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1章
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年月は穏やかに過ぎエヴァトリスは15歳、カタリーナは23歳となった。貴族令嬢としては行き遅れであるが、こればかりはどうしようもなくあと3年待たなくてはいけない。この頃になると王妃教育はひと段落し、王宮に行くのは月1回ほどで王妃と国政に関する問答をしたり、王妃主催のお茶会の手伝いに行く程度となった。
エヴァトリスとの定期的なお茶会も月1回程度であるが変わらず続き良好な関係を築いている。エヴァトリスはいつの間にか目線がカタリーナより上となり並んで居ても姉弟に見られることはなくなった。穏やかに過ごすエヴァトリスとのお茶会はいつの間にかカタリーナの好きな時間となっていた。相変わらずエヴァトリスは笑顔を浮かべているが、何を考えているのかは分からない。カタリーナは、同じように少しでもこの時間を好んでくれていれば嬉しいと思うばかりだった。
王妃教育がひと段落つき時間の余裕が増えたため街を見たり、孤児院の慰問に向かったり、時には教会に行き聖魔法を学ぶ事もあった。相変わらず魔力量は少ないが、擦り傷程度であれば魔力を使っての治療ができるようになった。本来なら、この程度の魔力では聖女とは間違っても言えない状況であるが、聖魔法が使えるだけで周りは聖女扱いをしてくる。慰問先の孤児院で転んだ子どもの怪我を直した時など子ども達にキラキラした目で見られ囲まれ居た堪れない気持ちになった。だが、周りを見て今後に想いを馳せる時間は楽しかった。孤児院の環境を改善するにはどうすれば良いか、その前に孤児の子どもが増えない政策が必要?となると国民の生活の安定。うーん。平民の教育環境も上げたいし、この国には魔力だってあるんだからそれを上手く使えないかしら・・・、考えだすとキリがないが楽しい時間だった。
ある、お茶会の時カタリーナがそんな話をエヴァトリスにしてみた。驚いた表情の後に破顔して
「カタリーナが私と同じ方向を向いていてくれることが嬉しいよ。きっとこの国はもっとよい国になるね」
と言われた。何時もの微笑みも美しいが、今日の破顔は格別だった。その顔を見たカタリーナ顔が赤くなったのを自覚せずにはいられなかった。思わず言葉が出ずに口をパクパクさせていると
「カタリーナ、耳まで真っ赤だよ」
とクスクス笑われてしまった。カタリーナの中でエヴァトリスはずっと子どもで、弟だった。エヴァトリスはいつの間にか男性への階段を上がっていたのだろう。思わず顔を伏せ
「あまりからかわないで下さい」
とだけ小さな声で話した。
「ごめん、ごめん」
変わらずクスクスと笑いながら話すエヴァトリスに反省の色は見られないが、その日は明らかに機嫌よく声を出してわらっていた。
いつの間にか予定していたお茶会の時間は遠に過ぎていたらしく、護衛が申し訳なさそうに
「エヴァトリス殿下、申し訳ありませんがそろそろお時間が・・・」
と声をかけてきた。エヴァトリスがそちらに顔を向けると護衛は表情をかたくし、みるみる表情が青ざめていく。殿下の表情が私からは見えずに不安になる。
「気付かず、長い時間お引止めし申し訳ありませんでした。」
カタリーナは慌てて立ち上がり声をかける。
「大丈夫だよ。私も楽しくて思わず時間を忘れてしまった」
と何時もの笑顔で声をかけられた。何時もの表情にホッとすると共に、顔を青くした護衛の事が気になった。壁際で待機していた護衛はそのまま動く様子がなく冷や汗をかいている。体調が悪いのか心配になったカタリーナはエヴァトリスに声をかける。
「すいません。少し前を失礼します」
カタリーナは席を離れ顔色の悪い護衛に歩み寄り声をかける。
「大丈夫ですか?お仕事中とは思いますがお加減が悪いのでしたら少し休んで行かれますか?」と声をかけ、白いレースのハンカチを差し出しす。エヴァトリスの護衛という重要な仕事で来ているのだから本来は許される事ではないが、分け隔てなく優しい彼なら許してくれるだろう。また、酷い体調不良であれば「不足の事態の際に足手まといとなる可能性がある」など適当な理由をつける事も可能だ。カタリーナは護衛の目の前に立っているが、微妙に視線が合わない。その護衛の視線はカタリーナの後ろに向けられているのだ。さらに顔を青くし汗を流すが、護衛はハンカチを受け取る様子を見せない。護衛を放って置けなくなったカタリーナは、淑女としてふさわしい行為ではない事を十分承知の上で受け取られる事のないハンカチで汗を拭おうと腕を伸ばした。しかし、そのハンカチは護衛に届く事はなく、いつの間にか後ろから近づいていたエヴァトリスに手首ごと捕まれ、それ以上動かす事は出来なくなった。
「殿下?」
声をかけるが返事はなく、部屋の空気が重い。後にいるエヴァトリスの表情を伺う事は出来ないが、周りの使用人に目を向けるとどの者たちも表情が硬くなっている。正面の護衛は冷や汗をかきながら震えている。何かしてしまったのか不安になりながらも考えるがカタリーナには思い当たることがない。不穏な空気の中誰も口を開かない状態が続く。しばらく無言の状態が続くと
「カタリーナは・・・」
エヴァトリスが小さな声で話し始めたが、それは部屋をノックする音により遮られることになる。
「門の正面に王家の門の馬車があったけど、エヴァトリス殿下居る?次のお茶会のことで相談したいことがあるんだけど」
返事をする前に声をかけながら入ってきたのは弟のルルーシュだった。エヴァトリスとの付き合いが長いせいか気安い言葉遣いで関わっている。両親が言葉を矯正しようとした時もあったが、エヴァトリス自身の希望もあり公の場以外はこの様な話し方だ。だが、ノックの返事をもらう前に開けるの感心しない。
「返事を受けてからドアは開ける様にしなさい」
カタリーナが軽く咎める様に声をかけると相変わらずの軽口で返事が帰ってくる。
「自分の家なんだから、多めに見てよ。そんなことより・・・何?この空気、酷いよ。殿下も酷い顔してるし姉さん何やったのさ」
カタリーナ自身は護衛の心配をしただけのつもりである。この状況の説明についてはカタリーナも誰かに求めたいくらいだ。
そして、エヴァトリスに早く手首を離してもらいたいとも思っている。しかし、何が原因かも分からず、居心地の悪くなった部屋でおいそれと話し出し、自分の希望を伝えるほどカタリーナの神経は図太くない。持って生まれた性格なのか、前世の日本人根性がそうさせるのかカタリーナは静かに他に紛れることを選ぶ。時々だが、物怖じせずに声を掛けられるルルーシュの性格がある意味羨ましくなる。
「なんでもないよ。護衛の顔色が悪いのをカタリーナが心配してくれたんだよ「
。でも、彼の事は私に任せて。体調も悪そうだし、帰りは馬ではなく一緒に馬車に乗ってもらうよ。それにうちの護衛だからね。体調管理も私の責だから。君はどうだい?一緒に帰れそうかい?」
手首は離してもらえたが、変わらず後ろに立ったままの会話だ。いつもの優しげな声にホッとするが、周囲の表情は硬いままだ。
「は・・・はい。い、今すぐにで・・も、に戻りたく、思います」
問われた護衛は、首が取れるのではないかと思う勢いで上下に首を降りまくっている。首をふりすぎて言葉がうまく出ていないがそこまで言う者を止める理由はない。私に病気の人の治療はできない。魔力が足りないからだ。だが治癒を願う事は出来る。護衛の左手を取り小指の先に口付ける。そのあと相手の左手を両手で包みながら目を瞑りこう言うのだ
「貴方に祝福を」
姿勢を戻し
「早くよくなることを願っています」
と声をかける。これはカタリーナが神殿で教えてもらった治癒の祈りだ。何もしないよりはと思い行なったが、部屋が静まりかえっている。一瞬目の前の護衛の顔色が赤くなった気もしたがすぐに青くなった。むしろ祈りを行う前よりも悪くなった気がする。
「カタリーナ・・・」
今まで聞いた事がないような冷たい声を出したのはカタリーナの後ろにいたエヴァトリスだった。
エヴァトリスとの定期的なお茶会も月1回程度であるが変わらず続き良好な関係を築いている。エヴァトリスはいつの間にか目線がカタリーナより上となり並んで居ても姉弟に見られることはなくなった。穏やかに過ごすエヴァトリスとのお茶会はいつの間にかカタリーナの好きな時間となっていた。相変わらずエヴァトリスは笑顔を浮かべているが、何を考えているのかは分からない。カタリーナは、同じように少しでもこの時間を好んでくれていれば嬉しいと思うばかりだった。
王妃教育がひと段落つき時間の余裕が増えたため街を見たり、孤児院の慰問に向かったり、時には教会に行き聖魔法を学ぶ事もあった。相変わらず魔力量は少ないが、擦り傷程度であれば魔力を使っての治療ができるようになった。本来なら、この程度の魔力では聖女とは間違っても言えない状況であるが、聖魔法が使えるだけで周りは聖女扱いをしてくる。慰問先の孤児院で転んだ子どもの怪我を直した時など子ども達にキラキラした目で見られ囲まれ居た堪れない気持ちになった。だが、周りを見て今後に想いを馳せる時間は楽しかった。孤児院の環境を改善するにはどうすれば良いか、その前に孤児の子どもが増えない政策が必要?となると国民の生活の安定。うーん。平民の教育環境も上げたいし、この国には魔力だってあるんだからそれを上手く使えないかしら・・・、考えだすとキリがないが楽しい時間だった。
ある、お茶会の時カタリーナがそんな話をエヴァトリスにしてみた。驚いた表情の後に破顔して
「カタリーナが私と同じ方向を向いていてくれることが嬉しいよ。きっとこの国はもっとよい国になるね」
と言われた。何時もの微笑みも美しいが、今日の破顔は格別だった。その顔を見たカタリーナ顔が赤くなったのを自覚せずにはいられなかった。思わず言葉が出ずに口をパクパクさせていると
「カタリーナ、耳まで真っ赤だよ」
とクスクス笑われてしまった。カタリーナの中でエヴァトリスはずっと子どもで、弟だった。エヴァトリスはいつの間にか男性への階段を上がっていたのだろう。思わず顔を伏せ
「あまりからかわないで下さい」
とだけ小さな声で話した。
「ごめん、ごめん」
変わらずクスクスと笑いながら話すエヴァトリスに反省の色は見られないが、その日は明らかに機嫌よく声を出してわらっていた。
いつの間にか予定していたお茶会の時間は遠に過ぎていたらしく、護衛が申し訳なさそうに
「エヴァトリス殿下、申し訳ありませんがそろそろお時間が・・・」
と声をかけてきた。エヴァトリスがそちらに顔を向けると護衛は表情をかたくし、みるみる表情が青ざめていく。殿下の表情が私からは見えずに不安になる。
「気付かず、長い時間お引止めし申し訳ありませんでした。」
カタリーナは慌てて立ち上がり声をかける。
「大丈夫だよ。私も楽しくて思わず時間を忘れてしまった」
と何時もの笑顔で声をかけられた。何時もの表情にホッとすると共に、顔を青くした護衛の事が気になった。壁際で待機していた護衛はそのまま動く様子がなく冷や汗をかいている。体調が悪いのか心配になったカタリーナはエヴァトリスに声をかける。
「すいません。少し前を失礼します」
カタリーナは席を離れ顔色の悪い護衛に歩み寄り声をかける。
「大丈夫ですか?お仕事中とは思いますがお加減が悪いのでしたら少し休んで行かれますか?」と声をかけ、白いレースのハンカチを差し出しす。エヴァトリスの護衛という重要な仕事で来ているのだから本来は許される事ではないが、分け隔てなく優しい彼なら許してくれるだろう。また、酷い体調不良であれば「不足の事態の際に足手まといとなる可能性がある」など適当な理由をつける事も可能だ。カタリーナは護衛の目の前に立っているが、微妙に視線が合わない。その護衛の視線はカタリーナの後ろに向けられているのだ。さらに顔を青くし汗を流すが、護衛はハンカチを受け取る様子を見せない。護衛を放って置けなくなったカタリーナは、淑女としてふさわしい行為ではない事を十分承知の上で受け取られる事のないハンカチで汗を拭おうと腕を伸ばした。しかし、そのハンカチは護衛に届く事はなく、いつの間にか後ろから近づいていたエヴァトリスに手首ごと捕まれ、それ以上動かす事は出来なくなった。
「殿下?」
声をかけるが返事はなく、部屋の空気が重い。後にいるエヴァトリスの表情を伺う事は出来ないが、周りの使用人に目を向けるとどの者たちも表情が硬くなっている。正面の護衛は冷や汗をかきながら震えている。何かしてしまったのか不安になりながらも考えるがカタリーナには思い当たることがない。不穏な空気の中誰も口を開かない状態が続く。しばらく無言の状態が続くと
「カタリーナは・・・」
エヴァトリスが小さな声で話し始めたが、それは部屋をノックする音により遮られることになる。
「門の正面に王家の門の馬車があったけど、エヴァトリス殿下居る?次のお茶会のことで相談したいことがあるんだけど」
返事をする前に声をかけながら入ってきたのは弟のルルーシュだった。エヴァトリスとの付き合いが長いせいか気安い言葉遣いで関わっている。両親が言葉を矯正しようとした時もあったが、エヴァトリス自身の希望もあり公の場以外はこの様な話し方だ。だが、ノックの返事をもらう前に開けるの感心しない。
「返事を受けてからドアは開ける様にしなさい」
カタリーナが軽く咎める様に声をかけると相変わらずの軽口で返事が帰ってくる。
「自分の家なんだから、多めに見てよ。そんなことより・・・何?この空気、酷いよ。殿下も酷い顔してるし姉さん何やったのさ」
カタリーナ自身は護衛の心配をしただけのつもりである。この状況の説明についてはカタリーナも誰かに求めたいくらいだ。
そして、エヴァトリスに早く手首を離してもらいたいとも思っている。しかし、何が原因かも分からず、居心地の悪くなった部屋でおいそれと話し出し、自分の希望を伝えるほどカタリーナの神経は図太くない。持って生まれた性格なのか、前世の日本人根性がそうさせるのかカタリーナは静かに他に紛れることを選ぶ。時々だが、物怖じせずに声を掛けられるルルーシュの性格がある意味羨ましくなる。
「なんでもないよ。護衛の顔色が悪いのをカタリーナが心配してくれたんだよ「
。でも、彼の事は私に任せて。体調も悪そうだし、帰りは馬ではなく一緒に馬車に乗ってもらうよ。それにうちの護衛だからね。体調管理も私の責だから。君はどうだい?一緒に帰れそうかい?」
手首は離してもらえたが、変わらず後ろに立ったままの会話だ。いつもの優しげな声にホッとするが、周囲の表情は硬いままだ。
「は・・・はい。い、今すぐにで・・も、に戻りたく、思います」
問われた護衛は、首が取れるのではないかと思う勢いで上下に首を降りまくっている。首をふりすぎて言葉がうまく出ていないがそこまで言う者を止める理由はない。私に病気の人の治療はできない。魔力が足りないからだ。だが治癒を願う事は出来る。護衛の左手を取り小指の先に口付ける。そのあと相手の左手を両手で包みながら目を瞑りこう言うのだ
「貴方に祝福を」
姿勢を戻し
「早くよくなることを願っています」
と声をかける。これはカタリーナが神殿で教えてもらった治癒の祈りだ。何もしないよりはと思い行なったが、部屋が静まりかえっている。一瞬目の前の護衛の顔色が赤くなった気もしたがすぐに青くなった。むしろ祈りを行う前よりも悪くなった気がする。
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