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駈はぼんやりとした目で、後部座席に上体を突っ込んでいる英を見つめていた。
逃げるのならもう今しかない……そう思うのに、既に一度派手に達し、しかも何度も襲ってくる官能の波を耐え続けた身体は疲れ切り、シートに縛り付けられたように動かなくなってしまっていた。
だが、「よいしょ」というおじさんくさい掛け声と共に彼が持ってきた小さく四角い箱を見て、色々なものに酔いまくっていた駈の頭は瞬く間に醒めた。
「お前……、それ、どこで……」
そこまで言って、駈はハッと思い当たった。
(そうだ、さっきのコンビニだ……!)
籠を手に、おにぎりやらパンやらビールやら色々なものをポイポイと放り込んでいく英に、駈は「これぐらいは自分が払う」とそれを奪おうとした。
しかし英は決してそれを離そうとはせず、「いいからいいから」と駈を押しやると、「車、乗ってていいよ?」と、足元をふらつかせている駈を先に返してしまったのだった。
車の中で、駈はとりあえず先に買ってもらった水を飲みながら、中々戻らない英を妙に遅いな、と思ってはいたのだが……まさか、部屋にまだ大量に残っていたはずのこれを買ってくるなんて……!
「こっ……ここではしないぞ!!」
駈は力の入らない身体を無理やりたたき起こし、そう声を張り上げた。
英と会う前の駈は、「もしかしたら今日も、『そういうこと』になるかもしれないから」という言い訳を延々としながら、『そういう』準備をするのが常だった。
正直その最中は、自分がいかにそれを待ち望んでいるのかを分からせられているようで、本当に身体中から火を噴きそうなほど恥ずかしいのだが――幸い、その努力が無駄になったことは今のところほぼなかった。
だが、今日は当然、そんな準備などしてきていない。
いくらゴムをつけるからといって、駈はそれだけは絶対にしたくなかった。
衛生面やこの場所など、常識的に考えたってここでする方がまずあり得ないのだが、それよりも……駈には、二度と思い出したくもない嫌な過去があったからだった。
逃げるのならもう今しかない……そう思うのに、既に一度派手に達し、しかも何度も襲ってくる官能の波を耐え続けた身体は疲れ切り、シートに縛り付けられたように動かなくなってしまっていた。
だが、「よいしょ」というおじさんくさい掛け声と共に彼が持ってきた小さく四角い箱を見て、色々なものに酔いまくっていた駈の頭は瞬く間に醒めた。
「お前……、それ、どこで……」
そこまで言って、駈はハッと思い当たった。
(そうだ、さっきのコンビニだ……!)
籠を手に、おにぎりやらパンやらビールやら色々なものをポイポイと放り込んでいく英に、駈は「これぐらいは自分が払う」とそれを奪おうとした。
しかし英は決してそれを離そうとはせず、「いいからいいから」と駈を押しやると、「車、乗ってていいよ?」と、足元をふらつかせている駈を先に返してしまったのだった。
車の中で、駈はとりあえず先に買ってもらった水を飲みながら、中々戻らない英を妙に遅いな、と思ってはいたのだが……まさか、部屋にまだ大量に残っていたはずのこれを買ってくるなんて……!
「こっ……ここではしないぞ!!」
駈は力の入らない身体を無理やりたたき起こし、そう声を張り上げた。
英と会う前の駈は、「もしかしたら今日も、『そういうこと』になるかもしれないから」という言い訳を延々としながら、『そういう』準備をするのが常だった。
正直その最中は、自分がいかにそれを待ち望んでいるのかを分からせられているようで、本当に身体中から火を噴きそうなほど恥ずかしいのだが――幸い、その努力が無駄になったことは今のところほぼなかった。
だが、今日は当然、そんな準備などしてきていない。
いくらゴムをつけるからといって、駈はそれだけは絶対にしたくなかった。
衛生面やこの場所など、常識的に考えたってここでする方がまずあり得ないのだが、それよりも……駈には、二度と思い出したくもない嫌な過去があったからだった。
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