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1章
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「殿下?どうされたんですか?」
急に現れたエヴァトリスに驚きつつ、カタリーナは質問する。
「先ほどルルーシュから神殿に行く話を聞いて驚いて追いかけてきた。先日体調を崩したばかりでここまで来ると言うからとても心配した。」
話している途中で腕の力が強くなるのを感じたため首をひねり後ろを確認するがエヴァトリスの視線はまっすぐ前を向いている。視線の先にはいつも通りの無表情を顔に貼り付けたリシャールがいた。最近スキンシップが増えたことで、後ろから抱きしめられることにも少しずつ慣れてきていたカタリーナであったが、人前ということで、一気に顔が赤くなる。それも少なくない関わりを持っている相手に見られたとあっては恥ずかしさも一入だ。
「心配おかけして申し訳ありません。体調は大丈夫ですので•••、少し離れていただいてもいいですか?ここは人目もございます。」
カタリーナの声は羞恥のあまり、尻すぼみになり、最後の方は側にいたエヴァトリスにしか聞こえなかった。小さくなっていく声が気になったのか、エヴァトリスは一度視線をカタリーナに戻した。赤い顔をしたカタリーナを見て眉を下げ、小さなため息をついた。そのまま、エステルの体の向きを変え抱きしめ直すと正面から抱き合う形となる。
「で、殿下!!」
更に顔を赤くするカタリーナの額に唇を寄せるエヴァトリス。先ほどまでリシャールに向けていたのとは異なる、とろけるような笑みを浮かべている。カタリーナは顔を赤くしながら必死に離れようと両手を動かしている。しかし、女性の力では15歳といえど、日頃から鍛えているエヴァトリス相手ではどうにもならない。人が居なければ早々に諦めるが今回の目撃者はリシャールだ。今後もお世話になる予定の人にこんなバカップルのような姿を見せたくない。いつもなら数回抵抗した後、諦めて抱きしめられているカタリーナが5分もの間抵抗を続けるのは初めての事だ。抵抗を抑え続けるエヴァトリスの表情は少しずつなくなっていくが、離れることに必死のエステルは気づくことはできない。
「私たちは婚約者だよ。このような様子を見て誰もおかしいと思う人はいないよ。カタリーナが誰を想っていてもそれは変わらないし、今後も私の側に立ち続けるしかないよ」
耳元でカタリーナにだけ聞こえる声で言葉が紡がれる。
「そんなことわかっております。婚約者であり王妃となる可能性もあるのですから、殿下が望まれる限りお側におります。だから今は少し離れてください。」
『わかっている』と言いながら何もわかっていないカタリーナに大きなため息が二つ聞こえる。ため息はエヴァトリスと後ろに控えて居るルルーシュのものだ。これ以上押し問答を続けても意味がないため抱きしめた腕を離し、片手で腰を抱く。
「これが最大の譲歩だ。また、抵抗するなら先ほどまでの姿勢に戻す」
有無を言わさずカタリーナに与えられた言葉に釈然としないまでも、抱きしめられた姿勢で居るよりましであると思いそれ以上の抵抗をやめる。
「噂通り仲が良いようで、国民として嬉しく思います。私達としても、聖女であるカタリーナ様のお体のことはとても心配しており無理はなされないよう注意しておりましたが、先日は体調を崩されたとのことで非常に申し訳なく思っておりました。ですが、学ぶ意欲の高い方ですのでこちらとしても神殿でしか学ぶことのできないことを知り、今後に生かしていただければとも思っておりました。体調にもよるかとは思いますが、いつ頃からまた神殿にいらっしゃる予定でしょうか?」
無表情にそして淡々と話すリシャールにエヴァトリスは顔を歪める。
仲は良いが想いは一方通行、カタリーナを心配しているのはエヴァトリスだけではない、個人的な独占欲で本人の意思を捻じ曲げるな、丁寧な言葉ではあるがそう思わせるには十分な言い回しだった。リシャールと比べるとエヴァトリスはまだまだ子どもであり、カタリーナの腰を抱いていない掌の拳が強く握られる。リシャールがどのような感情をカタリーナに向けているのか読むことはできないが周りから『堅物』と評されているとは思えないほど、カタリーナへの対応は柔らかい。彼は本来人をかばうことはしないし、それ以上に人との関わりを極力避ける。いつもと違うそんな彼の反応がエヴァトリスを不安にさせる。
「ありがとうございます。神殿でも気にしていただけるとこちらとしても心強く思います。しかし、体調を崩しているのは事実ですので、1ヶ月ほどは休んでもらうつもりです。それ以降こちらへ伺う時は私かルルーシュが付き添うようにさせていただきます。また体調を崩すと心配ですのでこれで失礼いたします」
返事を待たずに踵を返す。本来礼儀としてなっていないが、エヴァトリスはこれ以上自身を取りつくろえる自信がなかったのだ。
馬を走らせて神殿まで来たエヴァトリスだったが、帰りは公爵家までカタリーナを送るため一緒に馬車に乗りこんだ。馬車の中はまだ顔を赤くして俯いているカタリーナとエヴァトリス、気まずい空気に耐えきれず隅で小さくなっている侍女の3人だ。
侍女は最初「王子と同じ馬車など恐れ多くて乗れない」「辻馬車で帰る」と言い張ったが、帰りを心配するカタリーナとカタリーナからのお願いに弱いエヴァトリスに強く言う事もできるはずがない。志半ばで、馬車に乗せられる事になったが、馬車に乗り激しく後悔したのは言うまでもない。
そんな侍女を他所に、カタリーナは次にリシャールに会った時何を言えば良いか必死で考えており、エヴァトリスや侍女にまで気が回っていない。そんな心ここにあらずのカタリーナを見ていると何とも言えない不安が押し寄せて来るエヴァトリスは無意識に質問を投げかけていた。
「リシャール殿の事を考えているの?」
カタリーナが思わず視線を上げると、エヴァトリスと視線が合う。カタリーナはこんな冷たい視線を向けられることが初めてで、思わずびくりと肩を震わせた。膝の上に置いている手に力がこもりいつの間にか握りしめているがそのことに本人は気づかない。以前令嬢に絡まれた時同じような視線を向けていたが、他人に向けられているのを第三者としてみるのと、実際に自分が見られるのではこれほど違いがあるのかと感じる。同時にこれが王としての資質のある者と他者との違いなのだろうと思い知る。現在まだ15歳だと思うと末恐ろしくも思うが、同時に期待する気持ちも止められそうにない。
咎められているような視線を向けられているが、カタリーナ自身理由がわからない以上そのまま答えるしかないとい事だ。
「はい、次回伺った時にどうお話しようか考えておりました」
エヴァトリスの視線の鋭さは変わらず、カタリーナの緊張が高まる。
「リシャール殿とは別に話すことはないでしょう。それよりリシャール殿とは仲がよいの?彼が笑っているところ初めて見たよ。」
エヴァトリスは話すことがないかもしれないが、カタリーナとしては知り合いにベタベタしているところを見られたため羞恥心が半端ない。だが、このことを相談したところでどうにもならないのは明らかでありこれ以上の言葉は無意味なものに感じられる。それならば、何が原因でエヴァトリスの不況を買ったのか確かめる事が優先だろう。会話の中から探し出せればとは思うが、最近意味不明な事が多すぎて早々にサジを投げる未来しか思い浮かばない。
「私も笑った姿は今日が初めてでしたので、とても驚いております。殿下もそうだったのであれば、本当に珍しい事だったのでしょうね。いつもは、業務的なやり取りだけですのでそれほど仲が良いわけではないと思います。図々しい様ですが、魔法の性質から聖女などと言われる事もありますので、出来れば神殿の方とは仲良くなれる様努力したいと思っております。」
この答えが正解かどうか分からず、下げていた視線上げエヴァトリスの視線を盗み見ると気の抜けた様な表情で
「そうか」
とだけ呟いた。どうやら、正解の答えだったらしいが、どうしてこれが正解なのかは分からない。魔法を使うのがダメだと思っていたが神殿に行くのもダメ。リシャールの笑顔を見るのはダメだが業務連絡は良い、神官と仲よくなりたいと思うのも良い。一瞬エヴァトリスがリシャールに想いを寄せておりカタリーナにヤキモチを妬いたのかと思ったが、それなら片思いの相手に他の女性との抱擁シーンを見せる必要が分からない。ヤキモチと言う言葉に公爵家でのルルーシュの言葉が思い出される。あの時ルルーシュは『ヤキモチを妬いているから神殿に行くのを禁止した』と言わなかっただろうか。それを思い出して否定しようと思うが顔が赤くなるのを止められない。そんなカタリーナを見つめていたエヴァトリスは唐突に口を開く。
「私が怒っていた理由に何か心当たりがあったかい?」
そう静かな声で聞いてくるが、カタリーナは更に顔を赤くして視線を下げる事しか出来ない。どう答えようか悩んでいると、エヴァトリスが移動した気配がして思わず視線をあげるとカタリーナの横に腰かけたところで視線が合う。
「馬車の中でそんな顔しちゃいけないよ」
先程までの冷たい視線が嘘の様だ。エヴァトリスの冷たい視線に晒された今までの空気もいたたまれないものがあるが、違った意味で今もいたたまれない。
「ちゃんと答えてくれない唇なら、そのまま私が塞いでしまっても良いよね」
そう言いながらエヴァトリスの顔が近づいて来るのを止めるとこが出来ず、カタリーナは思わず目を強く瞑ってしまった。
急に現れたエヴァトリスに驚きつつ、カタリーナは質問する。
「先ほどルルーシュから神殿に行く話を聞いて驚いて追いかけてきた。先日体調を崩したばかりでここまで来ると言うからとても心配した。」
話している途中で腕の力が強くなるのを感じたため首をひねり後ろを確認するがエヴァトリスの視線はまっすぐ前を向いている。視線の先にはいつも通りの無表情を顔に貼り付けたリシャールがいた。最近スキンシップが増えたことで、後ろから抱きしめられることにも少しずつ慣れてきていたカタリーナであったが、人前ということで、一気に顔が赤くなる。それも少なくない関わりを持っている相手に見られたとあっては恥ずかしさも一入だ。
「心配おかけして申し訳ありません。体調は大丈夫ですので•••、少し離れていただいてもいいですか?ここは人目もございます。」
カタリーナの声は羞恥のあまり、尻すぼみになり、最後の方は側にいたエヴァトリスにしか聞こえなかった。小さくなっていく声が気になったのか、エヴァトリスは一度視線をカタリーナに戻した。赤い顔をしたカタリーナを見て眉を下げ、小さなため息をついた。そのまま、エステルの体の向きを変え抱きしめ直すと正面から抱き合う形となる。
「で、殿下!!」
更に顔を赤くするカタリーナの額に唇を寄せるエヴァトリス。先ほどまでリシャールに向けていたのとは異なる、とろけるような笑みを浮かべている。カタリーナは顔を赤くしながら必死に離れようと両手を動かしている。しかし、女性の力では15歳といえど、日頃から鍛えているエヴァトリス相手ではどうにもならない。人が居なければ早々に諦めるが今回の目撃者はリシャールだ。今後もお世話になる予定の人にこんなバカップルのような姿を見せたくない。いつもなら数回抵抗した後、諦めて抱きしめられているカタリーナが5分もの間抵抗を続けるのは初めての事だ。抵抗を抑え続けるエヴァトリスの表情は少しずつなくなっていくが、離れることに必死のエステルは気づくことはできない。
「私たちは婚約者だよ。このような様子を見て誰もおかしいと思う人はいないよ。カタリーナが誰を想っていてもそれは変わらないし、今後も私の側に立ち続けるしかないよ」
耳元でカタリーナにだけ聞こえる声で言葉が紡がれる。
「そんなことわかっております。婚約者であり王妃となる可能性もあるのですから、殿下が望まれる限りお側におります。だから今は少し離れてください。」
『わかっている』と言いながら何もわかっていないカタリーナに大きなため息が二つ聞こえる。ため息はエヴァトリスと後ろに控えて居るルルーシュのものだ。これ以上押し問答を続けても意味がないため抱きしめた腕を離し、片手で腰を抱く。
「これが最大の譲歩だ。また、抵抗するなら先ほどまでの姿勢に戻す」
有無を言わさずカタリーナに与えられた言葉に釈然としないまでも、抱きしめられた姿勢で居るよりましであると思いそれ以上の抵抗をやめる。
「噂通り仲が良いようで、国民として嬉しく思います。私達としても、聖女であるカタリーナ様のお体のことはとても心配しており無理はなされないよう注意しておりましたが、先日は体調を崩されたとのことで非常に申し訳なく思っておりました。ですが、学ぶ意欲の高い方ですのでこちらとしても神殿でしか学ぶことのできないことを知り、今後に生かしていただければとも思っておりました。体調にもよるかとは思いますが、いつ頃からまた神殿にいらっしゃる予定でしょうか?」
無表情にそして淡々と話すリシャールにエヴァトリスは顔を歪める。
仲は良いが想いは一方通行、カタリーナを心配しているのはエヴァトリスだけではない、個人的な独占欲で本人の意思を捻じ曲げるな、丁寧な言葉ではあるがそう思わせるには十分な言い回しだった。リシャールと比べるとエヴァトリスはまだまだ子どもであり、カタリーナの腰を抱いていない掌の拳が強く握られる。リシャールがどのような感情をカタリーナに向けているのか読むことはできないが周りから『堅物』と評されているとは思えないほど、カタリーナへの対応は柔らかい。彼は本来人をかばうことはしないし、それ以上に人との関わりを極力避ける。いつもと違うそんな彼の反応がエヴァトリスを不安にさせる。
「ありがとうございます。神殿でも気にしていただけるとこちらとしても心強く思います。しかし、体調を崩しているのは事実ですので、1ヶ月ほどは休んでもらうつもりです。それ以降こちらへ伺う時は私かルルーシュが付き添うようにさせていただきます。また体調を崩すと心配ですのでこれで失礼いたします」
返事を待たずに踵を返す。本来礼儀としてなっていないが、エヴァトリスはこれ以上自身を取りつくろえる自信がなかったのだ。
馬を走らせて神殿まで来たエヴァトリスだったが、帰りは公爵家までカタリーナを送るため一緒に馬車に乗りこんだ。馬車の中はまだ顔を赤くして俯いているカタリーナとエヴァトリス、気まずい空気に耐えきれず隅で小さくなっている侍女の3人だ。
侍女は最初「王子と同じ馬車など恐れ多くて乗れない」「辻馬車で帰る」と言い張ったが、帰りを心配するカタリーナとカタリーナからのお願いに弱いエヴァトリスに強く言う事もできるはずがない。志半ばで、馬車に乗せられる事になったが、馬車に乗り激しく後悔したのは言うまでもない。
そんな侍女を他所に、カタリーナは次にリシャールに会った時何を言えば良いか必死で考えており、エヴァトリスや侍女にまで気が回っていない。そんな心ここにあらずのカタリーナを見ていると何とも言えない不安が押し寄せて来るエヴァトリスは無意識に質問を投げかけていた。
「リシャール殿の事を考えているの?」
カタリーナが思わず視線を上げると、エヴァトリスと視線が合う。カタリーナはこんな冷たい視線を向けられることが初めてで、思わずびくりと肩を震わせた。膝の上に置いている手に力がこもりいつの間にか握りしめているがそのことに本人は気づかない。以前令嬢に絡まれた時同じような視線を向けていたが、他人に向けられているのを第三者としてみるのと、実際に自分が見られるのではこれほど違いがあるのかと感じる。同時にこれが王としての資質のある者と他者との違いなのだろうと思い知る。現在まだ15歳だと思うと末恐ろしくも思うが、同時に期待する気持ちも止められそうにない。
咎められているような視線を向けられているが、カタリーナ自身理由がわからない以上そのまま答えるしかないとい事だ。
「はい、次回伺った時にどうお話しようか考えておりました」
エヴァトリスの視線の鋭さは変わらず、カタリーナの緊張が高まる。
「リシャール殿とは別に話すことはないでしょう。それよりリシャール殿とは仲がよいの?彼が笑っているところ初めて見たよ。」
エヴァトリスは話すことがないかもしれないが、カタリーナとしては知り合いにベタベタしているところを見られたため羞恥心が半端ない。だが、このことを相談したところでどうにもならないのは明らかでありこれ以上の言葉は無意味なものに感じられる。それならば、何が原因でエヴァトリスの不況を買ったのか確かめる事が優先だろう。会話の中から探し出せればとは思うが、最近意味不明な事が多すぎて早々にサジを投げる未来しか思い浮かばない。
「私も笑った姿は今日が初めてでしたので、とても驚いております。殿下もそうだったのであれば、本当に珍しい事だったのでしょうね。いつもは、業務的なやり取りだけですのでそれほど仲が良いわけではないと思います。図々しい様ですが、魔法の性質から聖女などと言われる事もありますので、出来れば神殿の方とは仲良くなれる様努力したいと思っております。」
この答えが正解かどうか分からず、下げていた視線上げエヴァトリスの視線を盗み見ると気の抜けた様な表情で
「そうか」
とだけ呟いた。どうやら、正解の答えだったらしいが、どうしてこれが正解なのかは分からない。魔法を使うのがダメだと思っていたが神殿に行くのもダメ。リシャールの笑顔を見るのはダメだが業務連絡は良い、神官と仲よくなりたいと思うのも良い。一瞬エヴァトリスがリシャールに想いを寄せておりカタリーナにヤキモチを妬いたのかと思ったが、それなら片思いの相手に他の女性との抱擁シーンを見せる必要が分からない。ヤキモチと言う言葉に公爵家でのルルーシュの言葉が思い出される。あの時ルルーシュは『ヤキモチを妬いているから神殿に行くのを禁止した』と言わなかっただろうか。それを思い出して否定しようと思うが顔が赤くなるのを止められない。そんなカタリーナを見つめていたエヴァトリスは唐突に口を開く。
「私が怒っていた理由に何か心当たりがあったかい?」
そう静かな声で聞いてくるが、カタリーナは更に顔を赤くして視線を下げる事しか出来ない。どう答えようか悩んでいると、エヴァトリスが移動した気配がして思わず視線をあげるとカタリーナの横に腰かけたところで視線が合う。
「馬車の中でそんな顔しちゃいけないよ」
先程までの冷たい視線が嘘の様だ。エヴァトリスの冷たい視線に晒された今までの空気もいたたまれないものがあるが、違った意味で今もいたたまれない。
「ちゃんと答えてくれない唇なら、そのまま私が塞いでしまっても良いよね」
そう言いながらエヴァトリスの顔が近づいて来るのを止めるとこが出来ず、カタリーナは思わず目を強く瞑ってしまった。
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