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1章
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議会は予定通り行われた。予想外に反対意見はなく、スムーズに話が進んだらしい。娘を王妃にと野心を抱く貴族からの横槍を期待していた父は少し残念そうな顔をしていた。
そこからの1ヶ月は怒涛という言葉にふさわしい日々を過ごした。今までも簡単に市井に行くことは簡単ではなかったが、今以上に難しくなることが予想されたため街の様子を見て回ったり、神殿に挨拶をしたり、交流のある令嬢とお茶会をしたり・・・目が回るような日々というのはこの事をいうとカタリーナは実感せざるおえなかった。
あっという間の1ヶ月を終え、いよいよ明日はエヴァトリスが帰ってくる日である。本来であれば、自宅でゆっくり過ごしている予定であったが、今は引っ越し準備のために王宮に向かっている馬車の中だ。カタリーナは今まで王宮での暮らしについては辞していた。王族相手なので、それほどはっきりとは断っていなかったが、カタリーナの言葉に王妃もそれ以上言葉を続けることはなかったし、エヴァトリスも言及することはなかったため油断していた。
それが一転したのは先週のことだった。珍しく、王妃が母を訪ね公爵家にやってきており、その場にカタリーナが呼ばれたのだ。また、王宮での生活に関する話であるとは思ったが今までも
「エヴァトリス殿下が戻られたら、今後の事も含めゆっくりと話をしながら決めたいと思います。手紙ではやり取りしきれない部分がありますし、婚約者としてご迷惑をかけるわけにはいけないので」
の言葉でごまかしてきた。議会では、1ヶ月後となってはいたが、細かい日付までは決められていなかったのだ。エヴァトリスが帰ってきたらどう話すかと悩む部分もあったが、それはまた先の話であり今はこの場を乗り切ることが肝心と思いバカの一つ覚えの様にその言葉を繰り返してきた。残念な表情をしながらも今まで王妃は
「それならば仕方ないわね」
と言って許してくれていたのだ。顔をあわせるたびに同じ話をしていたが、毎回乗り切る事ができていたためそれほど気負うこともなく母と王妃の元へ向かったがそれが間違いだった。挨拶もそこそこに王妃に言われたのは衝撃の言葉だった。
「今ちょうどカタリーナの話をしていたのよ。ちょっと、時間の余裕ができたからあなたのお部屋準備のお手伝いをしたくて。ほら、今使っているものをそのまま準備すればいつでも王宮に住めるでしょ?ほら、ここにリストアップしたからこの後買いに行くつもりなのよ?」
王妃はニコニコと笑いながら話しておりとても機嫌が良さそうである。母はやれやれと言ったような表情でカタリーナを見ている。王妃側にはメモを持った侍女も立っている。その様子を見てカタリーナは背中に嫌な汗が流れるのを感じる。
「もしかして、王妃様が自ら・・・」
それ以上は怖くて言葉を続けることができないカタリーナであったが、その言葉の意味を正確に理解した王妃はにこやかに言葉を続ける。
「もちろんよ、未来の義娘のためですもの。女の子の準備をするのは楽しくていいわね」
カタリーナは指先が震えるのを手を強く握ることで抑えようとする。顔色は悪いだろうが、さすがにそこまで取り付くことはできない。
「もうしわけありません。王妃様にそのようなことをさせてしま・・・」
カタリーナの言葉の途中で王妃が首を横に振り言葉を遮る。王妃から拒絶の意思を示されたならばそれ以上カタリーナが話し続けることはできない。言葉を遮ったものの、王妃の表情は穏やかであり変わらず機嫌は良さそうである。
「気にしないで、私が好きでやってるのだから。」
そう言われても王妃にそんな雑用をやらせる訳にはいかない。押し問答の末、カタリーナ自身が準備を行うことで話しはまとまった。カタリーナは最初は準備に対しても本意ではなかったため、荷物を公爵家の者に運び込んでもらい後日荷ほどきを行うことを王妃に伝えた。すると、「それじゃぁ、後で大変だから私が荷ほどきをしておくわ。」
と王妃に言われた。これは新手の脅しではなかろうかと、王妃の言葉を丁寧に断り自身で確認しながら行うことを伝える。王妃からは、大変満足そうな表情で
「1週間以上かかる様なら私がお手伝いするから遠慮なく教えてね」
と話し、去っていった。お茶に誘われて顔をだしただけなのに、カタリーナは引っ越しの期限をまんまと決められてしまった。
王妃が帰り、苦虫を噛み潰した様な顔をしているカタリーナを見ながら、母は呆れたような視線を向ける。
「優しいだけじゃ、王妃は務まらないわよ。まぁ、今日のは少し強引だったけどね。」
これを少しというのかはカタリーナにとって甚だ疑問だったが、こうなっては仕方ないので準備を行うしかない。下手に手をぬけば王妃が手を出してくるだろう、それが脅しでないことは母とのお茶会の様子で明らかだ。
先週の事を馬車で思い出している間に、あっという間に王宮に到着する。王宮でのカタリーナの部屋は一番奥にある客室を改装して作ったらしい。改装を行うと言われた際にはきっぱりと辞した。内装の好みを聞かれた時ははっきりと「客室で十分です」と言い、自身の好みについて何も話さなかった。なので案内されたカタリーナの部屋はそのままの客室だと思っていたが、案内された部屋の扉を見て嫌な予感がした。好みを言わなかった罰なのかもしれない。今日ついてきた侍女は、部屋の内装に関するやりとりを知っている侍女である。その侍女もドアの前で少し顔色を悪くし開けて良いものかカタリーナに視線を向けている。
「ドアを開けてちょうだい」
いつまでも部屋の前に立ち尽くす訳にはいかないため、カタリーナは侍女に声をかけドアをあけた。
カタリーナと侍女の前には、見覚えのありすぎる部屋があった。ドアを見たときから嫌な予感はしていたが、内装から家具までカタリーナが公爵家の自室で使用しているものと全く一緒だった。違う所と言えば部屋が少し広くなった事だろうか。侍女は呆然としており、カタリーナは背中に嫌な汗をかいている。だが、王妃教育の賜物か表情を崩すことはない。
「いつもの場所にかだずけてくれる?」
その一言を告げると、公爵家から連れてきた侍女の指示の元、王宮のメイド達が動き出す。しまう場所がある程度決まっていたため、思った以上に早くその作業は終わる。一通り終えた後に王妃への挨拶へ向かう。本意ではないにしても、ここまで準備をしてもらったのだからお礼を言わなくてはいけない。
王妃は執務室で仕事をしていたが、カタリーナが来た事を聞くと快く部屋に通してくれた。お礼をしっかりと述べると、王妃も満足そうにしていた。仕事中ということもあったため、お礼のみで退室する。公爵家に帰る馬車の中で一気に疲れが襲ってきたが、それでもエヴァトリスが帰ってくることを考えるとカタリーナの口元には笑みが浮かんでいた。
そこからの1ヶ月は怒涛という言葉にふさわしい日々を過ごした。今までも簡単に市井に行くことは簡単ではなかったが、今以上に難しくなることが予想されたため街の様子を見て回ったり、神殿に挨拶をしたり、交流のある令嬢とお茶会をしたり・・・目が回るような日々というのはこの事をいうとカタリーナは実感せざるおえなかった。
あっという間の1ヶ月を終え、いよいよ明日はエヴァトリスが帰ってくる日である。本来であれば、自宅でゆっくり過ごしている予定であったが、今は引っ越し準備のために王宮に向かっている馬車の中だ。カタリーナは今まで王宮での暮らしについては辞していた。王族相手なので、それほどはっきりとは断っていなかったが、カタリーナの言葉に王妃もそれ以上言葉を続けることはなかったし、エヴァトリスも言及することはなかったため油断していた。
それが一転したのは先週のことだった。珍しく、王妃が母を訪ね公爵家にやってきており、その場にカタリーナが呼ばれたのだ。また、王宮での生活に関する話であるとは思ったが今までも
「エヴァトリス殿下が戻られたら、今後の事も含めゆっくりと話をしながら決めたいと思います。手紙ではやり取りしきれない部分がありますし、婚約者としてご迷惑をかけるわけにはいけないので」
の言葉でごまかしてきた。議会では、1ヶ月後となってはいたが、細かい日付までは決められていなかったのだ。エヴァトリスが帰ってきたらどう話すかと悩む部分もあったが、それはまた先の話であり今はこの場を乗り切ることが肝心と思いバカの一つ覚えの様にその言葉を繰り返してきた。残念な表情をしながらも今まで王妃は
「それならば仕方ないわね」
と言って許してくれていたのだ。顔をあわせるたびに同じ話をしていたが、毎回乗り切る事ができていたためそれほど気負うこともなく母と王妃の元へ向かったがそれが間違いだった。挨拶もそこそこに王妃に言われたのは衝撃の言葉だった。
「今ちょうどカタリーナの話をしていたのよ。ちょっと、時間の余裕ができたからあなたのお部屋準備のお手伝いをしたくて。ほら、今使っているものをそのまま準備すればいつでも王宮に住めるでしょ?ほら、ここにリストアップしたからこの後買いに行くつもりなのよ?」
王妃はニコニコと笑いながら話しておりとても機嫌が良さそうである。母はやれやれと言ったような表情でカタリーナを見ている。王妃側にはメモを持った侍女も立っている。その様子を見てカタリーナは背中に嫌な汗が流れるのを感じる。
「もしかして、王妃様が自ら・・・」
それ以上は怖くて言葉を続けることができないカタリーナであったが、その言葉の意味を正確に理解した王妃はにこやかに言葉を続ける。
「もちろんよ、未来の義娘のためですもの。女の子の準備をするのは楽しくていいわね」
カタリーナは指先が震えるのを手を強く握ることで抑えようとする。顔色は悪いだろうが、さすがにそこまで取り付くことはできない。
「もうしわけありません。王妃様にそのようなことをさせてしま・・・」
カタリーナの言葉の途中で王妃が首を横に振り言葉を遮る。王妃から拒絶の意思を示されたならばそれ以上カタリーナが話し続けることはできない。言葉を遮ったものの、王妃の表情は穏やかであり変わらず機嫌は良さそうである。
「気にしないで、私が好きでやってるのだから。」
そう言われても王妃にそんな雑用をやらせる訳にはいかない。押し問答の末、カタリーナ自身が準備を行うことで話しはまとまった。カタリーナは最初は準備に対しても本意ではなかったため、荷物を公爵家の者に運び込んでもらい後日荷ほどきを行うことを王妃に伝えた。すると、「それじゃぁ、後で大変だから私が荷ほどきをしておくわ。」
と王妃に言われた。これは新手の脅しではなかろうかと、王妃の言葉を丁寧に断り自身で確認しながら行うことを伝える。王妃からは、大変満足そうな表情で
「1週間以上かかる様なら私がお手伝いするから遠慮なく教えてね」
と話し、去っていった。お茶に誘われて顔をだしただけなのに、カタリーナは引っ越しの期限をまんまと決められてしまった。
王妃が帰り、苦虫を噛み潰した様な顔をしているカタリーナを見ながら、母は呆れたような視線を向ける。
「優しいだけじゃ、王妃は務まらないわよ。まぁ、今日のは少し強引だったけどね。」
これを少しというのかはカタリーナにとって甚だ疑問だったが、こうなっては仕方ないので準備を行うしかない。下手に手をぬけば王妃が手を出してくるだろう、それが脅しでないことは母とのお茶会の様子で明らかだ。
先週の事を馬車で思い出している間に、あっという間に王宮に到着する。王宮でのカタリーナの部屋は一番奥にある客室を改装して作ったらしい。改装を行うと言われた際にはきっぱりと辞した。内装の好みを聞かれた時ははっきりと「客室で十分です」と言い、自身の好みについて何も話さなかった。なので案内されたカタリーナの部屋はそのままの客室だと思っていたが、案内された部屋の扉を見て嫌な予感がした。好みを言わなかった罰なのかもしれない。今日ついてきた侍女は、部屋の内装に関するやりとりを知っている侍女である。その侍女もドアの前で少し顔色を悪くし開けて良いものかカタリーナに視線を向けている。
「ドアを開けてちょうだい」
いつまでも部屋の前に立ち尽くす訳にはいかないため、カタリーナは侍女に声をかけドアをあけた。
カタリーナと侍女の前には、見覚えのありすぎる部屋があった。ドアを見たときから嫌な予感はしていたが、内装から家具までカタリーナが公爵家の自室で使用しているものと全く一緒だった。違う所と言えば部屋が少し広くなった事だろうか。侍女は呆然としており、カタリーナは背中に嫌な汗をかいている。だが、王妃教育の賜物か表情を崩すことはない。
「いつもの場所にかだずけてくれる?」
その一言を告げると、公爵家から連れてきた侍女の指示の元、王宮のメイド達が動き出す。しまう場所がある程度決まっていたため、思った以上に早くその作業は終わる。一通り終えた後に王妃への挨拶へ向かう。本意ではないにしても、ここまで準備をしてもらったのだからお礼を言わなくてはいけない。
王妃は執務室で仕事をしていたが、カタリーナが来た事を聞くと快く部屋に通してくれた。お礼をしっかりと述べると、王妃も満足そうにしていた。仕事中ということもあったため、お礼のみで退室する。公爵家に帰る馬車の中で一気に疲れが襲ってきたが、それでもエヴァトリスが帰ってくることを考えるとカタリーナの口元には笑みが浮かんでいた。
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