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1章
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カタリーナが目を覚ますと、見覚えのない天井がそこにはあった。ここがどこか考えながら部屋の様子をぐるりと見回すが思い当たる部屋はない。白と金色で整えられた上品な部屋であり、明らかに質の良い調度品があった。部屋の広さとそれに見合ったサイズの大きなベッド。だが、物は必要最低限であり少し寂しい印象もある。部屋の中を失礼にならない程度に観察していると入り口で待機する侍女と目があった。見覚えのある顔ではないが、目が合うと
「お加減はいかがですか?お目覚めになられたら、エヴァトリス殿下に報告するよう指示がありましたので一度失礼したく思いますが、何か必要なものはございますか?」
侍女の言葉でカタリーナは一気に思い出した。エヴァトリスが突然に口から砂を吐きそうなほどに甘い言葉を言い始めて、帰ろうとしたところでさらに後ろからも抱きしめられた・・・そこからの記憶がないって事は、きっと許容範囲を超えてそのまま気を失ったのだろう。確かに前世込みで色恋沙汰でこんな事を言われたこともなければ、想像したこともなかった。それを自覚すると、今までの枯れ具合が嫌になる。今世はまぁ、王子様が婚約者だったのだから仕方ないが前世は35歳まで生きて結婚して子どもも居たはずなのに経験値の低さが伺える。まぁ、そこは色んなものをオブラートに包む日本人らしいとも言えるのだろうか。
気を失った後でエヴァトリスに会うのも気まずいが、それ以上にルルーシュに会いたくない。微妙なラブシーンを目撃されてた上のブラックアウト、カタリーナの姉としての権威は失墜しただろう。まぁ、元々そこまで高くはなかったが。余所事を考えていたせいで、侍女しかいない室内は静まり返っている。心配そうに見つめる侍女には申し訳ないが、エヴァトリスに知らせて欲しくないのだ。あの流れからするとルルーシュもエヴァトリスと一緒に居るはずだ。そう、あのいやらしくにやついた笑みで・・・。何が楽しくてわざわざ晒し者にならなくてはいけないのか。だが、脱走するにしても、カタリーナはここが王宮のどの辺りか分からない。いや、それは正確ではない。何となくであるが分かる。広すぎるベッドに入り口と思われるドア以外に続き間と思われるドアが両サイドに1つづつあり、衣装部屋の扉と思われる物もある。貴賓室であれば、続き間2つは流石に多い。そして派手ではないが調度品の質の良さ。ベッドも含め公爵家よりも上のものを使っているのだろう。どうしよう、冷や汗が出てきそうだが状況確認として今自分がどこにいるかは把握しなくてはいけない。
「すみませんが、このお部屋は・・・」
どう聞けば良いか言い淀んでいると侍女が察してくれた。さすがは王宮の侍女だ。
「こちらはエヴァトリス殿下と聖女さまが将来使用される予定の寝室となります。」
少し予想はしていたが頭が痛くなった。カタリーナの思考は混沌としていた。まだ3年も先なのになぜ準備がしてあるのか、なぜ未婚なのに夫婦の部屋で寝ているのか、 殿下との執務室でのやり取りや倒れた事を含めて色々と恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい、むしろ穴を掘って入りたい。
カタリーナの戸惑いが伝わったのだろう、カタリーナの母と同じくらいの年と思われる侍女は微笑ましいようなものを見る目で
「殿下が10歳になった頃から準備を始められたのですよ。結婚式迄には全て取り揃える予定なのでまだ準備が全て整っている訳ではありませんが。それでも、殿下が貴賓室の様に皆様が休まれる場所でカタリーナ様を休ませる事は出来ないと自らこちらに運ばれたのですよ。」
もう、どこからツッコんで良いのか分からないが、現在のカタリーナの状況を見る限りエヴァトリスの近くにツッコミ役は居ないのだろう。カタリーナの思考はさらに混乱を極める。それを見ていた侍女はさらに微笑みを深くした。5年以上も前からエヴァトリスの近くにいた侍女かもしれない。だから、そんな事を知っているのだろう。何よりもその生暖かい目が辛い。思わずカタリーナは恥ずかしさから頬を赤らめてしまう。そう、断じてこれはトキメキの類ではなく純粋な羞恥からくるものだった。
しかし、恥を忍んでも今言わなくてはいけないことがある。それはエヴァトリスへの報告とどうやってやめてもらい、こっそり王宮から立ち去るかだ。いや、報告をしないという手段は不可能だろう、であれば少しでも時間を稼いでその間にどうやって帰るかの算段をつけなくていけない。
「できれば・・・もう少休みたいのですが、一人にしていただくことはできますか?」
まずは見張り(?)の侍女をどうにかしなくてはいけない。一人になれさえすれば出来ることが増えるだろう。しかし、侍女の言葉は望んだものではなかった。
「もうしわけありません。何かあれば心配なので、決して一人にはされないようきつく申しつかっております。」
上からの命令であれば、どうにも出来ない。むしろ、無茶なお願いをして申し訳なく思う。そうであれば現状カタリーナに出来る事は1つだけだ。おそらく、この侍女は今までの流れを聞いて知っているからなんともいえない視線を向けてくるのだろう。思わず倒れる直前のエヴァトリスとのやり取りを思い出してしまったカタリーナは顔に熱が集まるのを感じる。侍女の視線も嫌なものではないし悪意も感じないが恥ずかしい事この上ない。できるだけ、この侍女にはこちら側が望むように動いてもらいたい。であれば、こちらも恥を忍んで相手が望む姿を装ってみることにする。非常に恥ずかしいが、それで時間を稼ぎ対応策を立てられるのであればそれが最優先だ。
(大丈夫、私は女優、私は女優、私は女優)
心の中で3回唱えた後、恥ずかしがるように少し視線を伏せながら
「すいません、殿下と顔を会わせるのが恥ずかしくて・・・、少し気持ちを整理したいのだけど時間をもらえるかしら」
23歳の行き遅れの女が何をしていると思わなくもないが、相手の方が明らかに年上である場合は比護欲を誘う仕草は有効だろう。それに同性でもあるのだから、この消化しきれない気持ちに気付いてもらえればと欲もでる。少し涙目、そこからの上目遣いも忘れない。そんなカタリーナの努力のかいがあったのか、反応は上々だ。
「まぁ」
と嬉しそうに笑みを深めている。しかし恥を忍んでここまでやったが、結果は得られなかった。
「申し訳ありません。私がエヴァトリス殿下を呼びに行かなくても、1時間おきに様子をみにこの部屋にいらしています。ですからおそらくあと5分程度でまたいらっしゃると思います」
どうやらカタリーナの努力は無駄な行為であり、できることはこれ以上はなかったらしい。布団にもぐり寝たふりをするべく横になっているとそう時間を置かずに廊下から声が聞こえる。はっきりとは聞こえないがおそらくエヴァトリスが来たのだろう。
部屋を静かにノックス音がした後、ドアが開き声がかかった。相手はもちろんエヴァトリスだ。足音が一人分であることから、ルルーシュは一緒ではないらしい。布団を被り目を瞑ってやり過ごすためにじっとする。
「カタリーナは起きた?」
エヴァトリスの声が部屋で待機している侍女に問いかける。
「先程目を覚まされたご様子でしたが、すぐにまた横になってしまわれたので、殿下への報告は控えさせていただいておりました」
何て気の利く侍女なんだろうとエステルは思わずにいられなかった。嘘をつく訳ではないのにすぐにはエヴァトリスに会いたくないカタリーナのためにフォローまでしてくれるとは。 あとはカタリーナがこの場を上手く乗り切れば良いだけだ。ベッドに近づいてくる足音が聞こえる。そして頭まで被っていた掛物をゆっくりと外された。起きている事が気づかれないようにと願いながら目を閉じ体を硬くする。鼓動の音がやけに大きく感じ、時間の流れが遅く感じる。エヴァトリス指先がカタリーナの頬に触れ、顔のラインをなぞる。指先が顎の位置までたどり着くと離れていく指先にホッとして肩の力が抜ける。間を空けずに今度は指の腹で唇のラインを撫でる、何度か繰り返した後ゆっくりと指が口に入ってくる。慌てて歯を噛み締めてこれ以上口の中に入らないようにする。すると、無理には入ってこずに歯列を撫でるようなうごきとなる。鼓動の音が早く大きくなっていく。緊張に体を硬くしているとカタリーナの耳元にエヴァトリスの唇が触れ思わずピクリと体が揺れた。
「お加減はいかがですか?お目覚めになられたら、エヴァトリス殿下に報告するよう指示がありましたので一度失礼したく思いますが、何か必要なものはございますか?」
侍女の言葉でカタリーナは一気に思い出した。エヴァトリスが突然に口から砂を吐きそうなほどに甘い言葉を言い始めて、帰ろうとしたところでさらに後ろからも抱きしめられた・・・そこからの記憶がないって事は、きっと許容範囲を超えてそのまま気を失ったのだろう。確かに前世込みで色恋沙汰でこんな事を言われたこともなければ、想像したこともなかった。それを自覚すると、今までの枯れ具合が嫌になる。今世はまぁ、王子様が婚約者だったのだから仕方ないが前世は35歳まで生きて結婚して子どもも居たはずなのに経験値の低さが伺える。まぁ、そこは色んなものをオブラートに包む日本人らしいとも言えるのだろうか。
気を失った後でエヴァトリスに会うのも気まずいが、それ以上にルルーシュに会いたくない。微妙なラブシーンを目撃されてた上のブラックアウト、カタリーナの姉としての権威は失墜しただろう。まぁ、元々そこまで高くはなかったが。余所事を考えていたせいで、侍女しかいない室内は静まり返っている。心配そうに見つめる侍女には申し訳ないが、エヴァトリスに知らせて欲しくないのだ。あの流れからするとルルーシュもエヴァトリスと一緒に居るはずだ。そう、あのいやらしくにやついた笑みで・・・。何が楽しくてわざわざ晒し者にならなくてはいけないのか。だが、脱走するにしても、カタリーナはここが王宮のどの辺りか分からない。いや、それは正確ではない。何となくであるが分かる。広すぎるベッドに入り口と思われるドア以外に続き間と思われるドアが両サイドに1つづつあり、衣装部屋の扉と思われる物もある。貴賓室であれば、続き間2つは流石に多い。そして派手ではないが調度品の質の良さ。ベッドも含め公爵家よりも上のものを使っているのだろう。どうしよう、冷や汗が出てきそうだが状況確認として今自分がどこにいるかは把握しなくてはいけない。
「すみませんが、このお部屋は・・・」
どう聞けば良いか言い淀んでいると侍女が察してくれた。さすがは王宮の侍女だ。
「こちらはエヴァトリス殿下と聖女さまが将来使用される予定の寝室となります。」
少し予想はしていたが頭が痛くなった。カタリーナの思考は混沌としていた。まだ3年も先なのになぜ準備がしてあるのか、なぜ未婚なのに夫婦の部屋で寝ているのか、 殿下との執務室でのやり取りや倒れた事を含めて色々と恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい、むしろ穴を掘って入りたい。
カタリーナの戸惑いが伝わったのだろう、カタリーナの母と同じくらいの年と思われる侍女は微笑ましいようなものを見る目で
「殿下が10歳になった頃から準備を始められたのですよ。結婚式迄には全て取り揃える予定なのでまだ準備が全て整っている訳ではありませんが。それでも、殿下が貴賓室の様に皆様が休まれる場所でカタリーナ様を休ませる事は出来ないと自らこちらに運ばれたのですよ。」
もう、どこからツッコんで良いのか分からないが、現在のカタリーナの状況を見る限りエヴァトリスの近くにツッコミ役は居ないのだろう。カタリーナの思考はさらに混乱を極める。それを見ていた侍女はさらに微笑みを深くした。5年以上も前からエヴァトリスの近くにいた侍女かもしれない。だから、そんな事を知っているのだろう。何よりもその生暖かい目が辛い。思わずカタリーナは恥ずかしさから頬を赤らめてしまう。そう、断じてこれはトキメキの類ではなく純粋な羞恥からくるものだった。
しかし、恥を忍んでも今言わなくてはいけないことがある。それはエヴァトリスへの報告とどうやってやめてもらい、こっそり王宮から立ち去るかだ。いや、報告をしないという手段は不可能だろう、であれば少しでも時間を稼いでその間にどうやって帰るかの算段をつけなくていけない。
「できれば・・・もう少休みたいのですが、一人にしていただくことはできますか?」
まずは見張り(?)の侍女をどうにかしなくてはいけない。一人になれさえすれば出来ることが増えるだろう。しかし、侍女の言葉は望んだものではなかった。
「もうしわけありません。何かあれば心配なので、決して一人にはされないようきつく申しつかっております。」
上からの命令であれば、どうにも出来ない。むしろ、無茶なお願いをして申し訳なく思う。そうであれば現状カタリーナに出来る事は1つだけだ。おそらく、この侍女は今までの流れを聞いて知っているからなんともいえない視線を向けてくるのだろう。思わず倒れる直前のエヴァトリスとのやり取りを思い出してしまったカタリーナは顔に熱が集まるのを感じる。侍女の視線も嫌なものではないし悪意も感じないが恥ずかしい事この上ない。できるだけ、この侍女にはこちら側が望むように動いてもらいたい。であれば、こちらも恥を忍んで相手が望む姿を装ってみることにする。非常に恥ずかしいが、それで時間を稼ぎ対応策を立てられるのであればそれが最優先だ。
(大丈夫、私は女優、私は女優、私は女優)
心の中で3回唱えた後、恥ずかしがるように少し視線を伏せながら
「すいません、殿下と顔を会わせるのが恥ずかしくて・・・、少し気持ちを整理したいのだけど時間をもらえるかしら」
23歳の行き遅れの女が何をしていると思わなくもないが、相手の方が明らかに年上である場合は比護欲を誘う仕草は有効だろう。それに同性でもあるのだから、この消化しきれない気持ちに気付いてもらえればと欲もでる。少し涙目、そこからの上目遣いも忘れない。そんなカタリーナの努力のかいがあったのか、反応は上々だ。
「まぁ」
と嬉しそうに笑みを深めている。しかし恥を忍んでここまでやったが、結果は得られなかった。
「申し訳ありません。私がエヴァトリス殿下を呼びに行かなくても、1時間おきに様子をみにこの部屋にいらしています。ですからおそらくあと5分程度でまたいらっしゃると思います」
どうやらカタリーナの努力は無駄な行為であり、できることはこれ以上はなかったらしい。布団にもぐり寝たふりをするべく横になっているとそう時間を置かずに廊下から声が聞こえる。はっきりとは聞こえないがおそらくエヴァトリスが来たのだろう。
部屋を静かにノックス音がした後、ドアが開き声がかかった。相手はもちろんエヴァトリスだ。足音が一人分であることから、ルルーシュは一緒ではないらしい。布団を被り目を瞑ってやり過ごすためにじっとする。
「カタリーナは起きた?」
エヴァトリスの声が部屋で待機している侍女に問いかける。
「先程目を覚まされたご様子でしたが、すぐにまた横になってしまわれたので、殿下への報告は控えさせていただいておりました」
何て気の利く侍女なんだろうとエステルは思わずにいられなかった。嘘をつく訳ではないのにすぐにはエヴァトリスに会いたくないカタリーナのためにフォローまでしてくれるとは。 あとはカタリーナがこの場を上手く乗り切れば良いだけだ。ベッドに近づいてくる足音が聞こえる。そして頭まで被っていた掛物をゆっくりと外された。起きている事が気づかれないようにと願いながら目を閉じ体を硬くする。鼓動の音がやけに大きく感じ、時間の流れが遅く感じる。エヴァトリス指先がカタリーナの頬に触れ、顔のラインをなぞる。指先が顎の位置までたどり着くと離れていく指先にホッとして肩の力が抜ける。間を空けずに今度は指の腹で唇のラインを撫でる、何度か繰り返した後ゆっくりと指が口に入ってくる。慌てて歯を噛み締めてこれ以上口の中に入らないようにする。すると、無理には入ってこずに歯列を撫でるようなうごきとなる。鼓動の音が早く大きくなっていく。緊張に体を硬くしているとカタリーナの耳元にエヴァトリスの唇が触れ思わずピクリと体が揺れた。
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