由をつけてそれらをサボっていたからだ。
カタリーナの住んでいる国はオリオール王国、他国には聖女の国とも呼ばれている。それは数百年に一度異世界から聖女がやってくることが由来となっている。聖女は唯一の聖魔法、癒しの力の持ち主であり国王の妃となり国に安定をもたらしてくれると言われている。しかし、最後に聖女が現れてから300年以上新たな聖女は現れていなかった。
カタリーナはそんな国のお公爵の令嬢をして生をうけた。生まれてすぐの魔力検査では公爵家特有の水魔法の使い手であることが分かり、魔力量も多かった。水魔法は他の魔法と比べても便が良い。カタリーナは魔力量が多いことから、将来干ばつや水害に対応できるほどの魔法使いになるのではと周囲に期待されたのだ。公爵家の一人娘であり、そんな期待を背負うことになれば、チヤホヤしてくれる大人はたくさんいる。というより周りにはチヤホヤしてくれる大人しか居なかった。そんな環境で育てばたったの5年、されど5年。癇癪持ちのわがまま娘のできあがりだ。それもただのわがまま娘いではない。お貴族様の中でも公爵令嬢と言う身分を盾にしてのわがままだ。干ばつも水害の意味もよく分かっていない状態でも周りから聞きかじった言葉を使いながら威張り散らすのは一人前。しかし、水魔法など一度も使えた試しはない。魔力量が多い分コントロールが難しくなる。そのため、カタリーナは魔力制御の練習を自然とサボるようになった。我慢という最低限の感情のコントロールも出来ず、年齢相応の教育も習得できていない、期待されている魔力は使えないような令嬢には媚を売る以外の用途はなく、その必要がない人間からするとただの爆弾娘でしかなかった。それが証拠に自らカタリーナに近づいてくるのは公爵家の恩恵を少しでも受けようと耳障りの良い言葉を並べる貴族だけであり、仕事以外で使用人は誰一人として近づこうとしなかった。
病から回復し、前世の記憶が戻ったことでカタリーナは自身の行動を省みることができるようになっていた。今までサボっていた勉強に取り組むようになったが、そんなカタリーナを使用人達は怪訝な目で見てくる。
「高熱のせいでおかしくなった」「どうせいつもの気まぐれ」「容姿だけ同じの別人」など影で好き勝手に言われているようだ。実際は同一人物であり、前世の記憶を思い出したことで自身の黒歴史を少しでも塗り替えようと奮闘していただけなのだが、一度着いてしまった印象を払拭するのは難しい。カタリーナは自分が蒔いた種なのだからと諦めて収穫するしかった。
そうは思っても両親にだけ「自分の子どもなんだからちゃんと諌めろよ」と物申したい気持ちでいっぱいだ。そんなこんなで珍獣を見るような視線に耐えながら今日もカタリーナは魔力制御に取り組むのだった。
5歳の誕生日、カタリーナは流行り病にかかった。その病は国内でも多くの死者を出した。特効薬は存在せず、ただ本人の体力に任せるしかない病だった。熱に浮かされた中カタリーナが夢で見たのは前世の記憶だった。その記憶は楽しいものばかりではなく、決まって最後には涙を流す事になった。熱は5日程で下がったが、それでもカタリーナが目覚めることがなかったのは、前世の記憶を取り戻した影響があったのかもしれない。病と前世の記憶と格闘を続け、何日も経過し、代わる代わる医者や侍女が部屋を出入りする。両親も部屋を訪れ涙する様子が何度もみられたが、それにカタリーナが反応する事はなかった。
熱が下がってからさらに1週間が経過した頃カタリーナは目を開けた。前世の記憶と今世の記憶が入り混じる中最初にカタリーナの目に入ったのは広い広いベッドの天蓋だった。目覚めたカタリーナに気付いた侍女は冷静に
「お医者様と、奥様を呼んで参ります」
と一言述べて部屋を後にする。そんな侍女を見ながらカタリーナは
(呼びに行くより先に私に水を飲ませてほしかったなー)
などと他人事の様に考えていた。夢の中での前世の記憶と5歳までの記憶が反芻する中、少しでも状況を整理しようとしていると廊下を慌ただしく走る音が聞こえてくる。公爵家ではまず聞かれる事のない音であるが、病で床にふせていた一人娘が目覚めたのだから仕方のない事だろう。扉の蝶番が外れるのではないかという勢いで開いた扉の向こうに見えたのは涙で目を真っ赤に腫らせた母と憔悴しきった父の姿だった。父は国政に携わる仕事をしておりこんな日が高い時間に家にいる事はない。不思議に思ったカタリーナがながなぜここにいるのか声を出そうとするがかすれて声が出ない。あとから遅れて入ってきた主治医が
「声が出にくいのですね。少し水をお飲みください」と吸い飲みに入れた水を渡してくれた。水を飲んだカタリーナはかすれながらも声を出すことができる様になる。そこでカタリーナは流行り病にかかり2週間近く意識がない状態で眠り続けていたことを知った。一人娘がその状態で仕事にならなかった父は国王から休みをもらっていたらしい。熱もすっかり下がり、意識もしっかりしていたため大丈夫だろうとの診断を受け、滋養強壮を高めるための茶色のドロリとした謎の飲み物を飲んだ後また休むことになった。
「マズイ・・・」一人になった部屋で呟いた声は、思いの外響いていた。
カタリーナは前世で流行りだった異世界転生・異世界転移モノの小説はいくつか読んだことがあった。だが、まさか自分の身に起こるとは思わなかった。ここで問題なのはカタリーナの立ち位置だ。悪役令嬢なのかヒロインなのかはたまた関係のない世界なのか。今の所聞き覚えのある名前はないのでカタリーナの知る中での該当作品はないと思うが中にはモブ転生からのトラブル巻き込まれなどがあるので油断はできない。カタリーナは頭の中で色々考えてみるがやれる事は何も思い浮かばなかったため諦めて寝ることにした。これは前世からの性格の影響だろう。カタリーナは無駄な事はしない主義であり諦めも非常に早いのだ。とりあえず寝て体力を戻す。全てはそこからだ。
それから、さらに2週間ほど経ち体はすっかり元どおりとなった。今まで行っていた魔力制御や勉学も以前と同じ様に行っている。・・・以前と同じ様に行っていると言えば少し語弊があるかもしれない。というのも、記憶が戻る前のカタリーナは色々な理由をつけてそれらをサボっていたからだ。
カタリーナの住んでいる国はオリオール王国、他国には聖女の国とも呼ばれている。それは数百年に一度異世界から聖女がやってくることが由来となっている。聖女は唯一の聖魔法、癒しの力の持ち主であり国王の妃となり国に安定をもたらしてくれると言われている。しかし、最後に聖女が現れてから300年以上新たな聖女は現れていなかった。
カタリーナはそんな国のお公爵の令嬢をして生をうけた。生まれてすぐの魔力検査では公爵家特有の水魔法の使い手であることが分かり、魔力量も多かった。水魔法は他の魔法と比べても便が良い。カタリーナは魔力量が多いことから、将来干ばつや水害に対応できるほどの魔法使いになるのではと周囲に期待されたのだ。公爵家の一人娘であり、そんな期待を背負うことになれば、チヤホヤしてくれる大人はたくさんいる。というより周りにはチヤホヤしてくれる大人しか居なかった。そんな環境で育てばたったの5年、されど5年。癇癪持ちのわがまま娘のできあがりだ。それもただのわがまま娘いではない。お貴族様の中でも公爵令嬢と言う身分を盾にしてのわがままだ。干ばつも水害の意味もよく分かっていない状態でも周りから聞きかじった言葉を使いながら威張り散らすのは一人前。しかし、水魔法など一度も使えた試しはない。魔力量が多い分コントロールが難しくなる。そのため、カタリーナは魔力制御の練習を自然とサボるようになった。我慢という最低限の感情のコントロールも出来ず、年齢相応の教育も習得できていない、期待されている魔力は使えないような令嬢には媚を売る以外の用途はなく、その必要がない人間からするとただの爆弾娘でしかなかった。それが証拠に自らカタリーナに近づいてくるのは公爵家の恩恵を少しでも受けようと耳障りの良い言葉を並べる貴族だけであり、仕事以外で使用人は誰一人として近づこうとしなかった。
病から回復し、前世の記憶が戻ったことでカタリーナは自身の行動を省みることができるようになっていた。今までサボっていた勉強に取り組むようになったが、そんなカタリーナを使用人達は怪訝な目で見てくる。
「高熱のせいでおかしくなった」「どうせいつもの気まぐれ」「容姿だけ同じの別人」など影で好き勝手に言われているようだ。実際は同一人物であり、前世の記憶を思い出したことで自身の黒歴史を少しでも塗り替えようと奮闘していただけなのだが、一度着いてしまった印象を払拭するのは難しい。カタリーナは自分が蒔いた種なのだからと諦めて収穫するしかった。
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