私が聖女になった時(旧:聖女の国)

海栗

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1章

それぞれの想い1

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エヴァトリスが7歳になってからは同年代の貴族令嬢とのお茶会が王宮で行われるようになった。程度は2~4ヶ月に1回。頻度の多いものではなかったがエヴァトリスにとっては意義を感じるものではなかったらしく、よく不満を漏らしていた。10歳になった頃には最初の挨拶のみ行い、すぐに退室してしまう事も多くなったようだ。というのも、カタリーナ自身はそのお茶会には参加していないため王妃から教えてもらった情報だ。「少しでもパイプをつなぐため」「社交の場に慣れるため」などその都度言い聞かせるが納得する様子はなく「媚びて来るだけの者達と触れあい何を学べというのか」と逆に返して来る始末。そのため「カタリーナ嬢も望んでいる事だ」と国王が話をしてしまったらしい。小さい頃からの付き合いによる刷り込み効果なのか比較的カタリーナの言うことは聞く、それを期待しての言葉だったようだがこればかりは裏目に出た。それを聞いたエヴァトリスは何を思ったのか先触れもなく馬車で公爵家にやって来た。


「お茶会はカタリーナが望んだ事だと言われた。私は、貴女に近づく男性がいたら嫌な気分になるがカタリーナは違うのか?」屋敷に着くなり詰め寄って来る。出迎え先の玄関で話す内容でもないためすぐに応接室に案内するか。案内をしながら何と返事をすれば良いかカタリーナは悩む。流石に10歳の少年に「側室候補を選んで欲しい」などとは言えない。応接室に入りお茶を準備した侍女が退室するとまたすぐに質問される。
「お茶会はカタリーナが望んだ事だと言われた。私は、貴女に近づく男性がいたら嫌な気分になるがカタリーナは違うのか?」
一言一句変わらぬ言葉に苦笑いが漏れた。
「色々な方と触れる事で、視野を広く持って欲しのです。」
無難な回答をしてみるが、ある程度予想していたかのように間髪入れず返事が帰って来る。
「それであれば、男女同じくらいの人数とし、年齢の幅も持たせるべきだ。また、来るのは高位貴族ばかり。身分を蔑ろにしろというつもりはないがそれでは偏った話が多くなるのではないか?」
やはりエヴァトリスは聡い子だ。返事に困っていると
「これではお見合いをしているようではないか。カタリーナは私との婚約を解消したいのか?それとも側室を迎えろというのか?」
カタリーナはいつも浮かべていた笑みが凍りついたのが自分でも分かった。その瞬間エヴァトリスの顔が驚きの表情になりすぐに歪んだ笑みを浮かべた。
「分かった。もういい。急に邪魔をして悪かった」
それだけ言いエヴァトリスは部屋を出て行った。
カタリーナは慌てて後を追ったが、何と声をかけて良いか分からず、結局無言で馬車を見送る事になった。

そして翌日、王妃教育の際にカタリーナは王妃と会い昨日の話をするに至ったのだ。話しながらもカタリーナ自身がエヴァトリスくがまだ10歳だと侮っていた事を痛感させられた。それは話を聞いた王妃も同じだったようだ。そこで王妃と話し合ったのは今後のお茶会についてだ。本人にその気がないのであれば、今行うのは悪手になりかねない。また時期を見て再開するものとして、一時的に頻度を控えるか中止にしても良いのではないかという事だった。カタリーナが申し出た話ではあったが、今回のエヴァトリスの反応を見るとカタリーナはこれ以上関わらない方が良いと判断された。そして、これ以降は王と王妃に任せることとなった。

結果としてはお茶会は同じペースでの継続となった。そして、令嬢への対応も柔らかいものになった。今までは素っ気なく必要な返事のみ、聞こえなかったふりをして返事をせずに立ち去る事も多かったエヴァトリスが足を止めて会話をする、会話中笑みを浮かべるだけでなく世辞まで言うようになった。これに喜んだのは年頃の令嬢を持つ貴族達だった。令嬢達も頬を染め浮き足立つよう一生懸命に会話をしている。気をよくした高位貴族の親達は王宮に用がある時に娘を連れて来て殿下との時間を求めるようになった。王妃教育で週に数回王宮に行くことのあるカタリーナは、廊下で貴族令嬢と談笑する様子、王宮の庭園を案内する様子を見るようになった。年齢のわりに背の高い殿下は年頃の着飾った令嬢と並ぶと番いの人形のように美しかった。カタリーナとでは身長差から、どうしても年の離れた姉と弟にしか見えない。他の女性と穏やかに過ごす殿下をみると嬉しい思いと、少しの寂しさが浮かんだ。
「弟離れの時期ね」
カタリーナの呟くような声は風に乗って消えて行った。

エヴァトリスはお茶会での面倒を起こすことがなくなった。しかし、その状況を不安を感じたのは国王だった。それまでお茶会や令嬢達との触れ合いに否定的だったエヴァトリスが急に態度を変えたからだ。それカタリーナとの話があった翌日からだ。国王が態度の変化について何度か問うが返事はいつも同じものだった
「皇子として求められているのなら、それを全うします」
エヴァトリスは一言述べるだけで、話を終わりにするように立ち去ってしまうため、本音を聞く事は叶わない。その影響なのか最近では表情も読めなくなってきたらしい。それは将来国をまとめる者としては喜ばしい事であるかもしれないが、家族としては悲しい事だった。


カタリーナに対するエヴァトリス態度は変化が見られなかった。令嬢との関係が良くなっていることを噂で知り、少しずつ周りの女性にも興味が出てきたと感じた程度である。月1回のお茶会は変わらずに続いているし会えば穏やかな笑顔を見せてくれる。ただ、その笑顔が作り物なのか、心からの笑顔なのか今のカタリーナには判断できなかった。
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